可愛いΩのナカセカタ

三日月

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「で、この炒めてるのはなんの途中だ?」


 菜箸を片手に振り向かれ、まだドキドキが収まらない。シャツ一枚身につけ、布団に寝転びながら胸を押さえている自分との差においてけぼりを食らったような、そう、一抹の寂しさを感じる。こんなに自分は気持ちの揺れが収まらないのに、暴君は平坦な道に先に戻ってしまった。

 暴君は、感情も気配もフェロモンも自由自在に操る。α教育をかじっていた自分は、それが当たり前にこなせるものじゃないことを知っている。フェロモンは、本能に忠実で嘘偽りで思ってもいないものは出せない。気持ちが高ぶれば、自制が効かずに暴発することもある。相手を威圧、支配できる要素を含むから、フェロモンコントロールはαに生まれた人間の義務だ。
 それに、感情や気配まで加わると・・・いや、それだけじゃないな。中学生には見えない、すらりと四肢が伸びた細身の体型も、笑うとつり上がったまま細められる狐目も、鼻筋の通った顔立ちや落ち着いた雰囲気も。何もかもが自分とは桁違い。別世界。

 今更ながら、自分の唯一の取り柄は戦うことで、それさえ暴君には全く歯が立たない。Ω狩りで全てを失った自分との差に気持ちが一気に冷えた。

 力もなにもかも叶わない相手に組み敷かれたあの充足感、支配されることに身も心も満たされていたはずなのに。

・・・寂しい。


「由良?」

「あ、味見をして調整を」

「ん、わかった」


 暴君に再び抱かれて、近づけたように感じたのに。更に遠くに感じてしまう。
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