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緑と茶々と男の覚悟
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「え、ちょ、え? 茶々、お前今……」
「ん? あっ、…………あぁっ!? いや、ちがっ!」
え? あれ、嘘、まじ?
「ち、違うのだ、今のは、今の好きはそう!」
茶々は顔を真っ赤にしながら言う。
「み、緑の性癖のことを言ったのだ!」
「性癖!? 俺の性癖って何!?」
「おぬしのワンピース好きは十分性癖と言えるであろう!」
「バカ野郎! 性癖なんて言うな! 信仰と言え!」
「余計にひどくなったぞ!?」
この俺のワンピースへの愛が、性癖なんて生半可な言葉で言い表せるはずがないだろうが。もっと神秘的で崇高な、まさに信仰という言葉こそふさわしい。
「って、おい茶々! 誤魔化すな」
「うぐ」
「その……好きっていうのは、その……ほ、本当なのか?」
「あう……」
俺の顔が熱くなっていくのを感じる。茶々と同じように、真っ赤になっているであろうことは鏡を見なくてもわかる。
茶々は俺を見たり、下を向いたり、何かをしゃべろうとしてやっぱり口を閉じたり、そんな風に不安げに躊躇うようにしながら、ついに口を開いた。
「ふ、ふん! 緑のことが好き、その通りだバカ! 何か文句あるかバカ! バーカ!」
「いや、文句なんて――」
「大体! おぬしがあんな意味ありげな反応するらいけないのだ!」
意味ありげな反応? いったい何のことだ? たぶん、それがきっかけで俺は茶々に洗脳されたんだろうけど、心当たりがない。
「忘れたとは言わせんぞ! つい先月、春休みのことだ!」
春休み……駄目だ、わからない。ほぼ毎日のように茶々と会ってたし、どれが原因なんだ。
「われが勇気を出して『好きな人がいるか』と聞いたら、おぬしにやにやしながら『いるぜ?』なんて言いおって! その話題を持ち出すのにどれだけ苦労したかわかっておるのか!? それなのにそれなのにそれなのに! そこは普通、われの好意に気づいてもいいところであろうが!」
「ちょ、ちょっと待て! それだけで俺は洗脳されたのか!?」
「あんなにあっさり返事すればその好きな人がわれじゃないことくらい察するわ! このバカ! この鈍感!」
そんなことあった気もするけど! 確かに茶々の好意には気づいてなかったけども!
「このニブチン・グリーン!」
それはただの悪口だ!
「このセイヘキ・グリーン!」
「その呼び方だけは許容できないからな!?」
なんて不名誉なあだ名つけるんだ! そんなに俺のワンピースへの情熱は異常か!?
「どこのだれを好きなのかは知らぬがその記憶だけ消そうと思えば、われのことまでついでのように忘れおって! おぬし幼馴染なのにわれに対して薄情すぎるわ!」
「俺に責任なくないか!?」
で、さっきの発言からすると、茶々の記憶だけを思い出させるために周囲の人で洗脳の練習をしてたってわけか……じゃあ今までの騒動って身内の恥をさらしただけかよ! 俺にも原因の一端があると思うと罪悪感がヤバい!
「一回落ち着け茶々! ああもう暴れるなって!」
ほら、ワンピースでそんなに暴れたら裾がめくれて大変素晴らしいことになっちゃうからありがとうございます!
「で、でも! おぬしが好きなのはシンプル・グリーンなのであろう! 家に遊びに来るほどの仲なのであろう!」
「だからまず、そこから違うんだって!」
茶々が暴れないようにしっかり押さえながら、とんでもない勘違いを解く。
「大体なんで俺が通普のことを好きになるんだよ!」
「……………………はえ?」
俺の言葉を聞いた茶々は、そんな気の抜けた声を出してポカンとした。
おい、どうしてそんな意外そうな顔をするんだ。まさか本当に俺が通普のことを好きだと思ってたわけじゃないだろうな。いやまさか、まさかね。
「な……なぜ、通普の名が出てくるのだ? 通普って、あの同学年の通普であろう? まさか、シンプル・グリーンの正体って……通普? 女じゃなくて?」
勘違いってそっちかよ!
