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「疾風、はや、てぇっ」
情欲に掠れた声で、繰り返しすがり付くように名前を呼ぶ由良。
真柴に番を断りに行った帰り道、何度も「龍生」を連呼しながら昔話をしてくる由良にムカついて。俺の名前を呼べと、何気ない風を装いけしかけたら「萩野」で。
まあ、その姓さえ由良は一度も口にしてなかったから新鮮。アングラ(=アンダーグラウンド)のスタッフは、全員姓が萩野だからな。由良にはその姓を呼ぶ習慣がなかったんだろう。
由良も、恥ずかしそうに吃りながら口にしていたし十分可愛かった。挙動不審で、でも嬉しくて堪らないと見つめてきた顔は、うん、可愛かった。ただ、下の名前で、とけしかけ直し。「知らないから」と言われたときには、自分のアホさに頭が痛くなった。
極力、表の世界に痕跡を残さないように萩野は生きる。持ち物に、名前は書かない。最低限しか、ものを持たない。それが萩野家では当たり前。
当然、二人で暮らしてきた部屋に俺の名前が入ったものは姓だけ刻んだ名札しかない。教科書もノートも無記名、プリントやテストは学校に置きっぱなしか即廃棄。俺が名乗ってないんだから、由良が知る術は無かった。
情欲に掠れた声で、繰り返しすがり付くように名前を呼ぶ由良。
真柴に番を断りに行った帰り道、何度も「龍生」を連呼しながら昔話をしてくる由良にムカついて。俺の名前を呼べと、何気ない風を装いけしかけたら「萩野」で。
まあ、その姓さえ由良は一度も口にしてなかったから新鮮。アングラ(=アンダーグラウンド)のスタッフは、全員姓が萩野だからな。由良にはその姓を呼ぶ習慣がなかったんだろう。
由良も、恥ずかしそうに吃りながら口にしていたし十分可愛かった。挙動不審で、でも嬉しくて堪らないと見つめてきた顔は、うん、可愛かった。ただ、下の名前で、とけしかけ直し。「知らないから」と言われたときには、自分のアホさに頭が痛くなった。
極力、表の世界に痕跡を残さないように萩野は生きる。持ち物に、名前は書かない。最低限しか、ものを持たない。それが萩野家では当たり前。
当然、二人で暮らしてきた部屋に俺の名前が入ったものは姓だけ刻んだ名札しかない。教科書もノートも無記名、プリントやテストは学校に置きっぱなしか即廃棄。俺が名乗ってないんだから、由良が知る術は無かった。
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