希望を歌う悪の姫

花村 ネズリ

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ペア戦開幕

鈍感

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ルド「いくぞ‥」

先生と見つめ合っている、否、
先生はわたくしを睨んでおりますが‥
そんな先生に微笑んでいると、

急に右手を強い力で引っ張られ、
リカルド様に連行されます。

あら、ご機嫌が悪いですわね。


タイミングを誤った事ですか?
わたくしだって、リカルド様があのような魔法を使えるだなんて知らなかったのです‥
理解して頂きたいですわ。

そんな事を心の中で呟きながら、連れてこられたのは先ほどの控え室。


ルド「‥。」


何も言わず、じっとこちらを見るリカルド様。

これは先に謝った方が身のためかもしれませんわね‥



ラピス「‥あの‥」

ルド「枕になれ。」

ラピス「‥へ‥?えっ、と‥膝枕、の事でしょうか‥?」


予想外の言葉に戸惑う。
人間の考えなどはなから分からないけども、
リカルド様のこの行動は、
理解の範囲をこえていますわ。



ルド「‥さっさとしろ‥。」


ラピス「え、ええ‥。」


言われた通りにソファーに腰掛ける。
すると、そこがさも自分の特等席であるかの様に、リカルド様がわたくしの膝に頭を乗せる

これは‥いったいどうした事でしょう‥。

リカルド様、わたくし、貴方がなにを考えているのかさっぱり分かりませんわ‥




ラピス「リカルド様、この状態の意味を教えてくださいませ。」

ルド「少し黙れ‥。」

ラピス「‥‥。」



眉間に皺を寄せるリカルド様に困惑する。
このままこの静かな空気を感じるのも良いですが、なんせ面白くありません‥。
次は決勝だというのに‥普通はもっとこう、頑張ろう!とか、勝ちましょう!とか‥熱くなる場面では?


はあ‥
動物達のように、触れてみたらわかるでしょうか?

わたくしは、難しい顔をする黄金の髪を撫でる。



ルド「ッ‥


‥お前は‥よく、‥するのか‥?ああゆう‥こ、事を‥。」


触れた瞬間、カッと目を見開くリカルド様。
緊張した面持ちで、何かを呟く。


ラピス「なんの事です?」

よく聞き取れなくて聞き返しますが、
更に声を小さくされる‥
なんなんですの?






ルド「だ、だから‥その、あれだ!お、お互いの、く、くくくちを引っ付けるような!は、破廉恥な、事だ!!」


っ、は、破廉恥‥


ラピス「‥あれは‥仕方なくですわ‥。」




ルド「‥何人だ‥」


ラピス「‥?」

ルド「な、何人とその、く、口付けをしたんだ!!」


ラピス「まあ!レディに対してその様な質問!っ」

ルド「いいから答えろ!」


何故この方はこんなにも上からなのです!?




ラピス「‥ミカロス様を合わせて‥3人ですわ‥。はあ、これでよろしいですか?」


ルド「さ、3、人‥お、俺もした事が無いというのにッ‥?な、何故だ‥この変人女にはそれだけの経験があって‥一国の王子である俺がッ‥」


そういう事ですの‥
呆れますわ‥。
先の戦いでの事でなく‥
わたくしに負けた事に戸惑っているのですね‥。


この歳の男性なら、気になるのは当たり前でしょうが、
そういう話は普通、同性同士でするものではありませんか!



ラピス「‥リカルド様‥わたくし、足が痺れたので、おどきくださいませ。」

わたくしの事を異性と認識されていないのは、はなから分かっておりました。
しかし、最低限の常識というものがありますわ。

わたくしも、怒りを知らぬ人ではありません。


ルド「っ!?お、おい‥何故怒っているのだ‥?」


ラピス「知りませんわ。わたくしは普通です。さあ、早くおどきください。」

ルド「くっ‥俺に命令するとは良い度胸だ‥い、いや、分かった。分かったから!そう睨むのをやめろ!」


サッと青ざめるリカルド様に、冷たい視線を送る。


ルド「‥ほら退いたぞ‥。これでいいのだろ?
気になったから‥少し‥聞いただけではないか‥何故その様に怒っているのだ‥」


ほんとうに‥


ラピス「‥わたくしは‥好きで三度も唇を許した訳ではありません‥。わたくしだって、心から恋する殿方とは‥一度だって‥。
だから、その様に比べないでくださいませ。その様に‥経験が豊富な様に‥言わないでくださいませ。」

ルド「っ!?」


わたくしだって‥白馬に乗り動物達を従えて姫を救う、そんな王子様に憧れているのですのよ‥。

この方は
ほんとうに鈍感で嫌になりますわ。





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