鬼ごっこ~あのこがほしい~

三日月

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前日譚(黒曜&雅)

捕まえる

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・・・スルスルと。

スルスルと。

閉ざして隠して埋めていた記憶。

母に教えられた『鬼ごっこ』の歌の記憶。


「探して、見て、逃げて。
ここまで教えた3つの歌は、覚えてるナ?」

真剣な母の紅の瞳。

「うん、覚えてるよ」

口ずさんでいた、あの場所はどこだったんだろう。
和室がいくつも連なるどこかの屋敷。
見渡す限り、母と自分しかいなかった。
自分の声が四方に伸びていくのが気持ちよくて。
真剣な母と違い、俺はいつもそこでは笑っていた。

いや、違うな。

たまにしか会えない母に、浮かれていたんだ。

「今度は、鬼を捕まえる歌ダ」
「探して、見て、逃げるのに・・・?
ボクが、鬼を捕まえるの?
皆でしてる鬼ごっこじゃズルになるよ?」
「普通の鬼ごっこでは、確かにズルだナ。
母が教えているのは、いつものじゃない。
友達が、鬼じゃない。
ミヤビちゃんを捕まえに来たホンモノの鬼。
ミヤビちゃんが捕まえたいと思ったホンモノの鬼を捕まえるための歌」
「ホンモノの鬼は怖いって、母さんが言っていたのに・・・捕まえるなんて、変なの」

理解できないと口を尖らせる俺。

反し、母は眉を寄せて続けた。

「そんなときが、来なければいいんだけど、ナ。
そのうち、抑え切れずに捕まってしまう。
探して、見て、逃げて」

順に指を降る母の雰囲気に飲まれる。

「それでも捕まれたら、逆に捕まえてヤレ。
もし、捕まえられなければ縛る。
教えているのは、生き抜くために必要な五連歌だから。
要らないときは、蓋をして。
外では、必要なときしか歌うナ」

右手の指がすべて閉じ、また開く。
母は、親指だけを折り話を続けた。
真剣で、少し震えた声だった。

「今日は、4つめ。
捕まえる歌を覚えよう」

こくりと頷き、覚えたのは・・・
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