鬼ごっこ～あのこがほしい～

弥勒過去編(瑛二＆白銀)

異常 side 瑛二 ２

気付いた途端、指先が震える。
身体から血の気が失せる。

時が止まったように。
何の反応も示さない瑛一。

「おい、マジか・・・？」

食卓に残された、通帳と印鑑。
これは、誕生日プレゼントじゃない。
形見ってことか？

「ふざけんなっ！！」

思わず、寝かせた瑛一の両肩を掴み揺さぶって。
されるがままの、身体にどきりとする。
ぐらぐら揺れるだけの首。
力の入ってない身体はやけに重い。

手を、離し、床に戻す。
・・・だめだ。
こんなこと、してる場合じゃない。

目蓋を閉じさせて。
浅いながらも息をしていることを、もう一度確認する。

あの調子じゃ、アイツらに当主命令だと迫っても、無駄だな。
わからない、調べる、時間が要る。
のらりくらりと逃げる狸が目に浮かぶ。
神宮寺家の人間も、アテにはならない。
身内を角無し鬼にしたことで、俺への敵視は仕事中も感じている。

くそっ
どこから、手をつければいいんだ・・・
まずは・・・鬼に関する資料。
眠る瑛一を残し、走る。

向かったのは、以前は瑛一の部屋。
今は俺が使っている当主の部屋の隣。
まだ俺は手をつけていない古書が並ぶ書庫。
戦術、剣術、処世術・・・分類されているが、鬼に関する資料がない。
焦って蹴飛ばした木箱。
その中の巻物も開けるが、出てこない。

「わざと、か？」

落ち着いて部屋を見渡す。
不自然な、隙間。
日焼け跡と合わない、本の並び。

「アイツ、起きたらぶっ飛ばしてやるっ」

いつから、瑛一は企んでたんだっ
怒りに任せて、壁を思い切り拳でたたく。
くっそ、落ち着けねーっ
頭ん中が沸騰しそうだ。

ありそうなのは、今の瑛一の部屋か。
俺以外、角無し鬼になった瑛一には近づかない。
俺が当主となったことで、離れに移った部屋。
ここには今日まで、俺も足を踏み入れていなかった。

敵である鬼に関する資料がゼロなんてありえねー
いくら角無し鬼を必要としなくても、おかしすぎる。

離れに向かおうとして、バランスを崩し。
壁に身体を打ち付けてしまう。
足に上手く力が入らない・・・
ったく！
こんなとこで、ショック受けてても仕方ねーだろうがっ！
自分を叱咤し、瑛一の部屋となった離れに入る。

俺は、ごちゃごちゃ物を置いて手狭に感じてたけど。
性格、だな。
すっきり整理された机や棚。
床に余分な物はないから、俺が使っていた頃より部屋を広く感じる。