10 / 31
緑と茶色と悪の目的
しおりを挟む何だ? なぜココア・ブラウンはこんな笑顔なんだ? 何でそんな嬉しそうな表情を……?
家に来たのは俺に用があるから。そしてその用を聞いたらこの表情になった……はっ!
ま、まさか! まさかこいつ!
俺のことが好きなのか!? だから家まで来たのか!?
そう考えればすべてに説明がつく。今日だけではない、昨日のことからのすべてに。
まず初めて会った時からココア・ブラウンが俺のことを知っていた理由。それは一目惚れ! おそらく、ココア・ブラウンはどこかで俺を見かけたことがあるのだろう。その時俺に惚れたココア・ブラウンは俺のことを調べたんだ! だから俺の名前を知っていたんだ! 俺のことを調べたんなら家の住所を知っていてもおかしくはない!
なるほど、そういうことだったのか……まさかこいつが俺のことをなぁ……。
そう思うと、なんだろう、なんだかココア・ブラウンが可愛く見えてきた。少しストーカー気質があるようにも思えるが、言い換えれば恥ずかしがり屋で健気だということ。細かいことは気にしないのが俺のいいところだ。
まあつまりそういうことだ。
謎はすべて解けた!
「喜べ緑! おぬしをわれの仲間にしてやる!」
「真面目に考えてた時間を返せ!」
全然違った。よかった口に出さなくて。口に出してたら恥ずかしさのあまり死んでしまうところだった。
しかし、こいつも通普と同じことを言うのか。通普は知り合いだったからという理由があるし百歩……いや千歩くらい譲ってわかるとしても、ココア・ブラウンに至っては何で俺を仲間にしたがるんだ。
「われの目的、悲願……われの犯してしまった過ちを清算するためにも……緑、おぬしがわれに協力してくれれば簡単になる」
「意味が分からねぇよ。お前の目的って何なんだ。なんで俺を仲間にしたがる」
「うぇ……だ、だっておぬし、シンプル・グリーンの仲間になるって……だったらわれの仲間に……」
「さては失礼な勘違いをしてやがるな!?」
どうして俺が通普の仲間になることが決まっているような言い方をするんだ。
俺が変態の仲間になるわけがないと、何度言えば変態達はわかるのだろう。
「俺はあいつの仲間じゃない!」
「そ、そうなのか?」
意外そうな顔をしてこちらを見てくるココア・ブラウン。驚きたいのはこっちだ。鬼ごっこの時の様子を見て俺が通普の仲間になったと思う要素がどこにある。俺はただ通普と一緒になって小学生を追いかけまわしていただけだぞ。
「ならばよいのだ! ならば緑、ご飯にしよう。安心したら腹が減ってきたぞ!」
「いや帰れよ。お前に食わせる物なんて米一粒ねぇよ」
「カレーとハンバーグが食べたい!」
「話を聞け!」
まさか本当に夕飯を食べるまで帰らないつもりじゃないだろうな。
いや待てよ……それなら、そうだな。
……よし、用意してやるか。
「ちょっと待ってろ」
本来であれば追い返そうと躍起になっているところだが、俺は少し考えた。
こいつら変態は基本的に人の話を聞かない。ならば、それに正面から抵抗するのではなく柔軟に受け流すことが重要だ。そうすることで変態は満足し、俺も無駄に疲れることもなくなる……まさに一石二鳥! それにちょうど必要なものもあるしな。
「ほらよ」
「おお、ずいぶんと早かった……ん?」
大した手間もかけずに用意したそれを見て、ココア・ブラウンは首をかしげる。
「おい緑、これはいったいなんだ」
「おいおい、見てわからないのか?」
やれやれしょうがない、心優しき俺が教えてやるとしよう。
「(レトルト)カレーと(冷凍)ハンバーグだ」
「そんなことは見ればわかる! われが言いたいのはそういうことじゃない! おぬしこれインスタントであろう!」
「食わせてもらえるだけありがたいと思え! 俺だって疲れてるんだ!」
まさか一目で見抜かれるとは。見た目お子様なこいつなら簡単に騙せると思ったんだけどな。
