Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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4 笹部家食卓

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「鈴ちゃん、誰かにいじめられたりしてない?学校は楽しい?」
 折角食事を再開したのに、鋼は孕親の見当違いな心配を聞かされグフッと噎せた。エビフライがもう少しで口から飛び出そうになり、慌てて手で口を覆う。鈴は、すかさず鋼を背中に隠し「楽しいよ!」と笑顔で答えた。
 誰がこの姉をいじめるというんだろうかと、鋼は苦しい呼吸に耐えてエビフライを飲み込んだ。学園の関係者が聞けば、「ありえない」と全員言い切れることなのに。こんな想定を思いついてしまうのは、Ωだからなのか、こころだからなのか。自分には考えられないことを度々ぶっこんで来る孕親への免疫が未だにつかない。しかし、なんでそんなことを言い出せるのか考えてもわからないものはわからないので考えない。鋼は、前を向いたままの鈴から湯呑を受け取り、冷めた緑茶でどうにか落ち着きを取り戻した。
「急にどうしちゃったの、こころちゃん。いじめるなんて、そんなの無いよ?」
「そうなの?最近、学校に呼ばれないって福ちゃんが話してたから、もしかしてこころちゃんの知らないところでいじめられているのかなって心配になっちゃったの」
 Ωのこころは、学校に一度も通ったことが無い。生まれてすぐに実の親から捨てられ、笹部一族が経営する保護施設で育っているため、学校の仕組み自体もよくわかっていない。世間ではΩへの教育は不要という考えが常識ではあるものの、笹部一族の番候補としてΩを囲う保護施設では簡単な読み書きは遊びに混じえて教えられていた。もしも番にならなくても、一族が経営する施設のどこかで何かしら働ける程度の知識は身につけるよう仕向けられている。
 父親の福は、鈴が問題を起こす度に呼び出されることからやっと開放されたなと安心してこころに話していたのだが、こころの中では定期的に鈴の様子がわかる呼び出しがなくなったことで不安になったようだ。
「鋼ちゃんのお呼び出しは、入学してから一度も無いじゃない?鋼ちゃんも学校は楽しいところって話してくれるけれど、福ちゃんが先生と話す機会もすっっごく少ないしこころちゃん、不安だわ」
 優生学園の敷地にはαしか入れないため、三者面談や参観といった保護者に関わる行事があってもΩのこころは一切参加出来ない。番の福や子どもの話が全てで、一人目の鈴の呼び出しが普通なのだと思いこんでいる。鈴は、わざわざ自分が問題を起こしたから呼び出されていたと告白してこころの心配を増やすつもりは全くない。
「じゃあ、ご飯食べながら話すよ。高等部になって移った部屋が、中等部んときより広くなっててさぁ。なんか、春から毎月相方が変わってたんだけど、夏休み明けから一人部屋になってて快適なんだ~」
 夏休み前まで鈴の相部屋だった生徒とその親が、揃って寮長に泣きついた事情は鈴にも伏せられている。原則、寮の部屋割は、性格と成績を加味され決められる。問題がなければ、中等部から高等部へ上がっても変更されない。ただし、編入生にはその前年に優秀評価された生徒が教育指導も兼ねて同室となるよう割り当てられることが多い。鈴の場合は、その例外からも外れ、寮長の発案と管理人の権限で高等部編入生の洗礼として鈴の相部屋が使われていることには気付いていない。
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