希望を歌う悪の姫

花村 ネズリ

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ペア戦開幕

思わぬ爪痕

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「リカルド様と~、クローリー家のラピス嬢だよね~!よろしくね~」

試合会場、
突然、
対戦相手の3年生に話しかけられる。

茶髪に沢山のピアス‥
あれは魔道具でしょうか‥
わずかに魔力を感じます‥。


「‥サラくん‥」

「ありゃ?ミーくん緊張してるの~?」


か細い声が聞こえ、其方に視線を向けると、
真っ白な髪に、小さな身体。
虚ろな瞳に、震える身体は、何か違和感を感じる。



ルド「3年のサラマンダーとミカロスか。
現騎士団団長の息子と、また同じく騎士団副団長の息子。」

サラ「あれ?僕達の事知ってるの?」

ルド「ああ、有名だからな。その若さで、火属性の強化属性、炎魔法を変幻自在に操るサラマンダー。そして、サラマンダーの攻撃を強化しサポートする、風使いミカロス。
このコンビの活躍は、よく耳にする」

サラ「へえ~!僕達そんなに有名なんだね~!!凄い凄い!!」


嬉しそうに喜ぶその姿は、どこか不自然で、

ミカ「‥」


ああ、目が笑っていませんわね。



サラ「あ、でも僕達も、知ってるよ~!
母親に捨てられた可哀想な二番目の王子リカルド様と~過去の栄光に縋り付き、身分を上げるためならどんな汚い手でも使ってきたクローリー家の長女ラピス嬢!」

ミカ「ちょっとサラくんッ!」

ルド「‥貴様‥」


ズキリと胸の痛みが響く。

ですが、クローリー家に生まれた以上、こんな事で取り乱してはいけません。
それを語られない様に、堂々と、そして
真っ直ぐと彼を見つめ微笑みます。


ラピス「ふふ‥随分と失礼な方ですわね。」

サラ「失礼?僕は本当の事を言ったまでだよ~。君こそ、ミカくんの次は、王族?堂々とよくやるね‥卑しい一族の出が‥」


物凄い言われ様ですわ。
流石のわたくしも傷つきましてよ?


ラピス「ッ‥。ふふ、わたくし、何かあなた方に恨まれる事をしまして?」

サラ「‥とぼけるなよ‥ミカくんは‥オニキス・クローリーのせいで‥っ」

ミカ「やめて!!違う‥僕のせいだから‥僕が弱かったせいなんだ‥」

サラ「ミカくん‥。」


必死で震えながら訴えるその姿は、
実の兄であるオニキスのとても嫌う人種で、そして虐める玩具としてとても好みそうだと、
そう考え納得してしまう自分に呆れる。


ラピス「‥兄様、ですか‥」



ミカ‥
ミカロス・フォーゼ‥

確か‥

『ミカロスのあの表情‥クク‥最高だったな。馬鹿な奴め‥一度助けてやっただけで何が親友だ。胸糞悪くて、寄生人虫の巣に置き去りにしてやったよ。
そのまま死ねばよかったのに‥まさか運良く生き延びるとは‥。
死んだ方がましな時だってあるのにな‥そうは思わないか?ラピス?ーーー』


王室騎士団副団長の息子
どこかで聞いたことがあると思っていましたが、
思い出しましたわ。
そうですか、


ラピス「ああ‥‥そういう事ですか。
あの様な人間に騙されるなんて‥お気の毒ですわ。そしてとても滑稽で愚かですわね。」


あれは人間の皮を被った化け物ですわ。

よくもまあ、あんな怪物の被害に遭われて生き延びていますわね。

尊敬しますわ。


ミカ「ッ!?‥」

わたくしを見て、怯えた様にサラマンダー様の後ろに隠れるミカロス様。

それはそれは恐ろしいでしょうね。
わたくしの目は兄様にそっくりですもの。


寄生人虫‥主に人に寄生し、卵を産み付ける危険モンスター。
栄養分は人の皮膚、脂肪、細胞、骨‥
寄生された人間は、卵がかえるまで‥苦しみもがきながら生かされる。
そして、最後は
全ての腹わたを生きたまま子に食い尽くされ、死に至る。

あんな生き物が這い回る巣に放り込まれて
よく生き残りましたわね‥。


ですが、
あの痩せ細った身体‥へこんだ腹回り‥。
まだ‥

兄様の残した傷跡は、完全には消えていないのですね。  





サラ「な、に‥っ!お前の兄のせいで!!サラちゃんはどれほど苦しんでいるか!?それなのに‥それなのに‥愚か、だとっ?はっ、やはり血の繋がった兄妹ということか‥ふざけんな‥ぶっ殺してやるっ!!」


今にもわたくしに殴りかかりそうなサラマンダー様を、先生が制する。




先生「お喋りもいいが、そろそろ試合を始めるぞ。両者位置につけ。」


サラ「ちっ‥」


先生「はあ‥準備はいいな?あー、これは実戦じゃない。分かっていると思うが‥やりすぎには気をつけろよ‥。



それじゃあ、始める。


準決勝、1ーA No.2対3ーA No.7


試合開始ーーー」


サラ「覚悟しろーークローリー‥ーー」


いつもいつも‥
兄様の後始末はわたくしに‥
いい加減、妹思いの良い兄になってはくれないのですか?オニキス兄様ーーー
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