森羅万象、真理を司る者~もう一つの故郷で溺愛される~

さといち

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6 足りないものとは……

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「アスカ、そのまま湖の真ん中まで行けるか?ちょうどそこが転移の入口なんだ」


「問題ない。」


飛鳥は地面を歩いているのと変わらぬ要領で、水面をスイスイ歩いていく。

その後ろをルイスも同じように着いていく。

そして湖の真ん中まで来ると、二人は立ち止まった。

ルイスが徐に上空に腕をかざす。

すると、頭上に大きな魔法陣が現れた。


「此処から精霊の地へ行く事ができる。
魔力があり、且つ、精霊に許可を貰えている者であれば、此処へ来れば陣が現れるようになっている」


なるほど…と思うと同時に、こんな頭上では入口を通るにも中々大変なのでは…とも考えたがそれは杞憂に終わった。


入口の向こう側から何かの引力でも作用しているのか、体が引っ張られる感覚がする。


「入口が現れたら、向こうに行く事を強く望め。そうすれば、自然に体が入口へと向かうようになる」



「わかった」



よし、では行こう……
と、その時だった_________



「…っ、アスカ!危ない!!」


「!?」


一瞬、何が起きたのか解らなかった…


気が付いたらルイスが目の前でスローモーションのように倒れていった。


「クク、魔術師長さんよ、珍しく油断していたようだな。」


「…一体、何者なんだ?なぜこんなことをする」


飛鳥は血だらけで倒れているルイスを腕に抱きながら、震えた声で問いかけた。


「お嬢さん。あんた、この男の女か?
あんたを狙えばこの男があんたを庇うだろうことは見ていてわかっていたからな。悪いが利用させて貰った。」


男は意地の悪い顔で嗤いながら言った。


「…くっ、…何が…目的だ…?」


「!ルイス、気が付いたのか?!」


「まあ、なんとかな…」


そう言いながらも、ルイスはヒューヒューと呼吸が苦しそうにしている。


それに、おかしい、さっきから回復魔法をかけているのに血が止まらない。このままでは……


「…お前、…さっきの攻撃……、何か……細工…したな?」


ルイスが息が絶え絶えになりながらも男に問いかける。


「まあな。その傷、魔力で治せないようにした。」


「!」


「…やはり…か…だが、俺が…死んだとしても、……お前が…この道を……通る事は…できないぞ」



「ルイス、もう喋らなくていい!」


「お嬢さん、もう無駄だ。
それに、通れないことはわかってるさ。だが別にそれでいいのさ、俺の目的は他にあるんだからな」


そう言って、男はあるものを召喚した。


「!!!」


「……おまえ、……腐ってるな……」


「ふん、それは誉め言葉として受け取っておく。だがこれで、向こうの精霊を呼べるだろうからな」


男が召喚したのは、傷だらけの、隷属された幾人もの小さな精霊達だった。

精霊たちは皆、恐怖に怯えながら、目が虚ろになっている。

その精霊達を見て飛鳥は、激しい怒りと、深い悲しみが混ざった強い感情に支配されるのがわかった。


両親が死んだときでさえ、悲しみはあれどこんなにも強い感情はわいて来なかった。


なのに、痛め付けられた精霊たちを見た瞬間、飛鳥は感情の高ぶりに見舞われたのだ。

この感情、既視感がある…

そんな飛鳥に気付かず、ルイスは男に尚も問いかける。


「……おまえ、……まさか……数百年前にいた……、精霊達を…奴隷のように………操っていた………あの…一味か……?」



「よくわかったな。流石、長生きしてるだけのことはある。まあオレはその子孫といったところだな。」



「……だが…あの賊は……全て…根絶やしに………したはず…だ………なぜ、…今頃…ゴフッ、」



「ルイス!!」



言葉の最後に、ルイスは口から大量の血を吐き、その場で力つきてしまった。



「ついに死んだか?まあいい、俺はコイツらを使って、向こうの精霊を誘き寄してやる。」



「…お前は、人間じゃない…」


「なんとでも。俺は望みのためならなんでもするんでね」


男は飛鳥たちには目もくれず、傷付いた精霊達を囮に聖地の精霊を呼び寄せようとしている。


飛鳥はもう動かなくなってしまったルイスを抱きしめながら、酷い哀しみに暮れる。



(…まだ、ルイスは死んではいない…だが、このままでは時間の問題だ…回復が効かないなら、どうすれば……それに、あの男を止めることも…)



「私には、何もできないのか……?」








__________________________________________________________________________________________________________


……………………




《今のお前には、足りないものがある。そのせいで、力も上手く使えていない。》



「!?」

急に、目の前が暗転し、頭に直接声が響いた。


(足りないもの…そのせいで力が使えていない?)


《そうだ、お前の持つ力は、いくら相手の者が妨害しようとも、本来なら関係なく使えるはずだ。だが、その足りないもののために力を発揮できていない。》



(では、その足りないものを補えばルイスを治せると?)


《そうだ》


(その足りないものをどうすれば補える?)


《足りないものを補うには、覚悟が必要だ。お前に、その覚悟があるか?》


(ルイスを助けることができるなら、どんなことでも後悔はしない。)


自分で言った言葉に飛鳥自身も驚く。

まだ知り合って間もないルイス相手に、こんなにも感情が揺さぶれるとは…。


《…どうやら、本気のようだな。ならば受け入れよう》


そして、目の前に輝く翅を背に広げた、目映い一人の精霊が姿を表した。



その精霊を目に、飛鳥は悟った。



________あぁ、そうか、足りない、いや足りないとは……




「…そういう事だったのか」


そして、目の前の精霊はとても優しそうに微笑んだ。


二人は同時に右腕を伸ばし、手のひらを合わせ、指を絡めた。


その瞬間、カッと眩しい光に覆われた。






つづく


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