Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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5 統括学園長室

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 目を逸らし項垂れた康生を見て、勝利に気を良くした福。漸くここで自分の行動に引っ掛かりを感じ、軌道修正を測った。(やべぇ、やべぇ。トドメ刺してる場合じゃねぇよな。薺家の名前まで借りてんのに、侮ってくるからやり過ぎたわ)
 元々、福にこの奥の手を実行に移す気など微塵も無い。自分達の力を表沙汰にしても、ろくな事にはならないからだ。αから変異種Ωに変えられた人間は自殺する可能性が高いし、それは無差別テロのようなもの。笹部一族は当然迫害されて追われるだろう。最悪の末路は決まりきっているのだから。
 康生も、これが実効性には乏しく、あくまで脅しとわかっているのだが学園を人質に取られると手も足も出ない。
「委細承知した。さっさと帰ってくれ」
 康生は顔を上げ、忌々しいと福を睨みつけると扉を指差す。これ以上無い脅し方をされたのだ。もう話すことはない。
「じゃ、よろしく」
 福は当初の目的を完了したので、軽快な足取りで理事長室から出ていく。時間にして半時間程。けれど、笹部一族が薺家に仕えること、求愛給餌特化型αであること、これから優生学園にΩが混じること、最凶の脅迫を切られ何も反撃出来なかったこと・・・笹部 福に敗北したこと。続け様に突きつけられた事実は、消化不良を起こしていつまでも燻る。頭痛が益々酷くなる。
 康生は、閉じられた扉を確認し終えてからどっかりと自分の椅子に座った。肘掛け付きの黒革の椅子はデザインも座り心地も最高級品だ。自分の身体を労るように優しくフィットする背もたれに身を任せ、ゆっくりと呼吸を深く繰り返し気持ちを落ち着ける。視線の先は、壁に掛けられた歴代理事長の肖像画。(福の話していた特化型α向けとしてもこの学園が利用されていることは、どの代から忘れられていたのだろうか)御三家の名前を出した時点で、それが福が勝手に作った話ではないことは明白だ。仕える身であるからこそ、御三家の名前は軽々しく使えない。
 茅野一族は、先祖代々優生αの教育の場としてこの学園を経営してきた。康生にとっては、ここはαのための学園。(元はαだとしても、Ωが通うなど・・・)キリキリと胃が痛む。この件に関して、学園長の立場で自ら動くことはほぼ無い。が、問題が起これば直接依頼された自分の失態となる。強いては、上の榊家にも関係してくるだろう。(なんとしても、3月まで乗り越えねば・・・)
 真実を明かす必要がある養護教諭は、まだ扱いやすい。問題は、高等部の教師や寮長をどうすべきなのか・・・康生は、目を閉じ不要な情報を思考から遮断、先程植え付けられた不安と恐怖をなだめる。(こう言うときこそ、冷静な判断をせねば)
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