Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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11 大浴場-Ⅱ

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 自分のΩと同じ部屋で寝起きし、食事に風呂に学校生活も共有して一日中一緒に過す。そんな日々が続き、鋼は毎日毎時毎分機嫌が良い。千里に変異種Ωとして生きていく覚悟がない段階で、自分が手を出せば死んでしまう。慎重に慎重にことを運べと、父親から命じられているから我慢、我慢。変異種Ωにしちゃったし、もう戸籍上は家族だし、誰よりもそばにいて鋼の腹の中に収まってるも同然だから気持ちに余裕が生まれる。眠りが深い千里の布団に潜り込んでみたり、そのときに指先や頬や唇に軽くキスするくらいは大丈夫。
 千里も最初こそ鋼を警戒していたが、一ヶ月以上経っても以前と変わらない距離感を保っているように見せているので気を緩めつつあった。確かに毎日番避けを取り外してはつけ直すので、変異種Ωになったことは意識から外れない。けれど、日常生活の記名は穂高で通しているので笹部千里になっている気がしない。(だいたい、鋼の妻などと意味がわからないので考えることは放棄した)
 番避け以外に目に見えて変化したことといえば、入浴時間が別に設けられたことと、常に鋼と穂高ナンバーズの誰かが離れないことくらい。鋼と同室になったことは確かに変化ではあるのだが、入寮したときから我が物顔で入り浸っていたから『消灯時間に出ていかなくなった』、それくらいの違いだった。
 千里は、今日も鋼の髪を洗ってやりながら、指先を流れる自分の成果に微笑する。その前に俯いて座る鋼は、うっとりとその指使いに身を任せ目を閉じていた。
「自分でも洗ったらどうだ?」
「えー、ちーちゃんのほうが上手だし、俺の髪がツヤツヤになるからなぁ」
 裏で群れを動かし、敵対する生徒は容赦なく鎮圧。女子生徒の相手も適度にこなしていた鋼は、これまで同じ寮で寝起きしながらあまり千里と入浴時間が重なっていなかった。忙しい千里の入浴時間が短かったこともあり、洗ってもらえてもこれほど丁寧では無かった。(ちーちゃんともっと一緒にゆーっくり入れば良かったなぁ)
 すでに身体を洗い終えた他の6人は、湯船で話しをしたりこちらを気にして見ているようだが気にはならない。笹部一族にとっての群れは、家族と同一であり、所属する人間は他の血筋よりも盲目的に信頼出来る相手を指す。同じ血を共有し秘密を厳守する長い歴史から、笹部一族の群れから裏切り者は出たことがない。そのため、鋼は自分の群れの一員が自分の千里に手は出すことがないと無意識に判断。出来れば千里を独占したかったが、周りに居ても煩わしさは感じない存在。千里と同等では無いが、空気みたいに馴染んでいた。
「お前が適当過ぎるんだ。伸ばすなら伸ばすなりの努力をしろ。例えば、根本と毛先の洗い方をだな」
「うんうん、ちーちゃんに任せるー」
 千里は自主メンテナンスを口では勧めているが、今の状況に悪い気はしていなかった。頼まれてもいないのに、シャンプー前のブラッシングまでしている。千里がごねる鋼に根負けして毎日洗うようになり、鋼の毛質が改善。寝起きの爆発も小規模になり、そのわかりやすい達成感が生徒会業務からも雑務からも外れた(退院後も雑務の窓口は漆戸のままで戻されなかった)千里のやりがいのひとつにすり替わった。鋼のブラッシングとみつ編みは、すっかり千里の担当だ。
 αにとって、頭に触れられることはプライドを鷲掴みにされるのと変わらない。格下や気に入らない人間なら、反射的にその手を振り払い、相手をねじ伏せ攻撃してしまうので命に関わるくらい危険な行為だ。逆に、自分が気を許した相手に触れられると気持ちが良い。それが千里なのだから、鋼は気持ちが高揚して鼻歌まで歌っていた。
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