Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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5 統括学園長室

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「ソレ見て血相変えるってことは、あんたも関係者なんだよな。いやぁ、助かったぜ。何にも知らねぇ人間に、イチから説明すんのは面倒くさいしさぁ」
 秘する御三家と関わりを持てるαは、限られている。代々仕えている一族の中で相応しいとされた人間だけだ。康生には、なぜこの男がと訝しむ気持ちはあるが、御三家によって選別基準が異なるのかもしれないなと思い直す。問題児として名を馳せていた福は、娘の鈴と同じく決闘では負け無しの能力を有していた筈だ。康生も流石に過去の全生徒を覚えていないが、良い意味でも悪い意味でも目立っていた生徒は覚えている。
 早く開けろと言外に視線で急かされ、康生の片眉はピクリと引きつった。前もって来客の予定は入っていたが、御三家絡みとは思いもよらない。心の準備もなく、軽々しく開けられるものかと睨み返すが福は全く気に留めない。さっさと話をまとめてしまいたいらしい。
 一方の康生は、なかなか気持ちが固まらない。許されるならば、わざわざ御三家が出てくるような内容が書かれたこの手紙を机の引き出しに今すぐ閉まって無いものとしたいくらいだ。(笹部 鋼の身に何かが起こったんだろうが、知らぬ存ぜぬで蓋をしてしまいたい・・・)
 しかし、御三家直々の手紙を開けぬなど不敬極まりない。康生はぐぅと口を引き絞り一度目を閉じると、覚悟を決めてペーパーナイフを使い丁寧に開封した。(願わくば、智の榊家に仕える自分が、武の薺家から封書を受け取ることはこれを最後にして頂きたい)
 分野別に始祖神に仕える御三家は、有事の際には協力を惜しまないが、基本は独立しお互いの専門領域を侵さない。わざわざ境界を越えて来た手紙は、自分が向こうの領域に招かれたとも取れるが、目の前の男を見ている限りどうも火の粉が降りかかってきたようにしか感じられない。
 目を通し、読み進めるうちにそれが確信に変わった。手紙に記されていたのは、笹部一族の血の力。食べ物のやり取りで簡単に変異種Ωを作り出せるその衝撃の事実に、康生は思わず顔を上げて福の顔をまじまじと見つめていた。変異種Ωを作り出せる特化型αは、御三家の中でも『美の橘家』が有名だ。姿や声で魅了し、その力で相手に好意を持たせて変異を促す。また、橘家に仕える一族の一部にもその血の力が受け継がれている。しかし、程度が一概に測れない魅了に比べ、笹部一族の食べ物のやり取りは単純明快で恐ろしいほどに簡単な手法だ。
(私の優秀な生徒を、Ωなどに変えれるとはっ)
 康生は、今までこの忌まわしき血が野放しにされていたことに怒りで目眩を起こしていた。
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