いや、なんで気づいてないんだよ! 俺は茶々の前でも、普通にあいつのこと名前で呼んで……あれ、呼んでなかったっけ? まさか偶然そんなことがあったのか?
「気づけよ! せめて男だってことくらい気づけよ! 鈍感って人のこと言えないぞ!」
「だ、だってあやつ! 自分のこと『私』って!」
「それだけかよ! 声とか仕草でわかるだろ!」
「それは……おぬし以外に……興味がなかったから……」
「お、おおぅ……」
そんなふうに恥ずかしそうに言う茶々に、なんかこっちまで恥ずかしくなってきた。
「と、ともかく! これでわかっただろ? 茶々の勘違いだって」
「そうなるとほかにおぬしの好きな人が……」
違うそうじゃない。
「でもあれだ、わざわざこんな大掛かりなことしなくてもよかっただろ」
「む、それはどういうことだ緑」
「ほら、お前が洗脳した理由って、つまり、その……お、お前が俺のことを、す、好きだからって……あ、やべ恥ずかし。……んん! だからようは嫉妬だろ? だったらそんなことする必要なかっただろ」
やれやれ、人騒がせな。それならそうと言ってくれれば、俺だって……
「……? ……! み、緑! 緑緑緑! もう一回! もう一回なのだ!」
「え? 何が!」
「今の言葉だ! なぜ必要なかったのかきちんと意味を説明するのだ緑!」
んん? どうしてそんなに目を輝かせて……? それに今の言葉って、俺が言ったことって……あ。ああ!
「さあ緑! さあさあ!」
「やめろ! そんなにウキウキするんじゃない! ここぞとばかりに攻めるな!」
「聞こえんのぉ? さあ緑、どうして必要ないのだ?」
茶々はにやにやと表情を緩めながら近づいてくる。
こ、こいつ! 分かってて言ってやがるな!
ああもう! わかったよ! 言ってやるよ!
俺だってなぁ!
「俺だってお前のことが好――」
――ピンポーン
「「……………………」」
インターホンが鳴った。
これ以上ないぐらい、間が悪いタイミングだった。
「ん? あっ、…………あぁっ!? いや、ちがっ!」
え? あれ、嘘、まじ?
「ち、違うのだ、今のは、今の好きはそう!」
茶々は顔を真っ赤にしながら言う。
「み、緑の性癖のことを言ったのだ!」
「性癖!? 俺の性癖って何!?」
「おぬしのワンピース好きは十分性癖と言えるであろう!」
「バカ野郎! 性癖なんて言うな! 信仰と言え!」
「余計にひどくなったぞ!?」
この俺のワンピースへの愛が、性癖なんて生半可な言葉で言い表せるはずがないだろうが。もっと神秘的で崇高な、まさに信仰という言葉こそふさわしい。
「って、おい茶々! 誤魔化すな」
「うぐ」
「その……好きっていうのは、その……ほ、本当なのか?」
「あう……」
俺の顔が熱くなっていくのを感じる。茶々と同じように、真っ赤になっているであろうことは鏡を見なくてもわかる。
茶々は俺を見たり、下を向いたり、何かをしゃべろうとしてやっぱり口を閉じたり、そんな風に不安げに躊躇うようにしながら、ついに口を開いた。
「ふ、ふん! 緑のことが好き、その通りだバカ! 何か文句あるかバカ! バーカ!」
「いや、文句なんて――」
「大体! おぬしがあんな意味ありげな反応するらいけないのだ!」
意味ありげな反応? いったい何のことだ? たぶん、それがきっかけで俺は茶々に洗脳されたんだろうけど、心当たりがない。
「忘れたとは言わせんぞ! つい先月、春休みのことだ!」
春休み……駄目だ、わからない。ほぼ毎日のように茶々と会ってたし、どれが原因なんだ。
「われが勇気を出して『好きな人がいるか』と聞いたら、おぬしにやにやしながら『いるぜ?』なんて言いおって! その話題を持ち出すのにどれだけ苦労したかわかっておるのか!? それなのにそれなのにそれなのに! そこは普通、われの好意に気づいてもいいところであろうが!」
「ちょ、ちょっと待て! それだけで俺は洗脳されたのか!?」
「あんなにあっさり返事すればその好きな人がわれじゃないことくらい察するわ! このバカ! この鈍感!」
そんなことあった気もするけど! 確かに茶々の好意には気づいてなかったけども!
