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緑と了宮とココア・ブラウン
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昔、偉い人はこう言った。失敗は成功のもと、と。
どんな歴史の偉人も、成功ばかりで失敗をしたことがない人なんていない。むしろ多くの失敗をしたからこそ、そこから大きな成功へとつなげることが出来たのだ。
だから失敗をすることは決して悪いことではない。むしろ失敗を恐れて何も挑戦しないようでは、その人は成長することが出来ないだろう。だからどんどん失敗して、多くのことを学んでいくべきだ。
「つまり俺が通普のことを忘れてジャングルに放置したという失敗は、俺が成長するために必要なことであり、決して誰かから責められることではないんだ」
「責めるに決まってるだろ!? 言い訳とは見損なったぞ緑! あのジャングルで夜を明かした俺の気持ちがわかるかっ!?」
家に帰って来た俺を待ち構えていたのは、無事ジャングルから帰還を果たした通普であった。
家で待ってる、と言っていたが、実際には玄関の前で三角座りをしていた通普。その悲しみのオーラに、俺は無視することが出来なかった。
「そんなことよりも通普、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「そんなこと!? 今、俺の長編大作ストーリーになりそうな一夜をそんなことって言ったか!?」
その一夜だけで何があったんだよ。
「携帯もないから公衆電話を見つけるまで誰とも連絡取れないし!」
すまねぇ、俺が持ってたからな。
ひとまず通普に携帯を返し、改めて通普に質問をする。
「お前、黒乃って知ってるか?」
「俺の冒険譚は無視か緑!」
「あとで聞いてやるって。で、どうなんだよ」
「まったく……仕方がないな。それで、黒乃だったか? 同じクラスなのだから知っているに決まっているだろう。そういえば、最近は学校を休んでいるようだが。それに俺よりも緑のほうが知ってるはずじゃないか? なんたって緑は――」
「去年同じクラスだった、だろ?」
やっぱり、通普も鈴ちゃんと同じことを言うか。教師ではなく、生徒の視点からなら何かわかるかと思ったが、当てが外れたな。
でも、去年同じクラスだったのに知らないっていうのは本当にどういうことだ? そんなにココア・ブラウン、いや黒乃茶々が影が薄かったとか……考えにくいな。むしろあいつはクラスで一番目立つタイプだろう。
「いや、そうではなくだな」
「はあ、まあしょうがないか。悪いが忘れてくれ、通普」
「む、いいのか? 気になることがあるんじゃないのか?」
気になりはするが、通普もこれ以上は知らないだろう。
それにココア・ブラウンの正体に通普が気づいたら、学校だろうが構わず変態タイツを着てココア・ブラウンに突っかかるだろうし、その場合俺が巻き込まれる可能性が非常に高い。それを避けるためにも、この話はここで終わっておくべきだ。
「いいんだって。通普が気にすることじゃないからさ」
「そうなのか?」
「だからこの話はこれでおしまいだ。それじゃ、通普。気をつけて帰れよ」
「ああ、それじゃ……って待つんだ緑。俺の話はまだ終わってないぞ」
「話? 何のことだよ?」
「とぼけるんじゃない! 俺をジャングルに置いてけぼりした話だ!」
「ちっ」
覚えてたか。うやむやにして誤魔化そうと思ったのに。
「だからそれは悪かったって。俺も昨日は自分のことだけで精いっぱいだったんだよ」
「本当に反省しているのか?」
「ああもうマジで反省してるって。今までの人生でこれ以上反省したことはないってくらい反省してるって」
もちろん嘘だが。まあこういっておけば通普も満足してくれるだろう。
「そうかそうか! なら今日緑の家で俺達カラフルズの作戦会議をしても問題ないな!」
「待てなんでそうなる!」
話が明後日の方向に飛躍した。
すでに手遅れな気もするが、このままでは俺の唯一の安息の地である家が危ない。
「俺はいったん帰って準備をしてくるから、緑よ、少し待っててくれ!」
「話を聞け!」
「それじゃ、あびゅー!」
「それを言うならアデューだ!」
去り際に残念な一言を残し、止める間もなく走り去っていく通普を、俺はただ見送ることしかできなかった。
「……え、本当に来るの?」
○
家の中に入った俺は、忘れずに鍵をかけリビングで息をひそめていた。
通普が来たら居留守を使い、後日急用で出かけていたと言えばいいだろう。
ふっ、われながら完璧な作戦だ。
――ピンポーン
「来たか……」
もちろん無視だ。
これは俺と通普の我慢比べだ。
――ピンポンピンポーン
……やっぱりそう簡単に諦めはしないか。
――ピンポンピンポンピンポーン!
……しつこいな。
――ピンポンピンポンピンピンポーンピンピンピンピンピンポーン!
……う、うるさい!
だが耐えろ俺! ここで出ていったらすべてが水の泡だ!
