Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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5 統括学園長室

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 Ωを蔑視する康生にとって、変異種Ωの穂高 千里改め、笹部 千里を学園の敷地に迎えることは自分の理念を捻じ曲げねばならない最悪の事態。御三家への忠誠心を優先、半ば笹部一族の呪われた血に脅されての結果ではあるが苦渋の選択であることは変わりなかった。
 康生は、αを産む以外に価値のないΩに教育は一切不要と考えている。まして、αと並び学ぶなど不相応であり、それが元三冠生徒会長であろうともΩになった時点で例外ではなかった。
 福の来訪から数日後、約束の時間に合わせてタクシーが一台門を超えて学園の敷地へ入ってきた。警備員から電話報告を受けた康生の眉間に、くっきりと深い溝が刻まれる。前もってわかっていたことだと言うのに、激しい動悸と共に思考が乱れ、大声で叫びそうになる。康生にとって、Ωは異物であり侵略者、学園の秩序と自身の理念蝕むウィルスだった。
 「ご苦労」と反復作業で刷り込まれた形だけの労いの言葉を反射的に答えていた。が、この理不尽な状況を飲まなくてはならないことに嫌気が増す。無意識で、康生は歯を食いしばり両手の拳を強く握り締めていた。(Ωがっ、Ωがっ、Ωごときが私の学園にっっ)
 康生は、通話の切れたスマホを感情に任せ壁に投げそうになるが掴み直して思いとどまる。ゆるゆると息を吐いていても、荒ぶった精神は収まらない。発作的に出てしまうΩ蔑視の感情をコントロールするのはやはり無理だ。Ωを前にして、元のα同様の扱いなんて出来るわけがない。ソレは、Ωなのだから。
 スマホを振りかざしていた手を下ろし、やはり対面を避けて正解だったなと自分の選択の正当性を固く信じる。千里に直接会えとは言われていない。統括理事長の私が対応する必要はない。Ωが寮や校舎を行き来することは、ここで生活する以上目を瞑るしかない。しかし、この統括理事長室は自分の城の中核。その心臓部にΩなど入れてたまるか。康生はスマホを操作し、唯一の情報共有者である高等部の養護教諭に電話をかける。
 「例の二人が来た。予定通り入口の警備員にはそちらに向かうよう指示を出している。説明と例のモノを渡し、卒業まで最優先でケアに務めるように」
 『わ、わかりました』
 声が震えていたようにも聞こえたが、黙殺し通話を切った。この件で養護教諭を呼び出して以来電話で話すたびこうなのだ。(まぁ、仕方ないのだろう。任せることでの不安要素よりも、自分が直に関わる方が薺家のご意向に背くことになる)
 御三家に全く関わらない養護教諭に、康生でさえ恐れを抱いたこの件の情報を共有し生涯に渡り秘匿することを誓わせた。粛清対象になりたくなければ、自分の命を守る意味でΩ相手でもうまく立ち回るだろう。 (そう、αなのだからな)それは、康生にとって唯一信頼出来るバース性。
 この学園でより良いαを育み続けるためにも、自分もうまく立回らねばならない。Ωごときに思考を割いている場合ではないのだ。(私は私の為すべきことをすれば良いのだ。ゆくゆくは、この学園の運営を盤石の状態で娘や息子に引き継ぐためにな)
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