「……まあ、普段であればわれも作り直させるところではあるが、今日のところは勘弁してやろう」
「なんだよ、態度は大きい癖に物分かりはいいな」
「おぬしが疲れているということは、先の一件で知っているからの」
「……あっ! お前な、あの後大変だったんだぞ!」
「だから知っている。警察に追われておったのだろう?」
「……なんでお前がそのことを知ってんだよ」
「だってあれ呼んだのわれだし」
「犯人は貴様かっ!」
「いや、どちらかというと犯人はおぬしらであろう。さすがに放置するにはひどい光景だったぞ」
な、何のことやら。
「俺としてはあんな子供まで洗脳しているお前のほうが、放置するには危険な存在だと思うんだけどな」
こうして食事を共にしているとついつい忘れてしまいそうになるが、ココア・ブラウンは人を洗脳することが出来る。その手段を持っている。
「あ、あれはわれも流石にやりすぎたとは思っておる……あの時はサンプルをとるために必死だったのだ……」
「サンプル?」
「何でもない、忘れろ。まあとにかく、洗脳に関してわれはわれなりの自重と自制をしているからな。これでも安全第一なのだよ」
洗脳に自重もくそもないと思うんだけど。
「それは……この地域周辺でしか洗脳をしていないことと関係しているのか?」
「そんなことまで調べておるのか! 調査したのはシンプル・グリーンかの? ふざけた見た目とは違って、意外と情報収集能力があるようだの」
「で、実際どうなんだよ」
「確かにわれはこの辺りでしか行動をしていないのは事実だが、それは関係ない。そもそもわれの目的からして、ここ以外で行動する意味がないのだ」
ここ以外で行動する意味がない、か……。つまりはここで行動することがココア・ブラウンの目的に深く関係しているということ。通普と話した時には考えすぎだと思ったが、まさか当たっていたのか。
だがココア・ブラウンの行動範囲を知ったところで、肝心の目的が分からなければ意味がないだろう。どうしてここでしか行動しないのか、ではなく、どうして人を洗脳しているのかを知らなければ意味がない。
「じゃあココア・ブラウン。お前の目的ってのは一体何なんだ?」
「そこまで教えてやるわけがなかろう」
ココア・ブラウンはごちそうさま、と行儀よく手を合わせて食事を終える。彼女の前に置かれた皿は、食べ残しなくきれいに完食されていた。
「知りたいのであればわれの仲間になることだな、緑よ。言ったであろう? おぬしが協力してくれれば、われの目的を達成するのが簡単になると」
「それは……」
確かに言っていた。ココア・ブラウンの目的、悲願、犯してしまった過ちの清算。俺が協力することで、それが簡単になる。
……うん、まったく意味が分からんな。協力って、一体俺に何をさせるつもりなんだ。
しかし俺だって何度も言っているように、通普の仲間にもココア・ブラウンの仲間にもなるつもりはない。残念だが地道に頑張ってくれたまえ。
「俺ももう一度言おう、お前の仲間にはならない」
「ならば、やはり教えられんな」
話は終わりだとばかりに、ココア・ブラウンは立ち上がってリビングから出ていこうとする。
しかし、本当にいいのだろうか。
俺は仲間になるつもりはない。だけれども、このままココア・ブラウンを帰してしまって、何もわからないままでいいのだろうか。出来る限り引き留めて、少しでも多く情報を得るのが賢いのではないだろうか。
だが俺には、ココア・ブラウンを引き留める言葉も、情報を聞き出す方法も思いつかない。うだうだと考えている間にも、ココア・ブラウンはドアノブに手をかけ――
『おぉーい! 緑ぃー!』
ズザザァッ、と俺の近くまで下がってきた。
……今の声、もしかして。
心当たりのあった俺は、その顔を思い浮かべ、思わず頭を抱えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる