73 / 111
9 大浴場
3
しおりを挟む
漆戸が服を脱ぎ終わった頃、群れの中で一番図体のでかい葛籠が入ってきた。その後ろには、明らかに不服気な胡麻と緊張で青褪めた木曽が続く。漆戸と葛籠がここに来た際、まだ来ていなかった二人だ。呼びに行かなければ来ないのではないかと、漆戸が呼びに行かせたのだ。
鋼が群れでの入浴を伝えに来たとき、胡麻は入浴時間まで拘束してくるなと後からブチブチ文句を言っていたので来ない可能性があった。力の無いαであればいざ知らず、優生αの胡麻はそんなところまで指図されることに慣れていない。鋼に痛みつけられた鬱憤を晴らしたいがために、あとのことは考えず安易な行動をしては怒りを買う。それが胡麻のお決まりのパターンなのだ。
一方の木曽は、なにか裏があるのかとその場ですっかり怯えていたので、読めない鋼の考えに逡巡し過ぎて部屋から出れないのでは無いかと思ったのだった。
(どうやらそのまんまだったみたいだな)
ご苦労さんと、葛籠を視線で労い動きの鈍い二人に発破をかける。
「急げ、胡麻、木曽。笹部さんも、穂高さんも、もう先に入ってるぞ」
「チッ、俺が入る前に、さっさと済ませて出てきたら良いのによ」
部屋着を脱ぎながら、まだブチブチ文句を漏らす胡麻。
「笹部さんはそんなこと無いだろうが、穂高さんなら群れで入るってなったら、全員来るまで出てこないだろう。待ってる間に逆上せて倒れでもしたら、一番遅刻した人間が責任取らされるぞ?」
(とばっちりで、管理が出来てない俺にも飛び火しそうだしなぁ)漆戸は、懲りない胡麻に呆れつつ、気がどんどん重くなる。風呂で一日の疲れをゆっくり癒やしておきたいが、このメンバーでとなると諦めざるを得ないだろう。フォローをし忘れて鋼に当たられるのは、勘弁したい。
「あー、それはマズイッスね」
千里の名前が出た途端、木曽の動きがわかりやすいほどに早まる。パパッと服を脱ぐと、畳む間も惜しんで走っていった。大変わかりやすい行動には可愛げを感じる。高等部から編入した一学年下の木曽は、一時千里と同室になり漆戸同様鋼から手荒い歓迎を受けた。しかも、そこで諦めれば良いのに、わざわざ一対一の服従か死かを迫る決闘をあの鋼に申し込んた強者、いや、無鉄砲な後輩だ。多少の抵抗は試みたものの、鋼の殺気に満ちたフェロモンに縮こまり、αにとっての死、牙を抜かれる寸前で千里が仲裁に入ったのだ。本来決闘は、敗者が服従か死かを選ぶかどちらかを強制されるまで決着はつかず、それまで他者が割って入ることは許されない。プライドをかけた戦いに横槍を入れる行動は、土足で聖域を踏み荒らされるようなものだからだ。
(戦闘モード全開の笹部さん相手に、「やり過ぎた、バカネッ」って喝を入れられんのは穂高さんしかいないよなぁ。プライドが邪魔して服従を受けいれられ無かった木曽なんか、「高等部からの編入で気を張りすぎていたんだろう」って気遣われたばかりか、穂高さんに荒れた態度をとってたことを責めもしてこない救世主ぶりにコロッとやられたもんなぁ)
鋼が群れでの入浴を伝えに来たとき、胡麻は入浴時間まで拘束してくるなと後からブチブチ文句を言っていたので来ない可能性があった。力の無いαであればいざ知らず、優生αの胡麻はそんなところまで指図されることに慣れていない。鋼に痛みつけられた鬱憤を晴らしたいがために、あとのことは考えず安易な行動をしては怒りを買う。それが胡麻のお決まりのパターンなのだ。
一方の木曽は、なにか裏があるのかとその場ですっかり怯えていたので、読めない鋼の考えに逡巡し過ぎて部屋から出れないのでは無いかと思ったのだった。
(どうやらそのまんまだったみたいだな)
ご苦労さんと、葛籠を視線で労い動きの鈍い二人に発破をかける。
「急げ、胡麻、木曽。笹部さんも、穂高さんも、もう先に入ってるぞ」
「チッ、俺が入る前に、さっさと済ませて出てきたら良いのによ」
部屋着を脱ぎながら、まだブチブチ文句を漏らす胡麻。
「笹部さんはそんなこと無いだろうが、穂高さんなら群れで入るってなったら、全員来るまで出てこないだろう。待ってる間に逆上せて倒れでもしたら、一番遅刻した人間が責任取らされるぞ?」
(とばっちりで、管理が出来てない俺にも飛び火しそうだしなぁ)漆戸は、懲りない胡麻に呆れつつ、気がどんどん重くなる。風呂で一日の疲れをゆっくり癒やしておきたいが、このメンバーでとなると諦めざるを得ないだろう。フォローをし忘れて鋼に当たられるのは、勘弁したい。
「あー、それはマズイッスね」
千里の名前が出た途端、木曽の動きがわかりやすいほどに早まる。パパッと服を脱ぐと、畳む間も惜しんで走っていった。大変わかりやすい行動には可愛げを感じる。高等部から編入した一学年下の木曽は、一時千里と同室になり漆戸同様鋼から手荒い歓迎を受けた。しかも、そこで諦めれば良いのに、わざわざ一対一の服従か死かを迫る決闘をあの鋼に申し込んた強者、いや、無鉄砲な後輩だ。多少の抵抗は試みたものの、鋼の殺気に満ちたフェロモンに縮こまり、αにとっての死、牙を抜かれる寸前で千里が仲裁に入ったのだ。本来決闘は、敗者が服従か死かを選ぶかどちらかを強制されるまで決着はつかず、それまで他者が割って入ることは許されない。プライドをかけた戦いに横槍を入れる行動は、土足で聖域を踏み荒らされるようなものだからだ。
(戦闘モード全開の笹部さん相手に、「やり過ぎた、バカネッ」って喝を入れられんのは穂高さんしかいないよなぁ。プライドが邪魔して服従を受けいれられ無かった木曽なんか、「高等部からの編入で気を張りすぎていたんだろう」って気遣われたばかりか、穂高さんに荒れた態度をとってたことを責めもしてこない救世主ぶりにコロッとやられたもんなぁ)
2
あなたにおすすめの小説
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる