420 / 461
番外編
酒の肴 1
しおりを挟む
「疾風、疾風ぇっ
疾風は、自分のじゃないんれすかぁーーーっ」
グジグジ泣きながら、俺の首に抱きついて離れない由良に目を細める。たった一杯、いや、グラスの半分も飲んでいない発泡酒で由良はグダグダの酔っ払いに陥っている。普段の穏和な由良に比べると、別人のように感情が振りきれていて面白い。
「由良のだろ?」
よしよしと、まるで子どものような癇癪を起こしている由良の後頭部を撫でながら、ギャンギャン泣いている子ども四人にも目をやるが・・・風音は椅子から落ち、床でひっくり返りながら顔を真っ赤にさせて暴れているし、青嵐は机の下に潜り込んで震えているし、凪と風花は椅子に座ったまま抱き合って大泣きだ。
「名前が無いんれすぅーーーっ」
由良は頭を頬に押し付けるようにグリグリ回してくる。名前、名前ねぇ。凪と風花の入学式に向けて、由良が何かと買いそろえて名前を書いていたな。そっから飛んできてるのか?
由良を抱きつかせたまま、潜っている青嵐に命じる。
「青嵐、今すぐ名前が書いてないネームシールのシートを一枚と黒の油性ペン持ってこい」
「っっ」
テーブルの下で体をすくませた青嵐が、脱兎の如く四つ足で這って飛び出していった。由良の酔っ払いぶりが面白いので気分も良いし、そこまでキツく命じてはいないんだが・・・その横顔は、真っ白で怯えきっていた。
青嵐を含め、コイツらは由良が泣いているこの状況がよっぽどヤバイと思っているんだろう。まぁ、それくらいコイツらの中に由良を泣かせればどうなるか刻み込まれてるってことなら良いか。
残った子ども三人の泣き声が鬱陶しいとは思うが、すでに風音は泣きつかれてグズリながら寝始めている。わざわざ俺が黙らせなくても、凪も風花もそのうち寝るな。
「と、と、ととぉっっ」
震える両手でシールとペンを頭の上に掲げるように持ってきた青嵐は、舌が回っていない。どうやら「取ってきた」と言いたいらしいが、俺が手を伸ばせばギリギリ届く場所で正座。顔をあげることも出来ないくらいに緊張しているようだ。
だが、この青嵐の怯えっぷりは見慣れている。これだけ怯えていても、次の日にはケロッと忘れて同じことをするからな。バカなのか、打たれ強いのか。由良がなんでもかんでも誉めるせいか、怒られたことより誉められたことしか頭に刻まれていないのか?
疾風は、自分のじゃないんれすかぁーーーっ」
グジグジ泣きながら、俺の首に抱きついて離れない由良に目を細める。たった一杯、いや、グラスの半分も飲んでいない発泡酒で由良はグダグダの酔っ払いに陥っている。普段の穏和な由良に比べると、別人のように感情が振りきれていて面白い。
「由良のだろ?」
よしよしと、まるで子どものような癇癪を起こしている由良の後頭部を撫でながら、ギャンギャン泣いている子ども四人にも目をやるが・・・風音は椅子から落ち、床でひっくり返りながら顔を真っ赤にさせて暴れているし、青嵐は机の下に潜り込んで震えているし、凪と風花は椅子に座ったまま抱き合って大泣きだ。
「名前が無いんれすぅーーーっ」
由良は頭を頬に押し付けるようにグリグリ回してくる。名前、名前ねぇ。凪と風花の入学式に向けて、由良が何かと買いそろえて名前を書いていたな。そっから飛んできてるのか?
由良を抱きつかせたまま、潜っている青嵐に命じる。
「青嵐、今すぐ名前が書いてないネームシールのシートを一枚と黒の油性ペン持ってこい」
「っっ」
テーブルの下で体をすくませた青嵐が、脱兎の如く四つ足で這って飛び出していった。由良の酔っ払いぶりが面白いので気分も良いし、そこまでキツく命じてはいないんだが・・・その横顔は、真っ白で怯えきっていた。
青嵐を含め、コイツらは由良が泣いているこの状況がよっぽどヤバイと思っているんだろう。まぁ、それくらいコイツらの中に由良を泣かせればどうなるか刻み込まれてるってことなら良いか。
残った子ども三人の泣き声が鬱陶しいとは思うが、すでに風音は泣きつかれてグズリながら寝始めている。わざわざ俺が黙らせなくても、凪も風花もそのうち寝るな。
「と、と、ととぉっっ」
震える両手でシールとペンを頭の上に掲げるように持ってきた青嵐は、舌が回っていない。どうやら「取ってきた」と言いたいらしいが、俺が手を伸ばせばギリギリ届く場所で正座。顔をあげることも出来ないくらいに緊張しているようだ。
だが、この青嵐の怯えっぷりは見慣れている。これだけ怯えていても、次の日にはケロッと忘れて同じことをするからな。バカなのか、打たれ強いのか。由良がなんでもかんでも誉めるせいか、怒られたことより誉められたことしか頭に刻まれていないのか?
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる