19 / 30
夢の続き/金鷹
2
しおりを挟む
「じゃあ、ナ・ズで生きる私たちはちょうどいい気質なのかな? 昼は暑くて夜は寒いでしょ? ちょうど半分ずつだよ」
「どうなのかなー。あんまりそういうの、考えたことなかったから」
「こういうのって調べてみたらおもしろいかもね」
「調べるのがめんどくさそうだ」
「そういう時間を楽しむものなんじゃない?」
「俺、絶対途中で飽きる」
「私と一緒だったら?」
「ちょっとは付き合うかなー」
にへ、とセランはなんとも言えない顔になった。
キッカは欲しい言葉をちゃんと言ってくれる。本人が恥ずかしいと思わないことに限るが。
「私もキッカとだったらいつまででもできるよー」
「だから俺は途中で飽きるって」
二人は手を繋いだまま、のんびりのんびり港町を散策する。
そんな恋人たちの姿は少なくなかったが、人間と亜人という組み合わせはセランたちくらいしか見当たらない。
「あっ、あれ飲む!」
視線の先に懐かしいものを見つけ、セランはキッカの手を引いて走り出した。
そこにあったのは、以前来たときにも飲んだ果実水だった。
「これね、おいしいんだよ。砂漠でも作ってみようと思ったんだけど、なんかこう……絶妙に違う味になるの。なんでだろう?」
「水が違うからじゃねぇの」
「そういうこと? じゃあウァテルの水を使ったら、私の求めてるものが手に入る?」
「今度やってみればいいじゃん。水ぐらいなら運んできてやるし」
「本当? でも、重くない?」
「だってお前、欲しいんだろ?」
「うん」
「つまりそういうことだ」
「優しいねぇ」
「にやにやすんなよ」
この日に備えて、セランはせっせと城で小遣い稼ぎをしてきた。
掃除を手伝っては亜人たちに羽根を分けてもらい、通貨が使えなくても物を買えるように、と。
それなのに、袋から通貨代わりの羽根を出そうとすると、キッカに止められてしまう。
「どうしたの?」
「こういうときは男が出すもんだって言われた」
「誰に?」
「シュシュの嫁」
「ティアリーゼ? そんなこと言ってたの?」
「あいつ、割とあれこれ言ってくるぞ」
(……私の知らないところで会いに行ってる)
セランは少しむっとした。
だが、一般的に思われるような意味ではない。
「私もティアリーゼに会いたいのに、なんで一人で会いに行くの」
「違うって。シュシュんとこ遊びに行ったらいつもいるの。それだけ」
「私も今度連れてってね。約束だよ」
「えー」
無理に約束を取り付ける。
次の旅行先は決まったようなものだった。
そうしてキッカは男らしくセランに果実水を買ってくれる。
カフのときより、交渉が早かった。
「早かったね?」
「釣りいらねぇって言ってきたからかもなー」
「お釣り……」
「だって俺の羽根だもん、水どころか店買えちまうよ」
「……そんなに高いの?」
「尾羽だったら街ごと買えたりしてな」
「……これ?」
胸元に提げていたお守りを見せる。
キッカのものだと知らずに身に着けてきたそれは、今も大切なお守りとして手元にあった。
キッカ本人はなんとなくくすぐったい気持ちになるらしく、なるべく自分の見えないところに持っていてほしいと言う。
照れ臭いと思っているのを知っていて、わざと反応を見るためにときどきその目の前に出した。
「それそれ。……しまっとけよ」
思った通りに照れてくれたのを見て、また嬉しい気持ちが込み上げる。
渡された果実水は、以前飲んだものよりずっと甘い気がした。
「どうなのかなー。あんまりそういうの、考えたことなかったから」
「こういうのって調べてみたらおもしろいかもね」
「調べるのがめんどくさそうだ」
「そういう時間を楽しむものなんじゃない?」
「俺、絶対途中で飽きる」
「私と一緒だったら?」
「ちょっとは付き合うかなー」
にへ、とセランはなんとも言えない顔になった。
キッカは欲しい言葉をちゃんと言ってくれる。本人が恥ずかしいと思わないことに限るが。
「私もキッカとだったらいつまででもできるよー」
「だから俺は途中で飽きるって」
二人は手を繋いだまま、のんびりのんびり港町を散策する。
そんな恋人たちの姿は少なくなかったが、人間と亜人という組み合わせはセランたちくらいしか見当たらない。
「あっ、あれ飲む!」
視線の先に懐かしいものを見つけ、セランはキッカの手を引いて走り出した。
そこにあったのは、以前来たときにも飲んだ果実水だった。
「これね、おいしいんだよ。砂漠でも作ってみようと思ったんだけど、なんかこう……絶妙に違う味になるの。なんでだろう?」
「水が違うからじゃねぇの」
「そういうこと? じゃあウァテルの水を使ったら、私の求めてるものが手に入る?」
「今度やってみればいいじゃん。水ぐらいなら運んできてやるし」
「本当? でも、重くない?」
「だってお前、欲しいんだろ?」
「うん」
「つまりそういうことだ」
「優しいねぇ」
「にやにやすんなよ」
この日に備えて、セランはせっせと城で小遣い稼ぎをしてきた。
掃除を手伝っては亜人たちに羽根を分けてもらい、通貨が使えなくても物を買えるように、と。
それなのに、袋から通貨代わりの羽根を出そうとすると、キッカに止められてしまう。
「どうしたの?」
「こういうときは男が出すもんだって言われた」
「誰に?」
「シュシュの嫁」
「ティアリーゼ? そんなこと言ってたの?」
「あいつ、割とあれこれ言ってくるぞ」
(……私の知らないところで会いに行ってる)
セランは少しむっとした。
だが、一般的に思われるような意味ではない。
「私もティアリーゼに会いたいのに、なんで一人で会いに行くの」
「違うって。シュシュんとこ遊びに行ったらいつもいるの。それだけ」
「私も今度連れてってね。約束だよ」
「えー」
無理に約束を取り付ける。
次の旅行先は決まったようなものだった。
そうしてキッカは男らしくセランに果実水を買ってくれる。
カフのときより、交渉が早かった。
「早かったね?」
「釣りいらねぇって言ってきたからかもなー」
「お釣り……」
「だって俺の羽根だもん、水どころか店買えちまうよ」
「……そんなに高いの?」
「尾羽だったら街ごと買えたりしてな」
「……これ?」
胸元に提げていたお守りを見せる。
キッカのものだと知らずに身に着けてきたそれは、今も大切なお守りとして手元にあった。
キッカ本人はなんとなくくすぐったい気持ちになるらしく、なるべく自分の見えないところに持っていてほしいと言う。
照れ臭いと思っているのを知っていて、わざと反応を見るためにときどきその目の前に出した。
「それそれ。……しまっとけよ」
思った通りに照れてくれたのを見て、また嬉しい気持ちが込み上げる。
渡された果実水は、以前飲んだものよりずっと甘い気がした。
0
あなたにおすすめの小説
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる