Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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5 統括学園長室

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 康生は、福の語ったことが何を示しているのか一瞬で思考がそこへ行き着き心臓が凍りついた。身体中から血の気が失せ、動揺のあまり悲鳴が漏れそうになった口元を慌てて掌で覆う。(私の生徒に、変異種Ωの種を植え付けられているのか!!)
 自分の学園に、知らぬ間にばら撒かれていた無数の災厄。康生にとって、この優生学園は人生そのものと言っても過言ではない。それを人質に取られ土足でプライドを踏みにじられた怒りより、起こりうる最悪の事態ばかりに意識が向いてしまう。
 (生徒の尽くがΩに・・・っっ)
 ソファーに腰掛けたままの福は、テーブル脇でフラフラと身体を揺らし今にも倒れそうな康生を眺める。その瞳を濁す恐怖の色彩を堪能し、更に追い詰めるべく口を開いた。
「娘、息子だけじゃねぇよ?俺も含め笹部一族の卒業生は、同じことをココでして来ている。特化型αの本能に基づく行動を満たす場としても、ココは用意されてるんだよ。創設より変わらねぇ禁止事項のない校則は、生徒の自律だけを慮ったもんじゃねぇのさ。まぁ、コレは当事者のこっち側にしか伝わってねぇけどな」
 初代学園長は、御三家お墨付きを得て優生学園を開学している。全てのαをより良きαとするその目的は、特化型αにも当て嵌まる。その特性と向きあう場では、求愛給餌特化型αは当然のように食べ物を周りへ与えて本能を満たす。わざわざそのことを書き記し後世に継ぐものではないと考えていた茅野 幸悦には、特異型αが忌避される未来は視えていなかった。
 康生に与えた確かな威力の手応えに、福の瞳はランランと輝く。本来の目的よりも、獲物を追いつめ狩ることが楽しくて仕方ないと気持ちが昂ぶっていた。福はソファーから立ち上がり、喜色に満ちた顔で康生に歩み寄った。一歩一歩、福に迫られ増すのは生存本能を直接揺さぶる恐怖。怯んだ康生の機微を拾い、この戦いの勝利は確定したと福は牙を見せて嗤った。それを目にしても、康生はあれだけ薺家の使いなのだと自制し牙を伸ばさないよう堪えていたというのに、ここに至っては牙を対抗して出す気力など残っていなかった。
 αとしての能力は、康生の方が福よりも上だった。フェロモンを出していなくても、経験値で感じる弱き若造を康生は完全に侮っていた。しかし、その差をあっさり覆してくる切り札と的確に康夫の弱点を揺さぶる戦い慣れた凶暴さに追い詰めれた康生は敗北を認めるしかない。康生の目の前にいるのは、笹部 福だけでは無いのだ。歴代の笹部一族、そして鈴や鋼のあとに続く未来の子どもが背後に控えている。
 頭の中で弾き出した敗因は、自分の読みの甘さ。一対一の無敗の決闘実績に惑わされていたが、本来の笹部一族の戦い方は、群れでの狩りなのだ。自分が相対しているのは、福個人では無い。この男を敵に回せば、群れで襲いかかられ自分の命に等しい学園を無茶苦茶にされてしまう。
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