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「手は抜いてないだろう」
漆戸は、落ち着けと胡麻を宥める。鋼の一撃以降、胡麻は気が立っている。一時収まっていた感情の波が簡単に荒ぶる。イライラ親指の爪を噛み、その頬はヒクヒク痙攣。よっぽど最後通告が応えているようだ。
二年生の築花は、中等部でも高等部でも千里の去った生徒会を影で支える黒子の役割を担っている。代替わりした途端学園の治安が乱れるよりも、その威光が続く方が千里の名が高まると自発的に動いてのことだ。築花は鋼や千里が中等部を卒業し、自分が群れから放出されたあとも残された生徒会のフォローを続けていた。今も中等部が乱れていないのは、築花の群れが未だにそこで機能しているからだ。築花の群れは、築花より年下で形成されている。築花は、冷血帝の裏の顔を知っても尚、恐れるより鋼に憧れている。日頃から振り回されている漆戸からすると、その二面性まで真似している築花の下につく人間には同情を禁じ得ない。
築花は、生徒会引き継ぎ直後のこの時期は多忙だ。だからといって、群れに敵対する人間の動きを見落とすことはない。不穏な動きがあれば、どんな些細なことでも漆戸へ報告。自分を過信せず、必ず上位者の支持を仰ぐ堅実な性格は以前から変わっていない。漆戸は生徒会のフォローもしているので、築花とは他の下級生メンバーの中で一番連絡を取り合っていた。
築花が穂高のいない現生徒会に力を貸すのは、鋼の機嫌を伺ってのことだ。中等部でやってみたところ、千里からの評判がよく、それを鋼も良しとしているようなので高等部でも続けることにしたらしい。一時、築花が卒業した中等部が荒れかけたが直ぐにシメに行っていた。
「最後の最後にヤろうとしてるなら、卒業式間近に襲撃を計画してるってこともある。勝ち逃げできるからな。アイツらが欲しいのは、三冠生徒会長の顔に泥を塗った実績なんだ。ギリギリまで潜むのに慎重に動いてるんだろう。
先に手を出してきたと、こっちが不利な立場に追い込まれないために細心の注意を払っとかないとここまで丁寧に作り上げてきた実績がパァだぞ」
「チッ、わかってる」
理解はしているようだが、鬱積した気持ちの晴らしようはないままだ。漆戸は、仕方ないかとやり方を変えることにした。
「笹部さんに直接やってもらおうと思っていた指導をお前に振ってやる。笹部さんのあの機嫌の良さなら、まぁ大丈夫だろう。穂高さんの側から離れたくないようだったしな」
「よっしゃあっ」
漆戸は、喜ぶ胡麻を苦笑で眺めつつ、べったり千里に付き添い部屋に戻っていた鋼の後ろ姿を思い出し、頭が痛くなる。休みの前は、鋼は千里の隣や後ろを守るようにして歩いていた。漆戸からすれば、そんな格下の穂高に従う姿も異様だったが今日のはそれ以上だ。嫌がる千里に背後から抱きつき、千里の背を押すようにして歩かせていた。
(アレがずっと続くのか・・・?)千里に従う鋼にも慣れたのだから、きっとあの姿にも慣れるのだろう。が、頭が痛い。強制的に群れに入れられたとはいえ、自分のリーダーのあんな姿は周りに示しがつかず見ていて気持ちの良いものではないのだ。
漆戸は、俺もどこかで発散させたいなと思い、一層のこと、どこかのバカが仕掛けてこないかと願っていた。
漆戸は、落ち着けと胡麻を宥める。鋼の一撃以降、胡麻は気が立っている。一時収まっていた感情の波が簡単に荒ぶる。イライラ親指の爪を噛み、その頬はヒクヒク痙攣。よっぽど最後通告が応えているようだ。
二年生の築花は、中等部でも高等部でも千里の去った生徒会を影で支える黒子の役割を担っている。代替わりした途端学園の治安が乱れるよりも、その威光が続く方が千里の名が高まると自発的に動いてのことだ。築花は鋼や千里が中等部を卒業し、自分が群れから放出されたあとも残された生徒会のフォローを続けていた。今も中等部が乱れていないのは、築花の群れが未だにそこで機能しているからだ。築花の群れは、築花より年下で形成されている。築花は、冷血帝の裏の顔を知っても尚、恐れるより鋼に憧れている。日頃から振り回されている漆戸からすると、その二面性まで真似している築花の下につく人間には同情を禁じ得ない。
築花は、生徒会引き継ぎ直後のこの時期は多忙だ。だからといって、群れに敵対する人間の動きを見落とすことはない。不穏な動きがあれば、どんな些細なことでも漆戸へ報告。自分を過信せず、必ず上位者の支持を仰ぐ堅実な性格は以前から変わっていない。漆戸は生徒会のフォローもしているので、築花とは他の下級生メンバーの中で一番連絡を取り合っていた。
築花が穂高のいない現生徒会に力を貸すのは、鋼の機嫌を伺ってのことだ。中等部でやってみたところ、千里からの評判がよく、それを鋼も良しとしているようなので高等部でも続けることにしたらしい。一時、築花が卒業した中等部が荒れかけたが直ぐにシメに行っていた。
「最後の最後にヤろうとしてるなら、卒業式間近に襲撃を計画してるってこともある。勝ち逃げできるからな。アイツらが欲しいのは、三冠生徒会長の顔に泥を塗った実績なんだ。ギリギリまで潜むのに慎重に動いてるんだろう。
先に手を出してきたと、こっちが不利な立場に追い込まれないために細心の注意を払っとかないとここまで丁寧に作り上げてきた実績がパァだぞ」
「チッ、わかってる」
理解はしているようだが、鬱積した気持ちの晴らしようはないままだ。漆戸は、仕方ないかとやり方を変えることにした。
「笹部さんに直接やってもらおうと思っていた指導をお前に振ってやる。笹部さんのあの機嫌の良さなら、まぁ大丈夫だろう。穂高さんの側から離れたくないようだったしな」
「よっしゃあっ」
漆戸は、喜ぶ胡麻を苦笑で眺めつつ、べったり千里に付き添い部屋に戻っていた鋼の後ろ姿を思い出し、頭が痛くなる。休みの前は、鋼は千里の隣や後ろを守るようにして歩いていた。漆戸からすれば、そんな格下の穂高に従う姿も異様だったが今日のはそれ以上だ。嫌がる千里に背後から抱きつき、千里の背を押すようにして歩かせていた。
(アレがずっと続くのか・・・?)千里に従う鋼にも慣れたのだから、きっとあの姿にも慣れるのだろう。が、頭が痛い。強制的に群れに入れられたとはいえ、自分のリーダーのあんな姿は周りに示しがつかず見ていて気持ちの良いものではないのだ。
漆戸は、俺もどこかで発散させたいなと思い、一層のこと、どこかのバカが仕掛けてこないかと願っていた。
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