Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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4 笹部家食卓

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 笹部 鈴は、摘んだクッキーが目の前でパクリと閉じた口に入るのを眺め御満悦だった。モグモグ動く口をうっとりと見つめる。手には、食堂で長期休み前限定販売のクッキー詰め合わせ。特に鈴から頼んだ覚えはないのだが、気を使った生徒からの貢物として帰省前に何袋も手渡されていた。
 鈴への貢物については、日常茶飯事。自分が食べてうっかり変異種Ωを誕生させるわけにもいかない。いつもは、給餌行動の渇望を鎮めるのも兼ねて適当な生徒に振る舞っているのだが今日は違う。(と、本人は思っているが、渡された生徒は断れない押し付けに戸惑いを感じている)大切な家族、こころと鋼に与える喜びが、心に染みて頬が緩む。長期休み中でしか味わえない多幸感。その一方で、初日から寮に戻りたくない病が早速意識の底で発病していた。
 αが特権階級として完全にβやΩを支配していた頃は、相手を変異させるこの血の力はβに寧ろ喜ばれていた。平凡な人生よりも、笹部の番として扱われる人生の方が格段に待遇が良かったからだ。カスタマイズされたΩは、確実に相手のαの子どもを生むと重宝されていた。しかし、時代の流れでΩの地位が下がり続けると、Ωになること自体が敬遠されるようになり笹部の血の力は秘匿するものへと変わっていた。
 他の群れと距離を置くようになれば、自然と笹部のαはファミリータイプの群れしか作れなくなる。身内と他人の区別が明確に別れるので、他人と共同生活を送る寮は鈴には息苦しい。
「ねーちゃん、ねーちゃん、もう一枚!」
 隣であーんと口を開ける可愛い弟に、益々相好が崩れる。求めに応じて一枚口に入れると、鋼も幸せいっぱいの顔でクッキーを咀嚼した。孕親のこころは、娘と息子をニコニコ笑顔で見守っている。食後のデザートにと一枚は食べたのだが、それ以上はお腹がいっぱいのため断っていた。
「仲良しさんね~」
 のほほんと緑茶を飲むこころに、二人は「仲良しだよー」「うんうん」と上機嫌で答える。鋼のオムライスと鈴のクッキー。お互いに食べて食べさせてを完結出来たので満ち足りていた。やっと落ち着いて話せると、鈴から話題を振った。
「で、生徒会、本気でやってるの?」
「やってるよ。副生徒会長で、あと群れも作った」
「・・・大丈夫なの?」
 得意げな弟に対し、鈴は懐疑的だ。売られた喧嘩は相手のプライドをへし折り二度と歯向かう気が起きないよう徹底している鈴は、周囲から破天荒に思われているけれど家族想いな核がそこにはある。自分が舐められれば、後から入学してくる鋼も舐められかねないと、ついついやり過ぎて好戦的に見られてしまっているのだ。
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