――ガチャッ
「おい待てこの野郎! それは卑怯だろ!」
想定外の実力行使で家に入られてしまった。
急いで玄関まで向かう。目を話しているうちに何をされるかわかったものじゃない。
「俺はちゃんと鍵かけたのに何で開けられるんだよ! ピッキングでもしたのか自称正義の味方!」
リビングから玄関に通じるドアを開けながら言う。
小柄で全体的に黒っぽい色の服装のそいつは、俺の言葉の意味が分からないと言った様子でこちらを見ていた。
「何を言っておるのだ緑。われは正義を自称などしていないぞ」
「……え」
そこにいたのは、ココア・ブラウンであった。
どんな歴史の偉人も、成功ばかりで失敗をしたことがない人なんていない。むしろ多くの失敗をしたからこそ、そこから大きな成功へとつなげることが出来たのだ。
だから失敗をすることは決して悪いことではない。むしろ失敗を恐れて何も挑戦しないようでは、その人は成長することが出来ないだろう。だからどんどん失敗して、多くのことを学んでいくべきだ。
「つまり俺が通普のことを忘れてジャングルに放置したという失敗は、俺が成長するために必要なことであり、決して誰かから責められることではないんだ」
「責めるに決まってるだろ!? 言い訳とは見損なったぞ緑! あのジャングルで夜を明かした俺の気持ちがわかるかっ!?」
家に帰って来た俺を待ち構えていたのは、無事ジャングルから帰還を果たした通普であった。
家で待ってる、と言っていたが、実際には玄関の前で三角座りをしていた通普。その悲しみのオーラに、俺は無視することが出来なかった。
「そんなことよりも通普、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「そんなこと!? 今、俺の長編大作ストーリーになりそうな一夜をそんなことって言ったか!?」
その一夜だけで何があったんだよ。
「携帯もないから公衆電話を見つけるまで誰とも連絡取れないし!」
すまねぇ、俺が持ってたからな。
ひとまず通普に携帯を返し、改めて通普に質問をする。
「お前、黒乃って知ってるか?」
「俺の冒険譚は無視か緑!」
「あとで聞いてやるって。で、どうなんだよ」
「まったく……仕方がないな。それで、黒乃だったか? 同じクラスなのだから知っているに決まっているだろう。そういえば、最近は学校を休んでいるようだが。それに俺よりも緑のほうが知ってるはずじゃないか? なんたって緑は――」
「去年同じクラスだった、だろ?」
やっぱり、通普も鈴ちゃんと同じことを言うか。教師ではなく、生徒の視点からなら何かわかるかと思ったが、当てが外れたな。
でも、去年同じクラスだったのに知らないっていうのは本当にどういうことだ? そんなにココア・ブラウン、いや黒乃茶々が影が薄かったとか……考えにくいな。むしろあいつはクラスで一番目立つタイプだろう。
「いや、そうではなくだな」
「はあ、まあしょうがないか。悪いが忘れてくれ、通普」
「む、いいのか? 気になることがあるんじゃないのか?」
気になりはするが、通普もこれ以上は知らないだろう。
それにココア・ブラウンの正体に通普が気づいたら、学校だろうが構わず変態タイツを着てココア・ブラウンに突っかかるだろうし、その場合俺が巻き込まれる可能性が非常に高い。それを避けるためにも、この話はここで終わっておくべきだ。
「いいんだって。通普が気にすることじゃないからさ」
「そうなのか?」
「だからこの話はこれでおしまいだ。それじゃ、通普。気をつけて帰れよ」
「ああ、それじゃ……って待つんだ緑。俺の話はまだ終わってないぞ」
「話? 何のことだよ?」
「とぼけるんじゃない! 俺をジャングルに置いてけぼりした話だ!」
「ちっ」
覚えてたか。うやむやにして誤魔化そうと思ったのに。
「だからそれは悪かったって。俺も昨日は自分のことだけで精いっぱいだったんだよ」
「本当に反省しているのか?」
「ああもうマジで反省してるって。今までの人生でこれ以上反省したことはないってくらい反省してるって」
もちろん嘘だが。まあこういっておけば通普も満足してくれるだろう。
「そうかそうか! なら今日緑の家で俺達カラフルズの作戦会議をしても問題ないな!」
「待てなんでそうなる!」
話が明後日の方向に飛躍した。
すでに手遅れな気もするが、このままでは俺の唯一の安息の地である家が危ない。
「俺はいったん帰って準備をしてくるから、緑よ、少し待っててくれ!」
「話を聞け!」
「それじゃ、あびゅー!」
「それを言うならアデューだ!」
去り際に残念な一言を残し、止める間もなく走り去っていく通普を、俺はただ見送ることしかできなかった。
「……え、本当に来るの?」
○
家の中に入った俺は、忘れずに鍵をかけリビングで息をひそめていた。
通普が来たら居留守を使い、後日急用で出かけていたと言えばいいだろう。
ふっ、われながら完璧な作戦だ。
――ピンポーン
「来たか……」
もちろん無視だ。
これは俺と通普の我慢比べだ。
――ピンポンピンポーン
……やっぱりそう簡単に諦めはしないか。
――ピンポンピンポンピンポーン!
……しつこいな。
――ピンポンピンポンピンピンポーンピンピンピンピンピンポーン!
……う、うるさい!
だが耐えろ俺! ここで出ていったらすべてが水の泡だ!
――ガチャッ
「おい待てこの野郎! それは卑怯だろ!」
想定外の実力行使で家に入られてしまった。
急いで玄関まで向かう。目を話しているうちに何をされるかわかったものじゃない。
「俺はちゃんと鍵かけたのに何で開けられるんだよ! ピッキングでもしたのか自称正義の味方!」
リビングから玄関に通じるドアを開けながら言う。
小柄で全体的に黒っぽい色の服装のそいつは、俺の言葉の意味が分からないと言った様子でこちらを見ていた。
「何を言っておるのだ緑。われは正義を自称などしていないぞ」
「……え」
そこにいたのは、ココア・ブラウンであった。
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