人を洗脳してはいけません!

からぶり

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緑と公園とマジカルガール

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「現れたなココア・ブラウンめ! やはりこの公園には貴様に関する何かがあるのか!」

 ああ、もしかしたら神様は俺のことが嫌いなのかもしれない。まさか本当にココア・ブラウンがやってくるだなんて。

 公園にやって来たココア・ブラウンの姿を見て、俺はそんなことを思わずにはいられなかった。

 ……いや、まだ希望はあるか? 俺は変態タイツを着ていて顔が隠れているし、さすがにココア・ブラウンもすぐに気づくことはないかもしれない。昨日、ココア・ブラウンには仮面を見せてしまったが、あの時はすぐにどこかへ行ったし、ばれていない可能性も十分にある。

「さあノーマル・グリーンよ! 力を合わせて奴を倒すぞ!」

 よしよし、通普も俺のことを名前で呼ばずにノーマル・グリーンと呼んでいる。これで通普の呼び方でばれる心配もなくなった。
 ならばまだ逃げることは可能だ。いつぞやのように、通普を囮にすれば……!

「やはり……やはりそやつの仲間になっておったのか! 緑!」
「ばれてたのかよっ!」

 無駄なあがきだった。
 こうなった以上、諦めるしかないのだろうか。

「貴様がここに来たということは、やはりこの公園には何かあるようだな」
「ふん、そんなことをわれが教えてやる義理などないわ。だが、ここでうろちょろされるのも目障りだの」

 さて、ココア・ブラウンと対峙してしまったということは、またくだらない勝負でも始まるのだろうか。しかし前回の鬼ごっこから考えて、勝敗はともかく通普が一人で参加すれば事足りるだろう。俺が勝負にかかわる必要もなさそうだ。そうなると、俺は何もしなくて済むので、楽ができてありがたい。この際精神的疲労は考えないことにしよう。

「私達カラフルズとしても、無視するわけにはいかないな。こちらが勝てば、この公園に来た目的を話してもらおう」
「よかろう。ではわれはこの公園に近づかないことを要求する」

 やはり勝負することになったか。
 このまま二人が勝負に夢中になったら、気づかれないうちに逃げよう。

「ちょうどいい、今回は二対二のチーム戦と行かぬか?」

 な……なにぃっ!?

 チーム戦だと!? そんなことになったら、俺が勝負に参加しなければならなくなる、つまり逃げることが出来ないではないか!

「いいだろう! 私たちのチームワークを見せつけてやろうではないか!」

 くそっ! 通普のやつもあるはずもないチームワークを発揮しようとやる気になってやがる!

 ――待てよ?

 もはやなすすべなしかと思われたが、この時、俺は電流が走ったかのようにあることを閃いた。

 ――もしかしたらこの状況、利用できるかもしれない!

「な、なあ、だったら俺に提案があるんだが」

 この案が受け入れられれば、まだ勝機はある!

「お、何だノーマル・グリーン?」
「勝負の種目なんだが、『かくれんぼ』なんてどうだ?」

 この種目なら、逃げられるかもしれない。

「お互いに探す人と隠れる人を一人ずつ選び、先に隠れている相手を見つけたほうが勝ちっていうルールなんだが」

 来い、乗って来い!

「……ふん、よかろう。緑のせっかくの提案だしの」
「それはいい! よし、かくれんぼで決定だ!」

 無事乗って来た。これで作戦の第一段階成功だ!
 このまま隠れていると思わせて逃げてしまうのが俺の作戦である。

「じゃ、俺が隠れる側をやるから」
「ああ! 頼んだぞ! ――っと、忘れるところだった」

 やる気満々の通普だったが、何かを思い出したようにココア・ブラウンに話しかけた。

「ココア・ブラウンよ。二対二のチーム戦と言ったが、お前は一人ではないか。もう一人はどうするつもりだ?」

 あ、そうだった。逃げようと考えることに必死で気づかなかったが、ココア・ブラウンは一人だ。だったら二対二の勝負ができないではないか。それとも、今まで姿を見せていない仲間でもいるのだろうか。

「安心せい。きちんと用意はある」

 ……用意?
 仲間のことを言うには少し違っている気がするが……まさかこいつ。

「ココア・ブラウン! 貴様まさか!」

 どうやら通普も俺と同じことを思ったようで、ココア・ブラウンに詰め寄った。
 しかしココア・ブラウンはそんなことまるで意に介さず、むしろ堂々と、その『用意』を見せつけようとした。

「そのまさかだ! 来い、われの下僕よ!」

 その呼び声と共に、新たに公園に入ってくる人物がいた。
 その意外な登場人物に、俺と通普は目を見開く。

 ココア・ブラウンの用意したその人は、俺と通普も知っているあの人だった。

 ココア・ブラウンに勝るとも劣らない低身長。その小柄な体には似合わない、かわいげのない気だるげな表情。『禁断の合法』の通称を持つアラサーロリ。

「「鈴ちゃん!?」」

 我らが生徒指導主任、久具鈴先生だった。

 正確には、フリルがたくさんついたピンクの服を着ておもちゃのステッキを持った、まるで魔法少女のような格好をした鈴ちゃんだった。

「そう、私はマジカル☆ガール、リンちゃんだ」
「鈴ちゃぁぁああああん!?」

 おいおい洗脳の不具合治ってないのか!? それともこれは鈴ちゃんの趣味か!?
 鈴ちゃんがこんなメルヘンな嗜好を持っているなんて想像できないけど、でも気だるげな表情はそのままに、心なしか目が輝いてるように見える。……趣味なのかっ!?

 ……アラサーでそれはちょっとしんどいぞ鈴ちゃん!

 だがそんな鈴ちゃんの姿を見た俺と通普は視線を交して頷く。言葉にしなくても、今はそんなもの必要なく、お互いの考えを理解することが出来た。

 オーケー、そっちは任せた。

 通普はズボンからとあるものを取り出し、俺は通普がベストポジションをとれるよう、邪魔にならないように少し離れる。
 そして通普が鈴ちゃんの正面に移動したタイミングを見計らい、俺は声を上げた。

「今だ! やれ!」
「よし来た任せろ!」

 俺の合図で通普はそれを突き出し素早く狙いを定めて――!

 ――パシャリ

 そして手に持った携帯で写真を撮った。

「やったぞ緑! 完璧だ!」
「よくやった!」

 通普が見せてくる画面には、魔法少女リンちゃんの姿がばっちりと映っていた。

 普段は地味な服装でいることが多い鈴ちゃんの貴重な一枚。新聞部やコアなファンに高値で売れるレベルだ。
 この写真を見せた時の鈴ちゃんの反応が楽しみだ。

「……おいおぬしら、何をそんなにはしゃいでおる」
「何言ってんだ! この人のこんな格好、もう二度と見れないかもしれないんだぞ! ここではしゃがないでいつはしゃぐ!」
「……むう、緑はあのような格好も好きなのか?」
「え? いや、そういうわけじゃないけど」

 俺が好きなのはワンピースだし。……待てよ、魔法少女風ワンピース……ありだな。

「まあ俺が何を好きかなんてどうでもいいだろ? そんなことより、さっさと勝負を始めようぜ」

 それにほら、早くしないと……

『まじかるくるくるー』
『ヘイヘイ鈴ちゃん!』
『くるくるみらくるー』
『フゥフゥ鈴ちゃん!』

 早くしないと、あそこで黒歴史を量産している鈴ちゃんが、さすがに不憫でしょうがなくなってるからさ。
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