希望を歌う悪の姫

花村 ネズリ

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ペア戦開幕

波乱の準決勝

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サラ「全てを炎へと誘え。炎魔法 ファイヤフィールド」

試合開始と共に、上級魔法を放つサラマンダー様。
いきなり短縮詠唱ですか‥実力の差を感じますわ‥


先生「あっちっ!?おいサラマンダー!!気をつけろ馬鹿!!」

フィールドに襲いかかる炎。
一番近くに居た先生が悲鳴をあげる。
あらあら、お可哀想に‥。

もう少しで丸焦げでしたわね。


まあ、わたくしもそんな事を言っていられないくらい、迫り来る炎に焦っていますが‥


ラピス「怒れる灯火よ、天へと還りなさい。

ひとつ おちて はじまる
 おわりとはじまりの音を
葬いの舞ーー」


フワリと、その姿を光に変える炎の海。
その間を縫って、リカルド様がサラマンダー様に接近する。


サラ「チッ、ミカくん!!」

ミカ「うん!風よーー」

詠唱を唱えようするミカロス様。
しかし、リカルド様の方が早いっ、


ルド「遅いーーフッ!」

ミカ「ぐあっ!!?」


リカルド様の強力な回し蹴りが、小さなその身体へときまる。
後ろへ弾け飛ぶミカロス様。


サラ「ミーくん!?くそっ、炎よ、その姿を変え、敵を切り裂け!!ファイヤタイガー!!」

炎の虎が、リカルド様に襲いかかる。
だけど、リカルド様は避けようとしません。

わたくしは、リカルド様とは別の方向へ走ります。

ラピス「甘い草木よ‥その根を張り、罪人を捕らえよ。フラワートラップ」

リカルド様ならなんとかすると、確信していた。
だから、わたくしは密かに詠唱を唱え、持ち直そうとするミカロス様に向けて、緑属性の拘束魔法を放つ。

この勝負‥いただきますわ。





ルド「‥ーーー光よ‥俺に刃向かうもの、全てを反射しろ。カウンター。」

ラピス「っ!?」

リカルド様の口から放たれた詠唱を聞いて、背筋が凍る。

わたくしっ、タイミングを誤ってっ!?
だめ‥まって!?

気付いた時にはもう遅くて‥


鋭いツルが、ミカロス様を捕らえる。
この距離じゃ解除ができないーー



ミカ「グッ!?なに!?‥ッ‥えっ‥」


ミカロス様に迫るのは、リカルド様によって反射された
サラマンダー様の強力な攻撃魔法ーーー、


サラ「ミーくん!!?」

ルド「なっ!?」


だめ、避けられない

っーー


ミカ「ひぃっ!ッグアアアア‥ァ‥」

サラ「ミカロスーーー!!?!」


サラマンダー様の、そしてミカ様の悲鳴が聞こえる。


先生「チッ、救護班を呼べ!!!!」


ああ、またやってしまった


わたくしは‥なんてことを‥


サラ「み、みーく、ん‥みーくんっ!!?」




ばたりと人が倒れた音がする。
だけれど、そこにあるのは、黒の塊。



わたくしは、サラマンダー様を押しのけ、
それを抱きしめた。

サラ「なにすっ!?‥へ‥?泣いて‥」


ラピス「、



ひとつ おちて はじまる 

絶望の誓いをーー」

届け。響け。
この声がまだ聞こえるでしょ?

お願い。間に合って。
貴方はまだ逝ってはいけないーー


わたくしは唇を噛み、
彼であるそれに
口付け、その血を流し込む。


これは、
だれにも知られてはいけなかった、
クローリー家の隠し持つ禁忌魔法。




先生「あの魔法はっ、‥ちっ‥クローリー家め‥めんどくせえもん学園に送り込んできやがったな‥‥」


ああ、生命の消えゆく光が‥

『‥ふ‥憐れだな。どうだ、虫に喰われるのはどんな感じだ?痛いか?苦しいか?
それとも、

死にたいほど惨めか?ーー』

『ぐ、え‥ぅ‥‥オニ、キスくんッ‥はっ‥ごめん‥ッごめんね‥僕が‥弱い、から‥ッ』

『ッ‥!
‥精々もがき苦しみながら、死ねーー』


『そう‥僕は‥死ぬんだね‥』





ああ、君の親友に‥




なりたかったな‥




ーーねえ‥ここよ、


『っ!‥君は‥誰‥?』


私の歌を


『‥歌‥』


みつけてーー




ミカ「ん‥、」


刹那、微かに声が聞こえて‥
不安で閉じていた瞳をゆっくりと開く。

ぼやけたその先に見えたのは、生気のある緑の瞳。




まに、あった‥



ミカ「‥?ん!?んん!?」

ミカロス様の
唸り声と、真っ赤な頬に、不安になる。
なに?どこかまだ痛みますの?


ルド「おい‥いつまで‥そうしているつもりだ‥この、



破廉恥が‥」


はれ、んち‥
そういえば先程から唇に柔らかいもの、が‥

ッ!?ー、ー


ラピス「っ!失礼いたしましたわ!わたくしとしたことが!殿方にこのような!どうかお許しを‥」


すぐさま口を離し、
距離を取る。
わたくしは‥なんてはしたないっ!?


ミカ「はっ、だ、だい、じょう、ぶ‥びっくりした、だけ‥。」

顔を真っ赤にするミカロス様。
潤んだ瞳に息を荒くさせ‥
まあ‥こんなか弱い方を‥わたくしは、わたくしは汚してっ!?



サラ「みー、くん‥?」

ふらふらとこちらへ近づいてくるサラマンダー様。
その表情は、まるで夢でも見ているかのような‥


ミカ「?サラくん‥どうしたの?そんな顔して‥どこか痛いの?
‥あれ‥?そういえば‥なんだか身体が痛くないし、いつもより軽い‥?僕いったい‥?」

自分の体を確かめるミカロス様。
当たり前ですわ。
貴方を助けるため、クローリー家の禁忌魔法まで使ったのですから。
兄様につけられた傷や虫、全て治しましたわ。

まあ、その代わり‥
いえ、これは伝えないでいましょう。

知らないほうが幸せな事もありますわ。


サラ「みー、く、ん‥みーくんんんん!!!!」


ミカ「ふえッ!?」


サラ「死んじゃったかとおもったよおおお!!!グスッ!」


ミカロス様に飛びつくサラマンダー様は、
なんだか子どもみたいで、可笑しくてつい笑ってしまいました。

これで‥わたくしへの恨みは消えてくれたらいいのですが‥。


まあ、こちらに気づいたサラマンダー様が、わたくしをキッと睨むのを見て、その考えはすぐに諦めましたけど‥。



ミカ「っ!?サラくん‥不吉な事言わないでよもう‥僕、ちゃんと、ここに居るから‥」


サラ「ゔぅー‥」



微笑ましいお二人を見て、心が温まる。
ふふ‥ひとまず安心ですわね‥。



ルド「おい、試合はどうなったんだ?判定はまだか」



先生「はあ、お前なあ‥

‥勝者、 1ーA No.2だ。これでいいな?

あと、クローリー。試合後お前の家に確認を取りに行かせてもらう。」


ラピス「‥はい。」



あら‥先生ったら‥
そんなにもクローリー家に関わりたいなんて‥物好きですわね‥。
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