可愛いΩのナカセカタ

三日月

文字の大きさ
244 / 461

241 Ω

しおりを挟む
 意識が戻っても、固定されているのか身体の自由は利かず、目も開けられない。話をするのも、喉が乾いてヒリヒリ痛むし、全身が鉛のように重い。輝良にお願いしてベッドを操作して貰い、話しやすいように上半身を少し起こしたんだが。この姿勢を保っているだけで正直疲れていた。
 痛みがないのは、薬だろうな。芹沢には、ムチを振るわれ身体中に傷をつけられていた。薬が切れたら、痛みで寝れないんじゃないだろうか。

 輝良に気付かれないよう、小さく息を吐いた。こんな、自分がどんな姿をしているかもわからない寝たきりのこの状況も不安で・・・椿頭に関係する病院なら、縁を切られた父親にもこの事態が把握されているという現実にも気が重い。多忙を極める人だから、わざわざここにまで来ることは無いだろうけれど・・・


「それでな、それでなっ」


 輝良は、自分の気の沈みには気付かない。ダムが決壊したような勢いで、離れていた間に起きたことを思い付くままに話してくれている。久し振りの再会に喜んでくれている輝良には申し訳無いが、途中から疲れてしまって話どころじゃなくなっていた。
 それでも、まさかまたこうして話せる日がくるとは思っていなかったし、何よりも勝手に家を出たことを怒られると思っていただけにその反応が嬉しくて。自分は聞き役に撤し、昔話や、輝良の近況に相槌を打ち続けていた、ら。

 扉が開く音。


「目、覚めたのか」


 聴き間違うことがない、疾風の声に頬が自然と緩む。近くに居てくれたんだな。


「疾風」


 名前を呼んだら、身体から力が抜けていった。疾風が近くにいるだけで安心出来る。離れずに側に居てくれると約束してくれた。きっと、家族の輝良に気を利かせて席を外してくれていたんだな。
 疾風は、自分が中学では考えもしてなかったそういった気配りが当たり前のように出来てしまえる。


「俺たちは帰りましょうか、輝良さん」

「なんだとっ、まだ話したいことが・・・・・」

「黙りましょうね」


 「また来るからなっ」と話している輝良の声が遠退き、扉が閉まる音が続く。そこからは、無音。疾風の出入りに物音が付随しないのは、病院でも変わらないらしい。
しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

上司と俺のSM関係

雫@不定期更新
BL
タイトルの通りです。読む前に注意!誤字脱字あり。受けが外面は一人称私ですが、砕けると僕になります。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

処理中です...