失恋の特効薬

三日月

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悠介は、ずっと続けてきた野球を中学で肩を壊してやめていた。
高校に入って新たな部活に打ち込む気も起きず、土日は家でゆっくりしていることが多い。
瞬から、急に明日と言われてもお願いを引き受けることに問題はなかった。

習慣で六時に目が覚めたので、朝食でも作ろうかと一階に降りる。
初めて瞬の部屋に通され、一方的に決められた服のコーデを渡されると、「ちょっと段取りするから、詳しくは明日ね」と言い逃げされ部屋から追い出された。
結局行き先も教えて貰えていない。

まさかとは思うけど、花嫁強奪とかそんなんじゃないよな?

自分まで、ちゃんと見られる格好に着替える羽目になるとは。
昨夜はあれから色々考えてしまい、眠りは浅かった。
悠介が「くはぁ~」とあくびを噛み殺していたら、美味しそうな匂いが漂ってくる。


ん?


この家にいるのは、悠介と瞬だけだ。
義兄は、その日に仕事があろうが無かろうが、こんな早朝に自室から出てくることは無かった。
そういえば、何時から出るとかの話もしてなかった。
もしかして、寝坊してしまったんだろうか。

パタパタ早足でキッチンまで行くと。


「おはようっ、悠介」

「お、はよようございます??」


カウンターには、卵焼きやウィンナーのおかずが入ったお弁当箱が1つとおにぎりが2つ。
瞬の手の中には、おにぎりが1つ。
キュッ、キュッとリズムよく握られているところだった。 

なんでお弁当?
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