森羅万象、真理を司る者~もう一つの故郷で溺愛される~

さといち

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5 それが素ということか?

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雑談しながら二人並んで歩いた先に、大きな湖が見えてきた。


「どうやら着いたようだ。転移地はあの湖の上にある。」


「…」


聞き間違いだろうか。湖の上って聞こえたような…


「…くくっ、面白い顔になってるぞ?まあわからなくもないが」


「…そんな風に言うってことは、冗談ではないんです…いやないんだな?」


雑談の最中、名前の呼び捨てから、遂に敬語も取れとルイスに頼まれた飛鳥は、

年上だからと無意識に出てしまう敬語を何とかとどめながらため口で話していたのだが…


今もやはりスルッと敬語が出てしまい、またルイスに睨まれて口調を直したのだ。



「そうだ。確かに湖の上に転移のための入口がある。

まあ心配することはない、いくら湖の上に橋もなにもないからと言って、水の上を歩けなんて言わないさ。」


「…まあ、別に歩けなくもないんだが…」


「ああ、そうだろう。…って、え?歩けるのか!?」



今度はルイスが面白い顔をしている。


「…フフ、ルイスもそんな顔するんだな。」



「!!…っ、人をからかうんじゃない。なんだ、冗談か。」


「いや、本当に歩ける。」


そう言って飛鳥は橋の上から足を伸ばし、


「お、おい!?」


ルイスが驚いて慌てて飛鳥を止めようと腕を伸ばすが届かず、


そのまま飛鳥はスイスイと水の上を歩いて見せた。


飛鳥の足元には小さな波紋ができ、足を動かす度に広がったり増えたりしている。


「…すごいな。どうやってるんだ?アスカ、魔術が使えるのか?」

「魔術は使える。だが今は魔術は使ってない。」



「魔術でないなら何か別の力でも使ってるのか?」


「チャクラ…と言ってもわからないか…
この世界で言うなら魔力が近いか?

自身に巡る力を足元に集中させて、それを元に水面での歩行を可能にしているに過ぎない」


「自身に巡る力…なるほど、それは誰でもできるのか?」


「…そうだな、力を持つ者なら訓練次第でできるだろう。ルイスなら直ぐにでもできると思うが」


「そうか!では試してみるか。アスカ、やり方を教えて貰えるか?」


「それは構わないが…別に教える程の事でもない、
さっきも言ったが、己の中にある力を足元に集中させるだけだ。

魔術を使うルイスなら、おそらくその魔力を足元に巡らせればできるだろう。

ただ、その力が強すぎてはいけない。水面上を歩いても水に小さな波紋が出来るくらいの力で巡回させるんだ。」



「…魔力を足元に…、強すぎず、弱すぎず…なるほど、何となくコツを掴めて来た気がする」


そう言ってルイスは水面に足をのせ、そのままゆっくりではあるが飛鳥のいるところまで水の上を歩いて来たのだった。


この水面歩行、そんな簡単にできる事ではないはずだが…やはりルイスは魔術の長なだけあって、才能があるということなのだろう。


飛鳥の目の前までたどり着いたルイスは飛鳥を見てニヤリと笑った。


「それにしてもアスカ、お前、さっきから口調が変わっているの、自分で気付いているのか?」


「…?」


ルイスは一体何を言っているのか。


「…敬語をやめるように言ったのはルイスだろう」


「そういう意味じゃない。なんだ、本当に気付いてないんだな。ということはそれが素ということか?」
アスカ…、やはりお前は…


「…?なんだ?」


最後のルイスの言葉は小さすぎて聞き取れず、聞き返した飛鳥だが、


「いや、気にするな」


そう言うとルイスは今までで見たこともないような、慈しむような、本当に愛しい者でも見るかのような表情で微笑んだ。



「…ルイス、今自分がどんな顔をしてるかわかってるのか?
何を思ってそんな表情をしているのかは知らないが、私はルイスが思うような人間じゃない。」


「いいや、、、アスカ、お前は…、いや、今はよそう。おそらく精霊に逢えばアスカが自分でわかるはずだろうから」


とりあえず、今は精霊の地へ行く事が先決だからと、ルイスは話を打ち切った。


確かに今話す事ではなかったかもしれない。


腑に落ちない所はあるが、目的を忘れたわけではない。まずは自分が何者なのか、はっきりさせなければ。


それはきっと、精霊の地で明らかになるだろう。





この時点で、私達は完全に油断していたのだろう。

不穏な気配が近づいているのに、ルイスもそういう事には敏感そうなのに気付いていない。


何事もなく無事に転移の入口のある湖へと着いたことで安心してしまったのかもしれない。


飛鳥も、気配には敏感な方なのに、自分の今後の在り方に考えを巡らせていたせいか、周りに気を配ることが出来ていなかった。



まさか、精霊の聖地へと着く前にあんなことが起こるとは誰も思っていなかっただろう……






つづく




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