人を洗脳してはいけません!

からぶり

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緑と占いと通学路

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 変態達から逃げ出した翌日。
 俺は精神的疲労を抱えたまま学校へと歩いていた。

 結局昨日、小さな子供が見たらトラウマ間違いなしの正義の変態と、警察が見たら放っておくはずがない見た目の悪の変態は、いったいどうなったのだろうか。
 いや、知らないで済むならそれでいいだろう。わざわざ自分からあの変態達に巻き込まれに行く必要はないのだ。

 ならば俺が気にすることは何もない。変態に絡まれてしまったのは偶然。昨日だけの事故。今日以降は何も関係ない、俺の日常には何の支障もないのだ。
 そう自分の中で結論を出し納得すると、精神的疲労もいくらか楽になってきた。

「結局己の心を救えるのは己だけだということか」
「何を意味わからないこと言ってるんだ、緑」

 ついこぼしてしまった独り言を、隣で歩いているクラスメイト、通普とおふ了宮りょくに拾われた。
 考え方も態度も緩い男であり、その緩さは天然パーマの頭にも表れている。

 全く、能天気な顔しやがって。俺は昨日の出来事で体と心が疲労困憊だというのに。

「いや気にするな。お前には関係のないことだ」
「ん? そうか?」

 そう言って特に追及してくることもなく簡単に納得した通普。昨日の出来事をわざわざ説明したくもない俺としては助かる。

「それよりも聞いてくれよ緑。俺、今朝の星座占いで一位だったんだよ」
「お前、占いなんて信じてるのかよ」
「おいおい、占いをバカにしちゃいけないぜ? なんたってもうすでに俺に幸運が訪れてるんだからな!」

 得意げに通普は自慢してくる。そこまで言われると気になるな。

「へぇ。じゃあ実際どんなことがあったんだ?」
「電車の定期券を落としてしまったのだが、なんとポケットに電車賃がちょうどぴったし入ってたんだ!」
「いやそれ、どちらかというと不幸だろ。それに電車賃があったって言っても、そもそも財布があるだろ」
「いや、定期は財布に入れてたからな。財布ごと落としたんだ」
「お前呪われているんじゃないか?」
「何を! おみくじでここ三年連続凶を引いていない俺が呪われているわけないだろ!」
「ハードルが低すぎる!」

 不幸に対して鈍すぎるだろこいつ。ある意味幸福な奴だとは思うが。

「ちなみに緑のかに座は最下位だったぞ」
「そんなことわざわざ教えんな!」

 そんな軽いノリで人に不幸を伝えるな。
 占いを信じていないとはいえ、気分的に嫌だ。

「ラッキースポットは墓場だと言っていたな」
「墓場!? 墓場って言ったか!? 幸運を求めに行くには不謹慎すぎるだろ!」
「それか心霊スポットとも言っていたな」
「占いとは別の不幸に襲われるわ! それに心霊スポットってどこの心霊スポットだよ!」
「さあ? 恐山とかじゃないか?」
「おま……お前それマジの奴じゃん……もはやほぼ墓場じゃん……っ」
「あと、ピラミッドでもいいらしい」
「やっぱり墓場じゃん! でかい墓場じゃん!」
「または公園だと言っていたぞ」
「それを先に言え!」

 墓場とか心霊スポットとかを教える必要なかっただろ。

「おっと、緑、そろそろ急がなくては時間ぎりぎりだ」
「お前の幸福自慢か不幸自慢かよくわからん話を聞いてたせいだぞ」

 だが通普の言う通り、学校の門限の時間が迫ってきている。寝坊したわけでもないのに遅刻するなんてバカらしいにも程がある。

「それじゃ通普、俺こっちだから」
「いや緑、同じ学校同じクラスなのになんでここでサヨナラすると思った」

 その場を去ろうとした俺の腕を浮かんで通普が引き留める。ちっ、騙されなかったか。

「ほらあれだ、ここはお前に任せて先に行く的な」
「それだとただ仲間を見捨てているだけじゃないか! 何を任せるっていうんだ!」
「お前と一緒に登校とか仲良しと思われそうで嫌だ」
「辛辣ッ!」

 くそっ、なかなか腕が振りほどけない。

「ええい離せ! このままでは間に合わなくなるぞ!」
「なんでそんな深刻な問題のように言った!? あっ! 緑待ってくれ!」

 腕を振りほどき走り出す俺と、それを追いかけてくる通普。
 それは奇しくも、まるで昨日の鬼ごっこを再現したような光景であった。

 ……ちなみに学校には遅刻した。
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