19 / 39
ペア戦開幕
思わぬ爪痕
しおりを挟む「リカルド様と~、クローリー家のラピス嬢だよね~!よろしくね~」
試合会場、
突然、
対戦相手の3年生に話しかけられる。
茶髪に沢山のピアス‥
あれは魔道具でしょうか‥
わずかに魔力を感じます‥。
「‥サラくん‥」
「ありゃ?ミーくん緊張してるの~?」
か細い声が聞こえ、其方に視線を向けると、
真っ白な髪に、小さな身体。
虚ろな瞳に、震える身体は、何か違和感を感じる。
ルド「3年のサラマンダーとミカロスか。
現騎士団団長の息子と、また同じく騎士団副団長の息子。」
サラ「あれ?僕達の事知ってるの?」
ルド「ああ、有名だからな。その若さで、火属性の強化属性、炎魔法を変幻自在に操るサラマンダー。そして、サラマンダーの攻撃を強化しサポートする、風使いミカロス。
このコンビの活躍は、よく耳にする」
サラ「へえ~!僕達そんなに有名なんだね~!!凄い凄い!!」
嬉しそうに喜ぶその姿は、どこか不自然で、
ミカ「‥」
ああ、目が笑っていませんわね。
サラ「あ、でも僕達も、知ってるよ~!
母親に捨てられた可哀想な二番目の王子リカルド様と~過去の栄光に縋り付き、身分を上げるためならどんな汚い手でも使ってきたクローリー家の長女ラピス嬢!」
ミカ「ちょっとサラくんッ!」
ルド「‥貴様‥」
ズキリと胸の痛みが響く。
ですが、クローリー家に生まれた以上、こんな事で取り乱してはいけません。
それを語られない様に、堂々と、そして
真っ直ぐと彼を見つめ微笑みます。
ラピス「ふふ‥随分と失礼な方ですわね。」
サラ「失礼?僕は本当の事を言ったまでだよ~。君こそ、ミカくんの次は、王族?堂々とよくやるね‥卑しい一族の出が‥」
物凄い言われ様ですわ。
流石のわたくしも傷つきましてよ?
ラピス「ッ‥。ふふ、わたくし、何かあなた方に恨まれる事をしまして?」
サラ「‥とぼけるなよ‥ミカくんは‥オニキス・クローリーのせいで‥っ」
ミカ「やめて!!違う‥僕のせいだから‥僕が弱かったせいなんだ‥」
サラ「ミカくん‥。」
必死で震えながら訴えるその姿は、
実の兄であるオニキスのとても嫌う人種で、そして虐める玩具としてとても好みそうだと、
そう考え納得してしまう自分に呆れる。
ラピス「‥兄様、ですか‥」
ミカ‥
ミカロス・フォーゼ‥
確か‥
『ミカロスのあの表情‥クク‥最高だったな。馬鹿な奴め‥一度助けてやっただけで何が親友だ。胸糞悪くて、寄生人虫の巣に置き去りにしてやったよ。
そのまま死ねばよかったのに‥まさか運良く生き延びるとは‥。
死んだ方がましな時だってあるのにな‥そうは思わないか?ラピス?ーーー』
王室騎士団副団長の息子
どこかで聞いたことがあると思っていましたが、
思い出しましたわ。
そうですか、
ラピス「ああ‥‥そういう事ですか。
あの様な人間に騙されるなんて‥お気の毒ですわ。そしてとても滑稽で愚かですわね。」
あれは人間の皮を被った化け物ですわ。
よくもまあ、あんな怪物の被害に遭われて生き延びていますわね。
尊敬しますわ。
ミカ「ッ!?‥」
わたくしを見て、怯えた様にサラマンダー様の後ろに隠れるミカロス様。
それはそれは恐ろしいでしょうね。
わたくしの目は兄様にそっくりですもの。
寄生人虫‥主に人に寄生し、卵を産み付ける危険モンスター。
栄養分は人の皮膚、脂肪、細胞、骨‥
寄生された人間は、卵がかえるまで‥苦しみもがきながら生かされる。
そして、最後は
全ての腹わたを生きたまま子に食い尽くされ、死に至る。
あんな生き物が這い回る巣に放り込まれて
よく生き残りましたわね‥。
ですが、
あの痩せ細った身体‥へこんだ腹回り‥。
まだ‥
兄様の残した傷跡は、完全には消えていないのですね。
サラ「な、に‥っ!お前の兄のせいで!!サラちゃんはどれほど苦しんでいるか!?それなのに‥それなのに‥愚か、だとっ?はっ、やはり血の繋がった兄妹ということか‥ふざけんな‥ぶっ殺してやるっ!!」
今にもわたくしに殴りかかりそうなサラマンダー様を、先生が制する。
先生「お喋りもいいが、そろそろ試合を始めるぞ。両者位置につけ。」
サラ「ちっ‥」
先生「はあ‥準備はいいな?あー、これは実戦じゃない。分かっていると思うが‥やりすぎには気をつけろよ‥。
それじゃあ、始める。
準決勝、1ーA No.2対3ーA No.7
試合開始ーーー」
サラ「覚悟しろーークローリー‥ーー」
いつもいつも‥
兄様の後始末はわたくしに‥
いい加減、妹思いの良い兄になってはくれないのですか?オニキス兄様ーーー
0
あなたにおすすめの小説
花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜
文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。
花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。
堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。
帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは?
異世界婚活ファンタジー、開幕。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】シロツメ草の花冠
彩華(あやはな)
恋愛
夏休みを開けにあったミリアは別人となって「聖女」の隣に立っていた・・・。
彼女の身に何があったのか・・・。
*ミリア視点は最初のみ、主に聖女サシャ、婚約者アルト視点侍女マヤ視点で書かれています。
後半・・・切ない・・・。タオルまたはティッシュをご用意ください。
私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど
紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。
慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。
なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。
氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。
そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。
「……俺にかけた魅了魔法を解け」
私、そんな魔法かけてないんですけど!?
穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。
まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。
人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い”
異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。
※タイトルのシーンは7話辺りからになります。
ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。
※カクヨム様にも投稿しています。
気がつけば異世界
波間柏
恋愛
芹沢 ゆら(27)は、いつものように事務仕事を終え帰宅してみれば、母に小さい段ボールの箱を渡される。
それは、つい最近亡くなった骨董屋を営んでいた叔父からの品だった。
その段ボールから最後に取り出した小さなオルゴールの箱の中には指輪が1つ。やっと合う小指にはめてみたら、部屋にいたはずが円柱のてっぺんにいた。
これは現実なのだろうか?
私は、まだ事の重大さに気づいていなかった。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる