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30 学園祭 side 陸

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生徒会室の扉横に設置してある目安箱。
つーか、八割ファンレター入れになってるが。
番持ちの誉や松野、それに竹居と・・・三枝宛もあるな。
まぁ、菊川とかなちゃんに出そうとする強者はもう居ねぇか。
手紙は入れたままにして、一番下に隠れていた鍵、カードキーを取り出し解錠。
室内へ入る。

あー、マジで疲れてるな。
目の前に、待合用に使われてるソファーが見えた途端、身体から力が抜けて行くのがわかった。
黒の皮張りソファーは三人掛けのゆったりサイズ。
さすがに足は出るが、寝心地は悪くねぇ。
靴を脱いで、ソファーに倒れ込む。

カッキーも、結局見つけられてねぇ。
海や空からも連絡はねぇし。
本格的な発情期が始まる前に、顔を合わせて謝って。
それから・・・

優先事項は、発情期が迫るカッキーなのに。

頭に浮かぶのは、三枝。
桂木と歩いていた三枝だった。
俺の前では見なくなった笑顔だった。
桂木には向けていた、それに、一緒に食ってた。
俺がそれに何かを思うこと自体、筋違い。
いや、むしろ未遂で済んだがやろうとしていたことは最悪だ。
三枝に、何か思うことすらダメだろう。

なのに。

なんで、まだ、悔しいと思っちまうんだろう。
桂木が三枝の隣に居ることへの苛立ちが燻り続けている。
どうしようもねぇな。

週明けから、益々三枝とは顔が合わせ辛ぇ。
後ろめたさがでかすぎて、アイツの視界に入るのも赦されねぇ気がする。

身体を半回転させ天井を見上げたが、既に焦点が合わねぇ。
距離は、とったままにしておくか。
好かれるより、嫌われた、まま、の方が良い・・・
そうすれば・・・変異種Ωに変える、こと・・・も、ねぇ・・・
重い瞼が勝手に閉じ、同時に意識も落ちていた。





トントントン

軽いノックの音で、意識がゆっくりと浮上。
夢も見ねぇ、深い眠り。
ここがどこだったかも、直ぐにはわからなかったくれぇに頭ん中がぼんやりとしていた。
外から漏れてくる喧騒と音楽。

確か、そう、学園祭。
ここは、生徒会室で。
14時に、菊川が。

記憶の断片を繋げる。
半時間、経ったのか。
なんか、もっと寝てたような気がするな。


「開いてるぜ」


開けとけって言ってたのに、俺相手にわざわざノックとかしなくても気にしねぇのに。
つーか、むしろ寝かせといて欲しかったぜ。
身体を起こす気にもなれず、寝たまんま。
扉に向かって、起き抜けの掠れた声で呼びかける。
身体が重い。


「えーっと、笹部君、あの、大丈夫?」


は?

まず、ゆっくり開いていく扉の向こうから聞こえてきた声に身体が反応してビクッと痙攣した。
いや、なんで。
なんで、お前がここに来てんだよ?

緊張した三枝の顔を見ると、開けるなとも言えず、完全に扉が開いてしまう。
そこに立っていたのは、アリス姿の三枝。
三枝は、扉を後ろ手に閉め遠慮がちに俺の身を案じてきた。
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