生殺与奪の代償魔術(サクリファイス) ~世界最強の魔術師って呼ばれてるけどチートを使うたびに相棒の服がはだけていく仕様だから心が痛い~

からぶり

文字の大きさ
4 / 4
第一部

1-3 似た者同士

しおりを挟む
「廃村の調査?」
「はい」

 冒険者ギルドにて、ヒユウはギルドの受付嬢から渡された一枚のクエスト依頼書を見ながら口を開いた。

「あの、調査というのは、いったい何を調査すればいいのでしょうか?」

 ヒユウが持つ依頼書を精一杯背伸びしながらのぞき込むユアが尋ねる。

「ライフスから南西へ三日ほど馬を走らせたところに、『ミニッツ』という村があったそうなのですが、それがつい先日に廃村となっているのが見つかったそうです。その原因を調査するのがクエストの内容ですね」
「原因って……普通に魔物じゃないのですか?」
「それを確かめるのも、俺達冒険者の仕事だ。……馬で三日ならこの辺りか」

 説明を聞きながら、ヒユウはポケットから取り出した東大陸の簡易的な地図を広げる。

「しかしなんでそんな依頼がライフスにまで届いてるんだ? ここより『ウィークル』の方が近いんだし、そっちに依頼するだろ、普通」

 ヒユウが普段持ち歩いている簡易地図には小さな村は表記されていないが、距離が分かれば大体の位置は割り出すことが出来る。
 大体この辺、とあたりをつけた地点の近くには『海上都市ウィークル』という、ライフスほどではないがそれなりの大都市があった。

「それが……このクエスト、他でもないウィークルからの依頼なんですよ」
「――なに?」

 受付嬢の言葉に、ヒユウは眉をひそめてもう一度依頼書を確認する。

 もともとのクエストは、ミニッツ村が周辺に現れた魔獣の群れの討伐をウィークルの冒険者ギルドに依頼したもの。だが――

「『――だが、冒険者がミニッツ村に到着した時にはすでに廃村となっており、上級魔獣の存在を警戒し複数の冒険者パーティーで連合を組み再度派遣。しかしいまだに帰還したものはおらず、派遣された冒険者の生存は絶望的』……ウィークルの冒険者達はそのほとんどが水系統の魔術を使う実力者の集まりだって聞いたことがあるんだけどな。それでも手に負えなかったのか……で、何でそんなクエストを俺に? 他にもグレイモンドのおっさんとか、扱いやすくて強い冒険者はいるだろ」
「グレイモンドさんのパーティーは現在別のクエストを受注していまして。それに……何よりも、このクエストの難易度が……」
「……いくつなんだ?」

 クエストにはギルドが定めた難易度がある。『魔獣と遭遇する恐れのない安全なクエスト』のDランクをはじめとする五段階の難易度だ。
 また、冒険者にも同じように五段階の階級があり、ギルドは冒険者の階級に見合った難易度のクエストしか基本的には紹介しない。

「確か、Bランク以上の難易度は『上級冒険者でも達成困難』でしたよね? ま、まさか、そのBランクなのでしょうか?」
「いえ…………ウィークルのギルドが設定した難易度は、『命の保証がなされない』とされるAランクです」
「Aランク!? そ、そんなの、誰も受注しないんじゃ!?」
「……要するに、実質俺への名指し依頼ってことか」

 予想以上の難易度の高さにユアが驚愕する隣で、ヒユウは不愉快そうに顔をしかめた。

「す、すみませんアイシーさん。しかしウィークルからはすでにAランク相当の依頼金も支払われてしまっているため……」
「いいじゃないですか、受けましょうよヒユウさん!」
「あ、いえ、まだ冒険者になったばかりでD階級のマイハーさんがこのクエストを受注することはギルドとしても承認しかねるのですが……」
「そ、そんなっ!?」

 ユアは抗議するような声をあげるが、受付嬢も意地悪で言っているわけではない。
 階級も難易度もあくまで目安とはいえ、冒険者が不幸な事故に会うのを防ぐためにこのような取り決めをしているのだ。これもひとえに冒険者の身を案じてのことである。

