人を洗脳してはいけません!

からぶり

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緑と正義と活動理由

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 シンプル・グリーンの正体は、通普了宮だった。

「お前かよぉぉおおおお!!」

 ちくしょう! まさかこんな身近に変態がいたとは思いもしなかった!

「というわけで! さあ緑! 仲間になろうではないか!」
「誰がなるかバカ!」
「なぜだ!?」

 どうしてそんなに驚く。まさか本当に俺が仲間になるとでも思っていたのか。

「知ってる人の仲間にならなると言ったではないか!」
「そういう意味じゃない! 都合のいい解釈をするな!」

 俺は『どこの誰かもわからない奴の仲間にはならない』とは言ったが、それだけだ。どういう思考回路をしているんだ。

「それに変態の仲間にならないとも言ったはずだぞ」
「失礼な! 俺のどこが変態だ!」
「どこもかしこもだよ!」

 これが小さな子供だったのならばまだいいだろう。
変な子だとは思うが、それでも微笑ましいとギリギリ言える。

 しかし通普は小さな子供ではない。俺と同じ現役高校二年生だ。
戦隊モノの格好をした全身タイツの男子高校生なんて、事案が発生するレベルだ。

「ごっほん! まあ冗談は置いといて」
「冗談じゃないぞ」
「置いといて!」

 そこまで変態じゃないと主張したいのならその恰好をしなければいいのに。

「俺が仲間になって欲しいのは、違う意味なんだ」
「違う意味? 変態ごっこ以外に何かあるっていうのかよ」
「俺が正義の味方としてシンプル・グリーンを名乗っているのにはある目的があるんだ」
「目的ねぇ」
「ああ。これは世界を救うためと言っても過言ではないくらい重要なことだ」
「おいおい随分と大きく出たな」

 世界を救う。

 まるで魔王を倒しに行く勇者のセリフにも聞こえるが、これを言っているのは全身タイツの変態だ。正直嘘くさい。
 しかし通普の表情はいたって真面目で、とても冗談を言っているようには見えない。

 まさか本当に、世界を救うことと同等の目的があるのだろうか。

「始まりはおよそ一か月前、まだ春休みのころだった。ネットにとある書き込みがあったんだ。なんでも、知り合いの様子がおかしい、まるで人が変わったようだと」
「でも、ネットの書き込みなんて信憑性ないだろ」
「その通り、初めは誰も相手にしなかった。しかし時間が経つにつれ、似たような書き込みが増え、一つの噂が流れだした…………人々が洗脳されているという噂がな」
「はあ? 洗脳だって?」

 洗脳……洗脳?
 なんだ? なにか頭に引っかかるような。

「ああ。その噂を聞いた俺はいてもたってもいられず調査を開始した。俺は小さい頃から正義の味方に憧れていたからな。ほら、洗脳された人を助けるって、まるでヒーローみたいだろ?」

 動機が不純すぎる。

「始めてすぐに洗脳されたと思われる人はこの地域周辺にしかいないことがわかってな。ここら辺を集中的に調査して、ついこの間、ようやく犯人を特定したのだ!」

 通普は自慢するように言った。

「犯人はココア・ブラウン! ココア・ブラウンは『人類洗脳機』という装置を使って人々を洗脳していたのだ!」

 そういえば通普とココア・ブラウンの会話に人類洗脳機なんて言葉が出てきたっけ。
 物騒な名前だとは思ったが、まさか本当に危険なものだったとは。

「つまり、俺の目的はココア・ブラウンの持つ人類洗脳機を破壊することだ!」

 そこまで言い切り、ポーズを決める通普。

 なるほど、確かにこのまま放っておけばそのうち多くの人が洗脳されてしまうことだろう。通普の目的が世界を救うことと同等だというのもその通りかもしれない。
 ココア・ブラウン、あの変態がそんな装置を開発したとはにわかには信じがたいが、通普の様子を窺うに嘘はついていないだろう。

「つまり破壊活動だ!」
「台無しだよバカ野郎!」

 なんでわざわざ悪者っぽく言い換える。

「というわけで緑! 仲間になってくれ!」

 こちらに手を差し出す通普。

 もし何も知らないままなら、俺は何も違和感なく生きていたことだろう。
 誰かが洗脳されていることなど気づくことなく、見た目だけ平和な世界を。
 だが、知ってしまった。もう無関係では済まされない。
 知らないふりをして生きていくことは出来ないのだ。
 そして目の前には、正義の味方。
悪にあらがう手段がこちらに手を差し伸べている。

 結論を出すのに、時間はかからなかった。
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