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弥勒過去編(瑛二&白銀)
願い 1
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瑛二は、刀を取らない。
僕が促しても、何も言わない。
早く殺してくれないと。
僕が鬼の感覚で、何をしでかすかわからない。
「瑛二、失敗しても決して反撃はしない」
僕は、殺して欲しいと、心の底から願っている。
他の感情に振り回される前に、殺して欲しい。
「・・・散々俺を無視してきたくせに、姿を変えて殺せとは。
勝手なヤツだなっ」
瑛二の拳が、僕の頬を捉えても。
軽く体が傾くだけ。
人間のときなら、座っていられずに手を突いていたかもしれないけど。
僕は黙ってそれを受け止める。
「ハッ、全然、だな。
俺の拳が砕けちまう」
舌打ちし、苦々しい顔で僕を睨む。
あぁ、そんな風に受け取られていたんだな。
ただ、守りたかっただけだと伝えても。
今更何になるんだろう。
僕は黙って頭を下げる。
「どうか、当主の手で殺してください」
どうか、どうか、瑛二の手で
僕を殺して
僕の息の根を止めて
僕をずっと覚えていて
僕を忘れないで
明日から、きっと瑛二は生活が一変してしまう。
自由が利かない毎日になる。
何も知らないとバカにする輩も出てくるだろう。
でも、僕を切ることで箔がつく。
前当主の不始末を処罰することで、多少なりとも評価される。
そんな理由、つけたところで。
僕は、ただ、殺されたいだけなんだ。
覚えていて欲しいだけなんだ。
ずるい兄で、ごめんね。
頭を伏せて待つ僕の視界に。
瑛二の素足が入ってくる。
近づいてくる。
僕は、覚悟を決めて目を閉じる。
何度斬りつけられることになっても、反撃はしない。
だから、早く・・・
『・・・どんどんばし 渡れ さあ 渡れ
こんこが出るぞ さあ 渡れ
どんどんばし 渡れ さあ 渡れ
鬼が出るぞ さあ 渡れ』
な・・・っ
思わず、顔を上げる。
なんで、それを知ってるんだ!?
驚く僕を、瑛二は見下ろす。
瑛二も驚き、一瞬歌が途切れるが、止めようとはしなかった。
『どんどんばし 渡れ さあ わたれ
名を言うて 渡れ さあ 渡れ』
緊張した顔のまま、最後まで歌いきった。
そして、沈黙。
歌が終わっても、何も起こらない。
何も知らない、力を込められない瑛二が歌っても。
鬼を縛る効力なんてない。
ほかの家に伝わる、契り歌。
それを知っていただけでも驚きだ。
僕が促しても、何も言わない。
早く殺してくれないと。
僕が鬼の感覚で、何をしでかすかわからない。
「瑛二、失敗しても決して反撃はしない」
僕は、殺して欲しいと、心の底から願っている。
他の感情に振り回される前に、殺して欲しい。
「・・・散々俺を無視してきたくせに、姿を変えて殺せとは。
勝手なヤツだなっ」
瑛二の拳が、僕の頬を捉えても。
軽く体が傾くだけ。
人間のときなら、座っていられずに手を突いていたかもしれないけど。
僕は黙ってそれを受け止める。
「ハッ、全然、だな。
俺の拳が砕けちまう」
舌打ちし、苦々しい顔で僕を睨む。
あぁ、そんな風に受け取られていたんだな。
ただ、守りたかっただけだと伝えても。
今更何になるんだろう。
僕は黙って頭を下げる。
「どうか、当主の手で殺してください」
どうか、どうか、瑛二の手で
僕を殺して
僕の息の根を止めて
僕をずっと覚えていて
僕を忘れないで
明日から、きっと瑛二は生活が一変してしまう。
自由が利かない毎日になる。
何も知らないとバカにする輩も出てくるだろう。
でも、僕を切ることで箔がつく。
前当主の不始末を処罰することで、多少なりとも評価される。
そんな理由、つけたところで。
僕は、ただ、殺されたいだけなんだ。
覚えていて欲しいだけなんだ。
ずるい兄で、ごめんね。
頭を伏せて待つ僕の視界に。
瑛二の素足が入ってくる。
近づいてくる。
僕は、覚悟を決めて目を閉じる。
何度斬りつけられることになっても、反撃はしない。
だから、早く・・・
『・・・どんどんばし 渡れ さあ 渡れ
こんこが出るぞ さあ 渡れ
どんどんばし 渡れ さあ 渡れ
鬼が出るぞ さあ 渡れ』
な・・・っ
思わず、顔を上げる。
なんで、それを知ってるんだ!?
驚く僕を、瑛二は見下ろす。
瑛二も驚き、一瞬歌が途切れるが、止めようとはしなかった。
『どんどんばし 渡れ さあ わたれ
名を言うて 渡れ さあ 渡れ』
緊張した顔のまま、最後まで歌いきった。
そして、沈黙。
歌が終わっても、何も起こらない。
何も知らない、力を込められない瑛二が歌っても。
鬼を縛る効力なんてない。
ほかの家に伝わる、契り歌。
それを知っていただけでも驚きだ。
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