「わ、私がDランクなのは、魔術の特性故にパーティーを組めず、クエストを受けられなかったからで!」
「申し訳ありません、確かに我々ギルド職員は冒険者方の実力を正確に測ることは出来ません。ですが、不測の事態に対応できるよう、実力以上に経験を重視しているため……」
「でも!」
「まあ待て二人とも。ユアも落ち着けって。……なあユア、何がお前をそこまで駆り立てるんだ? 危険だってことは分かってるんだろ?」

 受付嬢に必死に食い下がるユアを宥めるように、ヒユウは間に入る。
 ヒユウは腰を下げ視線をユアと合わせると、ユアを試すかのように問いを投げかけた。

「……【吸収魔術】のせいで、私は今まで多くの方に迷惑をかけ続けていました。このまま誰かに迷惑をかけるだけの存在なのだと思ってました。ですが、ヒユウさんと出会えたおかげで…………ヒユウさんに仲間にしてもらえて、私は嬉しかった! 『お前は迷惑じゃない』と言われたみたいで幸せだった! ようやく誰かの為になれるのだと、誰かを守るためにこの力をふるえるのだと、そう思いました…………危険なのは分かってます。命の保証がないのは覚悟の上です。しかし私は、誰かが苦しみ、悲しんでいるというのに、ただ傍観者でいることの方が――死ぬよりも、ずっとつらい」

 蒼い瞳に涙を浮かべながら、ユアはその身に秘めた感情を吐き出した。

「身の程を弁えぬ発言であることを、先に謝罪します。――私は、ヒユウさんの仲間です。仲間が危機に立ち向かうというのなら、私をこの身を賭して力になりましょう」
「……人は死ぬぞ。お前が思っているより、簡単に」
「覚悟の上です」
「そうか…………なら、俺がお前を死なせないさ。絶対に。覚悟を見せてもらったんだ、俺も覚悟で答えなきゃな」

 ぐしぐしと乱雑にユアの頭を撫でると、ヒユウは依頼書をテーブルにたたきつけ、受付嬢に向かって口を開いた。

「ユア・マイハーをクエストに同行させる。有無は言わせん。この条件がのめなければ依頼は受けない」
「こ、困りますアイシーさん! ギルドとして、そのようなことを容認するわけには――」
「俺とユアは仲間……つまりはパーティーだ。今ここでパーティーランクをつけてくれ。……それなら問題ないだろ?」
「うっ……」

 ヒユウの指摘に、受付嬢は思わず言葉を詰まらせる。

 冒険者は階級に見合ったクエストしか受注できない……基本的には、だ。
 例外として、所属するパーティーの『パーティーランク』がクエストに見合っていれば、階級が低くともクエストに同行することが出来るという、抜け道同然の規則がある。

 もちろん、冒険者の安全を考慮するギルド側としてはあまり認めたくない例外ではあるが――しかし、例外と言えども、規則は規則である。

「はぁ……そんなの、アイシーさんが所属している時点で決まっているようなものじゃないですか。一応、もう一度言っておきますが、このクエストは命の保証がなされていませんからね? ……アイシーさん、マイハーさんを守れますか?」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる。仲間一人守れないようじゃ、世界最強の魔術師なんて称号、恥ずかしいだけだ」

 困ったように笑う受付嬢に、ヒユウもにやりと笑ってそう返した。

「分かりました。ユア・マイハーさんのクエスト同行を許可します」
「ほ、本当ですかっ! あ、ありがとうございます!」
「――と、その前にパーティー登録しなければですね。パーティー名はお決まりですか?」
「そうだな……」

 ユアをちらりと見て考える。
 互いが初めての仲間で、初めてのパーティー。

 それは、どちらも同じようにデメリットを持つが故の縁。


「――『似た者同士シミラー』。それが俺達のパーティー名だ」


 それは、後に伝説と呼ばれるパーティー。
 互いが互いを代償にしあう、そんな馴れ合いのパーティーが結成した瞬間だった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...