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序章

仕事をする田中

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‥‥


「これでよしっと」


日が落ちてきて、
それだけ長い時間作業をしていたんだと気づく。


紹介されたのは
ギルド最低ランクDランクの仕事で。
伸びきった雑草の除草作業。


かなり大変やったけど、
命的には危なくないこの仕事はとても助かる。

それに、綺麗になっていくものを見るのは気持ちがいい。




「お!随分綺麗にしてくれたじゃねえか!!見違えたよ!!」


依頼主のフレットさん。
腰を痛めて庭の手入れが辛くなったから、
ギルドに依頼を出したらしい。



「いえいえ、仕事ですから!それに、休憩中にフレットさんからもらったサンドイッチで元気出ました!」

食付きとは書いてなかったけど、
フレットさんが、良心で作ってくれたお手製サンド。結構種類があってどれも美味しくてパクパクと完食した。

フレットさんがいい食いっぷりだと嬉しそうな顔で眺めてて、ちょっと照れくさかったけど、ありがたい。


「ほほ!それはよかった!最近は歳で動けなくてな‥本当に助かったよ。ほれ、依頼完了のサインをしておいた。持って行きな!」



「はい!ありがとうございます!!」


「タナカ!!またいつでも遊びに来てくれ!」


「はい!!フレットさん、また!!」


玄関まで送ってくれたフレットさんに手を振る。


俺は清々しい気持ちでフレットさんの家を後にしたーー














「これが報酬の銀貨5枚です。」


依頼完了のサインが書かれた報告書を
ギルドに提出する。

すぐに、テキパキも処理が行われて、
受付のお姉さんが銀の通貨らしきものを5枚持ってきた。




「銀貨5枚、か‥うーん‥どのくらいの価値なんやろ‥」



「‥宿屋に泊まるには、銀貨2枚。一食で銀貨1枚ほどです。」


俺が独り言を言いながら銀貨を眺めていると、
もう俺の奇行発言に驚かなくなったお姉さんが、淡々と教えてくれる。



「っ!あ、ありがとう受付のお姉さん!!」


この対応力‥
これが仕事のできる人間か!!


「いえ‥それではお気をつけて‥」


「うん!お姉さんも仕事お疲れ様!!」


俺はお姉さんに手を振って、
ギルドを出る。



「っ、‥

私などに‥気を使わなくていいのに‥変な人‥」




俺の後ろ姿を見て、
お姉さんがボソリと何か呟いていたなんてことを、この異世界に来て初の給料に舞い上がっていた俺は知るよしもなかった。














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