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1 光る魔法陣のようなものがあらわれた。
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自分は恵まれている方だと思っている。
両親とは死別して親戚もいないが、周りに自分を思ってくれる人が傍にいてくれたから。
それは俗に言う、幼なじみというもので、産まれた時から親ぐるみで仲がとても良い。仲良し4人組だ。
彼らは皆、デリケートな自分の秘密を知っているが、それを知っていても変わらず仲良くしてくれる。
両親が死んでからはむしろ過保護になったくらいで、
ありがたくもあり、申し訳なさもある。
そんな大切な友人達と高校まで一緒になり、大学からは別々になる予定だった。
いくら腐れ縁でも、全員がみな同じ学校というのは中々ないが
自分達は結構長い方ではないだろうか。
それでもずっと皆と仲良くできたらいいと思いながら、いつものように高校の屋上で、4人でお弁当を広げていた。
「お!飛鳥、それ旨そうだな!だし巻き卵か?」
「そうだね。美味しいよ?いつものことではあるけど、作ってもらってなんだか悪いな。だからって、良にはあげないよ?」
キラキラした目で話しかけながら箸を伸ばしてきたのは柿崎 良。
笑うと可愛らしい幼さの残る、快活な男子で、ムードメーカーでもある。
「飛鳥ってば、気にしないでっていつも言ってるじゃない!むしろ飛鳥のためにこっちから作りたくてお願いしてるんだし、ていうか、ファンクラブの会長である私の特権よね!」
私はクォーターの為、顔の造形が日本人とはことなる。瞳の色も何故か金色と、人間離れしている。
だから多少目立つだろう事は自分でもわかっていた。
カラコンをしても何故か金の瞳が誤魔化せず、私は敢えて視力が悪い訳でもないのに分厚い瓶底眼鏡で瞳をかくしていた。
そんなスタイルをしているというのに
なぜか自分には熱烈なファンクラブができている。
そのファンクラブから、両親のいない自分にと、お弁当を作りたいという奇特な人が沢山上がったのだが、
その奇特者があまりにも人数多かったため、仕方なしに代表としてファンクラブの会長が作ることになったらしい。
その会長というのが我が幼なじみでもある、橘 結衣である。
そんなクラブ会長までしている彼女にも、実はファンクラブがある。
というより、彼女だけでなく、あとの幼なじみもう二人にもそれぞれファンクラブがある。
つまり、この仲良し4人全員にファンクラブがあるのだ。
これだけファンクラブがあれば派閥はもちろんできているが、熱烈なのは自分のクラブの人達だけらしい。
それも、ただ熱烈なというだけで、他のファンクラブの人達と問題を起こすとか、そういう迷惑なことは一切なく、なぜか皆仲が良い。
これは、私達4人が皆本当に仲が良いから、自分達もクラブの垣根を越えて仲良くしましょうということになったらしい。
平和だなー、と思う。ここの学校は皆好い人ばかりなのだ。
こういうことでも、やはり恵まれていると思う。
「そういや、飛鳥。お前は好きなヤツとかいないのか?」
突然恋愛話をぶっこんできたのは最後の幼馴染み、橘川 慧。
普段からクールで、無口なタイプなだけに、まさかそんな彼から恋バナがでるとは思わなかったのか、
全員が目を丸くして彼を凝視している。
「な、何だよ。俺、何かおかしなこと言ったか?」
「おかしなことっていうか…なあ?」
「そうね、普段の慧らしくないわね。ていうか、慧は人の恋愛事なんて興味ないんだと思ってたわ。」
「…まあ、それは否定しない。他人の色恋なんて、どうでもいいしな。だが、それが飛鳥のことなら別だ。」
「!?」
「キャー!慧ってば、それもう告白しているようなものじゃない!わかってるの!?」
「あぁ、わかっている。別に俺は自分の気持ちを隠してる訳じゃない。俺は飛鳥、お前が好きだ。…まあ、まさかここで告ることになるとは思わなかったがな?」
「お、おい!黙って聞いてりゃ、待てよ!俺だって飛鳥が好きなんだ!慧に渡すつもりねーからな!!」
「ちょっと待ちなさいよ!飛鳥には私が認めた人じゃないと許さないんだから!ていうか、飛鳥は私のよ!!」
「…。」
一体、どこから突っ込めばいいのか。
中性的な外見でも、一応私は女。結衣、いつからきみのものに?結衣は女が好きだったのか?
