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弥勒過去編(瑛二&白銀)
許さない 2
しおりを挟む「迎えに来たよ」
ビスクドールのような愛らしい顔で。
その鬼は、僕に話しかける。
まだ変声前の、幼い少年の声。
赤く濡れた唇、その口角が上がる。
フワフワした金髪が、血生臭い風に揺れている。
鬼の美しさは、力と比例する。
この鬼の実力は、如何ほどか。
今まで殺して来た鬼とは比べ物にならない。
恐怖で身がすくんだのは、このときが初めてだった。
「あぁ、やはりお前しかいない」
宙に浮いたまま、僕を中心に一周し、ゆったり笑う。
何をいっているのか、理解さえ出来ない。
両肩に、手を載せられ。
身体が恐怖で震える。
「そう怖がるな、オレの花嫁。
オレは、百夜。
その愛らしい口で、百夜の宮と呼んでくれ。
あぁ、早く、この身体を愛でたいな。
すらりとしたその足を割り開き。
数多の同族を手にかけてきたその腕で俺を抱きしめろ」
その口が、僕の耳元で真名を囁き。
僕は強制的にそれを繰り返させられる。
何が起こっているのか。
何をされているのか。
「お前はオレに選ばれた。
死ぬのは許されないぞ?
死んだところで、その体でオレの子を孕むことになる。
それなら、生きて俺に愛されたほうが幸せだ。
その美しい魂と身体の全で、俺の子どもを増やしてくれ」
理解できない。
何を、いっている。
手も足も出ない。
圧倒的な力の差。
グサリと刺さる牙の痛み。
耳元で聞こえる、飲み込む音。
それが、我に返る合図となった。
一閃
抜刀し、その首を狙う。
「あぁ、怖い、怖い」
軽くかわし、僕から離れて笑っている。
その口は、鮮血に染まっていた。
鬼の額から、角が地面へと落ちていく。
い、今しかないっ
僕はその場から逃げる。
一人では、勝てない。
どうすれば、どうすればいいのか。
真名をわざと奪わせたということは。
真名で縛ることも出来ないだろう。
首筋に手を当てれば、ぬるりと濡れた感触。
まだ出血が続いていることがわかる。
それに、花嫁。
死んでも孕ませる・・・
ゾクリと寒気が体中を駆け巡る。
文献で伝えられた鬼落ちにも、子を孕ませるなんて記述は無かった。
しかも、僕は男だぞ!?
冗談にしては、自分の角を落としてまですることとは思えない。
ちくしょうっ
ちくしょうっ、ちくしょうっ
ふざけるなっ、ふざけるなっ、ふざけるなっ
あと、あと一歩で。
僕の願い、ただ一つの願いは。
成就するところまで来ているのに!
僕は、こんなところで・・・
死体をまたぎ、血の海に足を滑らせながら。
最善の方法を、探る。
生き延びる術は、出てこない。
だが。
死ぬだけでは、ダメだ。
ただ、死んでも、あんな鬼の子どもを孕まされてしまうだけだ。
結局、ここまで頑張っても。
瑛二に全てを押し付けることになるなんて。
「花嫁よ、どこまで行くのだ?
隠れん坊のつもりか?
楽しくていいな~
とぉ、数えたら迎えにいこう。
お前が初めに抱かれたい場所はどこだろうなぁ?」
背中から、鬼の笑い声が追ってくる。
動く気配はない。
そうだ、強い鬼ほど、自分の力を過信する。
時間は10秒。
その間に、僕は、覚悟を。
覚悟を決めなくては。
「初夜はそこでいいのか?
オレの花嫁よ」
刀を構え、迎え撃つ体制。
崖を背にし、退路を立つ。
心の中で、瑛二への謝罪はしつくした。
例え、意味が無くても。
例え、届かなくても。
僕には、もう、これ以上の策が思いつかない。
「泣いているのか?
可愛らしいな」
近づこうとする角無し鬼。
この顔は、忘れない。
僕の今まで生きていた意味を。
僕の全てを断ち切ったお前を。
許さないっ
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