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第1章 冒険の始まり

ドラゴン狩と田中

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「くそ‥秋‥」


「どうして‥」



ドンと壁を拳で殴る木下。
これ以上被害を増やすなアホ。


「琴美‥大丈夫。大丈夫だから‥俺が必ず秋を取り戻す‥そしたらまた3人で‥あの遊園地に行こう!」


「っ!うんっ、うん!」



続いて蹲る倉本さんを抱きしめる木下。
2人でよくわからん話をしながら、
2人だけの世界を作る。





「‥あんたの連れって‥」


渋い顔をして彼らを見つめてるルビーに俺はため息を吐いた。


「それ以上は言うな‥あれで通常運転や」


「‥そう‥あっ、手、その‥」


「あ、ごめんっ!!」


恥ずかしそうにそういうルビーに、
俺は手をずっと繋いでいたことに気づいて、慌ててその手を離す。

うわ、勢いでやらかしたッ
き、きもがられてたらどうしよ‥





「うん‥ありがと‥その、守ってくれて‥嬉しかった‥」

「え、ど、どういたしまして‥」


ふふっと微笑むルビーに顔がどんどん赤くなる。

お礼、言われるとか‥予想外すぎ‥

ルビーと目線があって、
何故かお互い顔が赤くなる。




「ッ、そ、それより、アイツはなんなの?‥」


「村上 秋‥どうやら、ドラゴンを狩ってる犯人はアイツで間違いないみたいやな‥」


沈黙を破るように、村上について話すルビー。
俺は、溢れそうになる怒りに、拳を握りしめた。



「っ私‥何も出来なかった‥親友の仇をうつなんて言っときながら‥」


「ルビー‥」



「っ今、ドラゴン狩りという言葉が聞こえたのですが、それは真実なのですかッ?!」


ルビーの辛そうな顔に声をかけようと口を開いた時や、
急に背後からガシッと肩を掴まれて焦る
な、なに?!誰!?



「え、王女さん?!って、その格好は‥」


パッと振り向いた先にいたのは、
髪の毛を濡らした王女さんで、
タオルを巻きつけただけのその姿は、なんというかその‥
金髪から滴る水と、その白い火照った肌が‥ってあかん、あかん!!無心や俺




「すみません‥入浴中で遅れました‥。」


「いやいやいや!おい!木下、イチャつくのもそれぐらいにして、王女さんにその着てるカーディガンでも貸してやれや!!」


俺は既にタンクトップにダボダボのズボンという、完全肌着装備で一国の姫様にお貸しできるようなものもないから、とりあえずモテ系寝巻き装備の木下に託す。


「っ!お、おう!」


「なっ、はあ、もう‥邪魔しないでよ‥」


ボソリと呟かれた倉本さんの言葉
地獄耳の俺には届いていて、拗ねたような顔をする倉本さんに俺は目を細める。

嘘泣き女‥ざまー

騙されてるぞ村上も木下もアホや‥




「そ、そんな格好っ、ほ、ほら、これ着ろよ」

「っ!ありがとうございますユウ様‥。」


「お、おう!」


見つめ合い赤面する2人に、
倉本さんがにこにこしながら、イラついてるのが分かる。
うわ、中身に気づいてしまったら、
外面もだいぶ違って見えるわ‥人間って恐ろしいな‥




「は!こんなことをしている場合ではないのです!皆様、ドラゴン狩り‥それがもしこの国で行われ、更にその犯人が王国が召喚した人物であるならば‥


ドラゴンと人の協定は崩れ


大きな戦争が、起きるかもしれませんッ」





「え、戦争‥?」
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