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2 望むこと…元の世界に還ることも?
しおりを挟む「おぉ!勇者さまだ!」
「勇者召喚は成功したんだ!」
よく見ると、周りに見知らぬ人が沢山いて、状況に着いていけない自分達を見ながら、口々に皆、勇者さまだ!これで救われる!などさけんでいる。
「飛鳥、大丈夫か!?良、結依も!」
一番冷静な慧が、それでも飛鳥の腕を離さないまま、皆を気遣った。
「うん、何ともないよ。」
「一応、怪我とかはないから大丈夫だ。ただ、此処が何処だかわからない以外はな。」
「そうだね、見たこともない部屋?お城?よくわからない。」
まるで、異世界のような人々の出で立ち。
もしかして、また異世界転生してしまったのか…と一瞬思ったが、頭を振ってその考えを打ち消す。
何故なら自分はまだ死んでいない。今生では。それに幼なじみの皆も一緒なのだ、転生ではないだろう。
むしろ、これは…
「…ねえ、良。」
「なんだよ、結依。」
「これって、良が最近はまってるアレに状況そのままじゃない?」
「…やっぱりそう思うか?」
「だって周り皆、勇者、勇者言ってるし。魔法陣ぽいのもでたし。何より此処は日本、いや、地球でもないんじゃない?」
やはり結衣も同じ事を思っていたらしい。隣で聞いてた慧と飛鳥もうん、うんと頷き合う。
そうして4人で顔を見合わせていると、
「よくぞ参られた。勇者殿。私はこの国、スウィード国の王だ。訳あって、そなたら勇者を呼び寄せさせてもらった。」
タイミングを見計らっていたのか、国王が話し掛けて来た。
「勇者って、沢山いるわけ?」
「いや、伝承では3人だ。だが…」
「俺たちは4人だ。まさか、1人だけ違うとか言わないよな?」
「残念だが、そう言わざるをえない。申し訳ないが、我々の手違いで来てしまったようだ。本当に申し訳ないと思っている。」
「「「な!?」」」
「……。」
手違い…もしかしたら自分ではないだろうか。
此方へ来る寸前、自分だけ体が透けて、今にも消えそうだったのだ。
慧が繋ぎ止めてくれたから、こうして此処にいるが。
本当は違うのに、勇者じゃないのに、実際は消えるはずだったのではないか。
「早速だが、君たちのステータスを拝見させていただこう。それで勇者かどうかがはっきりするだろう。」
「ちょっと待てよ!そんな簡単に勇者かどうかを改めさせて、それで手違いでとかいう人間がわかったらどうするつもりなんだ?」
「こちらに非がある、もちろん、手厚くもてなすだろう。できる限りは、その者が望むことを叶えよう。」
「望むこと…元の世界に還ることも?」
「「!!」」
慧の言葉に良と結衣は息をのむ。が、
「…君たちには悪いことをした。残念だが、元の世界に還すことはできない。」
「そんな!」
「どうして!?」
「この勇者召喚魔法は、こちらに喚ぶことはできても、送り還すことができないのだ。」
(「それはあの魔法陣が不完全だからだろう。」)
とさして驚く事もなく聞いていた飛鳥だったが…いや、ちょっと待て。
なぜ自分はこの異世界の魔法陣のことがわかるんだ?
いくら転生を繰り返しているとはいえ、どの世界も魔法は全く同じということはなかった。
だから、この世界の魔法は全く未知の物なはずなのに…
自分は勇者召喚とかいうあの魔法陣がわかるなどと…だが、確かに飛鳥は魔法をしっかり理解しているのだ。
だからと、この事を国王に話したとして、信じて貰うのは100%無理だろう。あり得ないことなのだから。
もとより、飛鳥は話すつもりもさらさらない。それに手違いは自分だろうから。自ら進んで余計な波風は立てるべきではない。
周りで皆が還れないことを嘆いているのを見て、いっそのこと、
皆を此処から逃がして、何とか日本へ還せないだろうか…と。
だが魔法陣を理解していると言っても、己にその魔法がきちんと使えるのか…
そんな一発逆転な不確定なこと、やはりできる筈がない。
そんな事を考えて、飛鳥はやるせない気持ちになった。
「本当に申し訳ないと思っている。そのお詫びと言っては何だが、歴代の勇者は必ず国賓扱い、厚待遇となる。」
「…あの、聞いてもいいですか?」
「申してみよ」
「その歴代の勇者さんたちは、やはり、何かと戦ったのですか?」
「あぁ、その為の勇者召喚だからな。つまり君たちにも戦ってもらうことになる。
ただ、今の君たちがどれくらいのレベルかはわからないが、しばらくこちらで修行してもらってからの討伐になるだろう。
もちろん、最後まで此方からの協力は惜しまないつもりなので安心してほしい。」
「修行…ね」
「どのみち、俺たちに他の選択肢はないのだろう。ならば、死なないように頑張るしかないな。」
「死なないようにって…、まさか本当に死んじゃうかもしれないの!?」
「魔物とか討伐に行くって事は、そういう危険性もあるだろうさ。
此処は夢でも何でもない。残念だが現実だからな。」
「そんな…」
「勝手に喚んでおいて無理やり戦わせることには申し訳ないと思っているが、
魔王討伐はなぜか異世界からの勇者でないとできないことになっているのだ。
頼む、我々を救ってくれまいか」
「…」
「…還る事もできないのだから、他にやることもないし、やるしかないだろう。」
慧の言葉に皆が頷く。あとの問題は手違いという異邦人の件か。
「それで、ステータスを見れば、レベルや勇者かどうかがわかるんだっけ?」
「そのステータスって、どうやって見れるの?」
「心の中でただ念じるだけでいい。ステータスオープンとな。」
その瞬間、皆、自分の目の前に、まさにゲームでよくある、ステータス表が表れた。
「なるほど。」
「おぉ~すげぇ!」
「ホントに表示されてる。」
「…」(やはりか…)
皆のステータス表を横目で確認し、自分以外3人ともステータスにはある文字が表示されているのに対し、自分にはないもの。
すなわち、勇者という称号だ。
手違いは思った通り己だった。
それは予想していた事だから別に構わない。ただ、問題は他にあった。
これはとても面倒なことになりそうだ…そう自嘲する飛鳥だった。
つづく
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