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5 統括学園長室
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康生は、こめかみを親指でグリグリ揉みほぐし、なんとか続きを読む努力をする。強く意識しないと文字を追えない。許されるなら、即刻危険分子の福を学園敷地内から退去させたいが、薺家の手紙を最後まで確認することが優先だ。うぐぅ、と喉奥でうめき声を殺し続きの文字に目先を戻す。秀麗な文字で綴られる内容は、読み進めるほどに康生の気持ちを乱すものだった。
(あの、穂高 千里をΩに変えただとっ)
高等部三年、穂高 千里。個人能力は低いが、群れを統率し初等部・中等部・高等部と生徒会長を歴任した将来有望な若者。三冠生徒会長と慕われ、この学園に平穏な秩序をもたらしてくれた。卒業までに、なにか報奨を与えたいと康夫も考えていたところだ。
(ご両親と同じく国家防衛の道に進むのか、それともなにか希望する道があるのか。じっくり話を聞きたいと思っていたのに・・・Ωに堕としたというのかっ)
怒りに様々な感情が混じり息苦しい。康生にとって、Ωはαを発情フェロモンで惑わす低能で役に立たない社会の底辺。ΩはΩにしかなれないこの世の中で、目にかけていた千里の将来の道が閉ざされてしまったのかと憂う反面、Ωに変わった千里は無価値と切り捨てる気持ちが強くなる。
しかし、切り捨てることは許されないのだと薺家は康生に無理難題を押し付けていた。卒業まで千里を学園にこのまま在籍させ、今までと変わらずαとして扱うこと。αしか居ないこの優生学園に、Ωを通わせるなど危険極まりない。ありえないと、康生は無意識に頭を横に揺らしていた。御三家ならば、自分が榊家に仕える人間だということまで恐らく把握されているだろう。つまり、コレを榊家も黙認していることになる。引受難いが引き受けざるを得ない。(我が学園にΩを通わせるなど・・・)立ちくらみで揺らいだ身体を、机に手を付けることでなんとか立て直す。この場に崩れ落ちてしまいたいが、そんな無様な姿を福に見せるのは耐え難い。康生は手紙を丁寧に折りたたみ封筒に戻すと、ソファーに腰掛けていた福に両手を添えて返した。福も同じようにして受け取り、ジャケットの内ポケットへ戻す。
笹部一族が特化型αであることは、この手紙を直接受け取った康生と、千里の精神ケアに当たる養護教諭のみに明かし、それ以外に漏らすことは固く禁じる。そして、今後も笹部一族を変わらず受け入れることまで事細かに指示されていた手紙には、読み終えた後、福の目の前で燃やすか、福に返却することまで書かれていたのだ。御三家ではなく笹部 福からの手紙であれば、投げつけ全て断り二度とこの学園に関わらないよう叩き出しているところだ。康生は、自分に言い聞かせる。
(明るみに出ればこの世を乱すということもあるのだろうが、薺家が自筆で私に命じてきたのだ。笹部一族を重用していることは間違いない。私がすべきことは、ことを荒立てず、穂高 千里の卒業までの五ヶ月間を乗り切るということだ)
(あの、穂高 千里をΩに変えただとっ)
高等部三年、穂高 千里。個人能力は低いが、群れを統率し初等部・中等部・高等部と生徒会長を歴任した将来有望な若者。三冠生徒会長と慕われ、この学園に平穏な秩序をもたらしてくれた。卒業までに、なにか報奨を与えたいと康夫も考えていたところだ。
(ご両親と同じく国家防衛の道に進むのか、それともなにか希望する道があるのか。じっくり話を聞きたいと思っていたのに・・・Ωに堕としたというのかっ)
怒りに様々な感情が混じり息苦しい。康生にとって、Ωはαを発情フェロモンで惑わす低能で役に立たない社会の底辺。ΩはΩにしかなれないこの世の中で、目にかけていた千里の将来の道が閉ざされてしまったのかと憂う反面、Ωに変わった千里は無価値と切り捨てる気持ちが強くなる。
しかし、切り捨てることは許されないのだと薺家は康生に無理難題を押し付けていた。卒業まで千里を学園にこのまま在籍させ、今までと変わらずαとして扱うこと。αしか居ないこの優生学園に、Ωを通わせるなど危険極まりない。ありえないと、康生は無意識に頭を横に揺らしていた。御三家ならば、自分が榊家に仕える人間だということまで恐らく把握されているだろう。つまり、コレを榊家も黙認していることになる。引受難いが引き受けざるを得ない。(我が学園にΩを通わせるなど・・・)立ちくらみで揺らいだ身体を、机に手を付けることでなんとか立て直す。この場に崩れ落ちてしまいたいが、そんな無様な姿を福に見せるのは耐え難い。康生は手紙を丁寧に折りたたみ封筒に戻すと、ソファーに腰掛けていた福に両手を添えて返した。福も同じようにして受け取り、ジャケットの内ポケットへ戻す。
笹部一族が特化型αであることは、この手紙を直接受け取った康生と、千里の精神ケアに当たる養護教諭のみに明かし、それ以外に漏らすことは固く禁じる。そして、今後も笹部一族を変わらず受け入れることまで事細かに指示されていた手紙には、読み終えた後、福の目の前で燃やすか、福に返却することまで書かれていたのだ。御三家ではなく笹部 福からの手紙であれば、投げつけ全て断り二度とこの学園に関わらないよう叩き出しているところだ。康生は、自分に言い聞かせる。
(明るみに出ればこの世を乱すということもあるのだろうが、薺家が自筆で私に命じてきたのだ。笹部一族を重用していることは間違いない。私がすべきことは、ことを荒立てず、穂高 千里の卒業までの五ヶ月間を乗り切るということだ)
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