「このニブチン・グリーン!」
それはただの悪口だ!
「このセイヘキ・グリーン!」
「その呼び方だけは許容できないからな!?」
なんて不名誉なあだ名つけるんだ! そんなに俺のワンピースへの情熱は異常か!?
「どこのだれを好きなのかは知らぬがその記憶だけ消そうと思えば、われのことまでついでのように忘れおって! おぬし幼馴染なのにわれに対して薄情すぎるわ!」
「俺に責任なくないか!?」
で、さっきの発言からすると、茶々の記憶だけを思い出させるために周囲の人で洗脳の練習をしてたってわけか……じゃあ今までの騒動って身内の恥をさらしただけかよ! 俺にも原因の一端があると思うと罪悪感がヤバい!
「一回落ち着け茶々! ああもう暴れるなって!」
ほら、ワンピースでそんなに暴れたら裾がめくれて大変素晴らしいことになっちゃうからありがとうございます!
「で、でも! おぬしが好きなのはシンプル・グリーンなのであろう! 家に遊びに来るほどの仲なのであろう!」
「だからまず、そこから違うんだって!」
茶々が暴れないようにしっかり押さえながら、とんでもない勘違いを解く。
「大体なんで俺が通普のことを好きになるんだよ!」
「……………………はえ?」
俺の言葉を聞いた茶々は、そんな気の抜けた声を出してポカンとした。
おい、どうしてそんな意外そうな顔をするんだ。まさか本当に俺が通普のことを好きだと思ってたわけじゃないだろうな。いやまさか、まさかね。
「な……なぜ、通普の名が出てくるのだ? 通普って、あの同学年の通普であろう? まさか、シンプル・グリーンの正体って……通普? 女じゃなくて?」
勘違いってそっちかよ!
いや、なんで気づいてないんだよ! 俺は茶々の前でも、普通にあいつのこと名前で呼んで……あれ、呼んでなかったっけ? まさか偶然そんなことがあったのか?
「気づけよ! せめて男だってことくらい気づけよ! 鈍感って人のこと言えないぞ!」
「だ、だってあやつ! 自分のこと『私』って!」
「それだけかよ! 声とか仕草でわかるだろ!」
「それは……おぬし以外に……興味がなかったから……」
「お、おおぅ……」
そんなふうに恥ずかしそうに言う茶々に、なんかこっちまで恥ずかしくなってきた。
「と、ともかく! これでわかっただろ? 茶々の勘違いだって」
「そうなるとほかにおぬしの好きな人が……」
違うそうじゃない。
「でもあれだ、わざわざこんな大掛かりなことしなくてもよかっただろ」
「む、それはどういうことだ緑」
「ほら、お前が洗脳した理由って、つまり、その……お、お前が俺のことを、す、好きだからって……あ、やべ恥ずかし。……んん! だからようは嫉妬だろ? だったらそんなことする必要なかっただろ」
やれやれ、人騒がせな。それならそうと言ってくれれば、俺だって……
「……? ……! み、緑! 緑緑緑! もう一回! もう一回なのだ!」
「え? 何が!」
「今の言葉だ! なぜ必要なかったのかきちんと意味を説明するのだ緑!」
んん? どうしてそんなに目を輝かせて……? それに今の言葉って、俺が言ったことって……あ。ああ!
「さあ緑! さあさあ!」
「やめろ! そんなにウキウキするんじゃない! ここぞとばかりに攻めるな!」
「聞こえんのぉ? さあ緑、どうして必要ないのだ?」
茶々はにやにやと表情を緩めながら近づいてくる。
こ、こいつ! 分かってて言ってやがるな!
ああもう! わかったよ! 言ってやるよ!
俺だってなぁ!
「俺だってお前のことが好――」
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「「……………………」」
インターホンが鳴った。
これ以上ないぐらい、間が悪いタイミングだった。
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