テリトリー

三日月

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目的地最寄り駅で下車。
これといった名所は無いが、人通りは多い。
三種の器は、ここから徒歩五分の立地が良いビルで活動している。
改名前は、ど田舎の山でボソボソと活動していたのに、どこからそんな資金が流れてきたのか。

ちょうどロータリーの隅で、三種の器の手書き看板を持ちながら歩行者に呼びかける男が目に入った。
一見すると、中年の白作務衣を着た優男。
手の甲に直接書いたカンペを見ながら、慣れない口上を丁寧に述べている。
話し方には真面目な性格が滲んでいる。
が、目がヤバイ。
ギラギラとそこだけが異様に熱い。
分泌されたアドレナリンで自己陶酔してるんだろう。
その周囲でチラシ配りをしている揃いの白作務衣姿の女性三人の目もギラギラ。
善行を積んでいるという思い込みで、目が血走っている。
全員嘘偽りのない信者のようだ。

俺は何気ないふりを装い、チラシを一枚受け取ると数歩先で足を止める。
すでに同じものを叔父経由で渡されていたから、読む必要はない。


「興味がお有りですか?」


予定通り声をかけられ振り向く。


「ですね」


爽やかに笑って見せ、『すべての人間は、幸せになる権利がある』と太文字ゴシックで強調された文を指差し頷いた。
権利があるならそれ相応の義務はなんだと言うんだろうか。
それについては記載が無く、あるべき姿に還りましょうとあやふやに目的を謳う。


「お時間がありましたら、ぜひこちらの道場へ足をお運びください」


女性は、ハキハキ明朗に答えてチラシの地図で丁寧に案内。
他の二人も、足を止めた人間を勧誘していたがあっちは空振り。
去っていく背中に、深々と頭を下げている。
広報活動はそれほどうまく行ってないようだな。

勢いのついた宗教団体は、説法を始めた途端にサクラにつられて人が集まり、その場の雰囲気が一変。
価値観をひっくり返され、ゾロゾロと信者を増やし資金を潤沢にしていく。

今まで回された案件の中では、手を出す段階が早過ぎる⋯ってことは、コレはそこそこ確信があるってことか。
叔父は、Ω絡みの事案を闇雲に回してるわけじゃない。
ある程度の下調べをしてから回してくる。
細書からハズレくじだと侮らず、気を引き締めた方が良さそうだ。
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