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9 大浴場
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「まぁ、理由なんてどーでも良いんですけどね。卒業まで、でっきるだけ笹部先輩と一緒にいときたいですし」
「・・・あー、お前ならそうなんだろうなぁ」
フフッと楽しげに笑う築花を、ハハハと乾いた笑みを浮かべ流す漆戸。(俺は、でっきるだけ関わりたくないけどね)物好きな後輩の言葉は、何度聞かされてもドン引きだ。ここまで鋼を心酔するなんて、何をされたんだろうと恐ろしくさえある。ただ鋼は、歴史ある家柄と血筋の流れで調子に乗っていた築花の鼻をバッキリ根本から折っただけ、ではあるのだが。単体でも上位の築花と、その従者として守護する峯森二人相手に鋼が圧勝したのは中等部出身者の間では有名な話だった。
初めての完全敗北で鋼を盲目的に尊敬する築花にとって、鋼が卒業するまでの残された時間にいかに自分が絡むかは最重要課題だ。中等部では、自分なりに鋼の役に立てた気でいたのに卒業と同時にあっさり群れから放り出されてしまった。人に冷たくされるのも鋼が初めてだった築花にとって、もちろん人から切り捨てられたのも初めて。あまりにショックで暫く抜け殻になっていたほどだ。(実際、一週間寮の自室に引きこもり泣いて過ごした)
見兼ねた峯森が、鋼の目が届かなくなるなり中等部を荒らすと千里の評判が落ち鋼の怒りを買うのではないか。そうすると、自分達が高等部に進学したときに、また群れに入れてもらえなくなるぞと唆し心機一転。鋼の群れに返り咲くためだけに中等部を取りまとめ、自分達が卒業したあとも暫くはそれが維持されるよう築花の群れを拡大した。築花が中等部を卒業して一年半、今でも中等部は千里が整備したままのやり方を踏襲する生徒会と、築花の群れが仕切っている。
築花の脱いだ服を、最後の一枚まで律儀に受け取り、黙々と畳んで仕切られた棚に入れていく峯森は深々と溜息。これみよがしの態度をされても、築花は気にせず目的めがけて「先パーィ」と足取り軽く浴室へ去っていく。
「あの調子だと、また卒業したらヤバくなるんじゃないか?」
卒業後の中等部にも気を配っていた漆戸は、築花の引きこもりについても把握済だ。
「また群れから出される心づもりはするよう、進言してはいるんですが・・・」
峯森は漆戸に応えつつ、築花を追いかけるため手早く自分の用意を済ませる。立花家の分家筋の中から、次期当主の従者として同年代より選抜されたのが峯森だ。まさか、築花が鋼をこれほど慕うようになるとはと中等部入学後から頭を痛めている。敵と味方を明確に区別し差別する鋼のやり方は、今後の築花家にとって良い影響よりも悪い影響が出るのは目に見えていた。一度離れた反動なのか、中等部より鋼にべったりの築花は、鋼の二面性、スィーツ王子と冷血帝の真似まで始めている。
「笹部さんよか、穂高さんを攻略して群れから出ないで済むようにするとか、こっちに入学して早々鼻息荒く言ってなかったっけ?」
「まぁ、本人はそのつもりでいるようなんですが、笹部先輩を前にするとそこまで頭が回らなくなるらしく・・・三年生に上がられてからは、特に酷くなりまして」
「あそこまで来たら、言っちゃ悪いけど病気だよな」
「はい、俺もそう思ってます」
軽く会釈してから浴室へ向かう峯森。漆戸には、築花家の本家と分家の関係はわからない。が、峯森に築花を見限る選択はないんだなぁとその背を見送った。
「・・・あー、お前ならそうなんだろうなぁ」
フフッと楽しげに笑う築花を、ハハハと乾いた笑みを浮かべ流す漆戸。(俺は、でっきるだけ関わりたくないけどね)物好きな後輩の言葉は、何度聞かされてもドン引きだ。ここまで鋼を心酔するなんて、何をされたんだろうと恐ろしくさえある。ただ鋼は、歴史ある家柄と血筋の流れで調子に乗っていた築花の鼻をバッキリ根本から折っただけ、ではあるのだが。単体でも上位の築花と、その従者として守護する峯森二人相手に鋼が圧勝したのは中等部出身者の間では有名な話だった。
初めての完全敗北で鋼を盲目的に尊敬する築花にとって、鋼が卒業するまでの残された時間にいかに自分が絡むかは最重要課題だ。中等部では、自分なりに鋼の役に立てた気でいたのに卒業と同時にあっさり群れから放り出されてしまった。人に冷たくされるのも鋼が初めてだった築花にとって、もちろん人から切り捨てられたのも初めて。あまりにショックで暫く抜け殻になっていたほどだ。(実際、一週間寮の自室に引きこもり泣いて過ごした)
見兼ねた峯森が、鋼の目が届かなくなるなり中等部を荒らすと千里の評判が落ち鋼の怒りを買うのではないか。そうすると、自分達が高等部に進学したときに、また群れに入れてもらえなくなるぞと唆し心機一転。鋼の群れに返り咲くためだけに中等部を取りまとめ、自分達が卒業したあとも暫くはそれが維持されるよう築花の群れを拡大した。築花が中等部を卒業して一年半、今でも中等部は千里が整備したままのやり方を踏襲する生徒会と、築花の群れが仕切っている。
築花の脱いだ服を、最後の一枚まで律儀に受け取り、黙々と畳んで仕切られた棚に入れていく峯森は深々と溜息。これみよがしの態度をされても、築花は気にせず目的めがけて「先パーィ」と足取り軽く浴室へ去っていく。
「あの調子だと、また卒業したらヤバくなるんじゃないか?」
卒業後の中等部にも気を配っていた漆戸は、築花の引きこもりについても把握済だ。
「また群れから出される心づもりはするよう、進言してはいるんですが・・・」
峯森は漆戸に応えつつ、築花を追いかけるため手早く自分の用意を済ませる。立花家の分家筋の中から、次期当主の従者として同年代より選抜されたのが峯森だ。まさか、築花が鋼をこれほど慕うようになるとはと中等部入学後から頭を痛めている。敵と味方を明確に区別し差別する鋼のやり方は、今後の築花家にとって良い影響よりも悪い影響が出るのは目に見えていた。一度離れた反動なのか、中等部より鋼にべったりの築花は、鋼の二面性、スィーツ王子と冷血帝の真似まで始めている。
「笹部さんよか、穂高さんを攻略して群れから出ないで済むようにするとか、こっちに入学して早々鼻息荒く言ってなかったっけ?」
「まぁ、本人はそのつもりでいるようなんですが、笹部先輩を前にするとそこまで頭が回らなくなるらしく・・・三年生に上がられてからは、特に酷くなりまして」
「あそこまで来たら、言っちゃ悪いけど病気だよな」
「はい、俺もそう思ってます」
軽く会釈してから浴室へ向かう峯森。漆戸には、築花家の本家と分家の関係はわからない。が、峯森に築花を見限る選択はないんだなぁとその背を見送った。
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