本人ほったらかしで3人でワイのワイのと騒いでいるのを横目に、私は雲ひとつない晴天を見上げてふぅ。とため息をついた。
まあ、嫌われているよりはいいか。とりあえず、結衣に作ってもらったお弁当を食べ直す。
うん、やはり美味しい。結衣はきっと良いお嫁さんになるだろう。
さっきはいきなりの告白で驚いたけど、別に私は彼ら二人に対して特別な感情は抱いていない。
大切な友人、幼馴染みであることにかわらない。もちろん結衣に対してもそうだ。
というより、私は無意識にそういう相手を作らないようにしていた。
それは己の秘密にも関係しているが、もっと他に…そう、
何故か此処ではダメなんだ、という、何か別の意識に捕らわれているかのような…
自分でも良くわかってはいないが…いつももどかしさを感じていた。
もしかしたら、それは前世の記憶があるせいかもしれないが、
記憶があるにしろ、ないにしろ、私が私であることにはかわらない。
だから、もっと別の何かが関係しているのだろう。
「返事は直ぐにはいらない。」
「!!」
いつのまに慧が隣にきていたのか、飛鳥の耳元に囁くように言ったかと思えば、
フッと優しい笑みを浮かべていることに、飛鳥は驚いて耳を押さえてしまう。
「飛鳥が俺に、いや、俺たちに対してそんな風に見ていないことは気付いているから。」
だから返事はゆっくりでいいのだと、その声色までもに甘さを含みながら、慧は飛鳥の手を握った。
「あー!慧、抜け駆けずるいぞ!」
「そうよ!私の目が黒いうちは飛鳥は誰にも渡さないんだから!」
「お前らな…」
前世の記憶があることは、さすがに皆には話していない。
皆に話してあるのは、自分に異能の力があることだけ。しかしそれも全て話しているわけではない。
実は生き物の命を蘇らす事ができるとか、天候を操れるだとか、そんな化け物じみたことは言えず…
知ったらきっと皆私から離れていくのだろう。
両親が死んだときに、もしかしたら生き返らす事ができるのではないか、そんなことを何度も思った。
でも、たとえ本当に生き返らせたとして、その二人は本当に自分の両親のままなのか。
頭の中に、前世で母親を生き返らそうとして失敗した、金髪の少年を思い出す。
こんな、非人道的なこと、己には恐ろしくて、本当にできるかどうかもわからないことは、やはり出来なかった。
それに、この世界は魔法のような異能がない。そんな世界で人と違うことをして、嫌われるのが怖かった。
幾度も転生を繰り返し、そういうことはもう慣れたと思っていたけれど、
まだまだ自分の心は弱かったらしい。
そんな苦々しい表情が知らず出ていたようだ。
「…飛鳥?」
「ちょっと、飛鳥、どうしたのよ?」
「具合が悪いのか!?」
皆の心配に、ハッと気付き、先ほどまで考えていたネガティブ思考を中断する。
「いや、なんでもないよ。大丈夫だよ。皆、ありがとう」
尚も心配する皆に、本当に大丈夫だからと、昼食の続きを促す。
「飛鳥、悩みがあるなら俺に相談しろ。もし俺に言いづらい事なら、コイツらもいる。」
「そうだぞ!飛鳥!遠慮するなよ!」
「飛鳥の悩みは私の悩み!飛鳥と私達の仲じゃない!」
「慧、良、結依…。ありがとう。」
皆の優しさが染みてくる…。
心からの微笑みを見せると、その笑みに魅せられたのか、皆、一様に顔を赤くし…とても和やかな雰囲気が流れた。
皆になら、いつかは、話せる時が来るかもしれない。
そんな事を考えている時だった。
ふと、何か空気の乱れを感じた。
と、同時に何か懐かしいような空気も感じ、困惑していると、すぐ真下に、光る魔法陣のようなものがあらわれた。
それは飛鳥も含む、全員を包む以上の広範囲のもので…
「!?」
「なんだあ!?」
「きゃあ!」
「飛鳥!!」
どうやら自分が透明になりだしていたらしく、それに気付いた慧が慌てて手を伸ばし、
離さないとばかりにぎゅっと抱きしめられたかと思うと、魔法陣の光がさらに増し、余りの眩しさに目を瞑れば、
何かに体が引っ張られる感じがして…
次に目を開けた頃には、見慣れない景色が眼前にあったのだった。
つづく
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