森羅万象、真理を司る者~もう一つの故郷で溺愛される~

さといち

文字の大きさ
6 / 9

6 足りないものとは……

しおりを挟む




「アスカ、そのまま湖の真ん中まで行けるか?ちょうどそこが転移の入口なんだ」


「問題ない。」


飛鳥は地面を歩いているのと変わらぬ要領で、水面をスイスイ歩いていく。

その後ろをルイスも同じように着いていく。

そして湖の真ん中まで来ると、二人は立ち止まった。

ルイスが徐に上空に腕をかざす。

すると、頭上に大きな魔法陣が現れた。


「此処から精霊の地へ行く事ができる。
魔力があり、且つ、精霊に許可を貰えている者であれば、此処へ来れば陣が現れるようになっている」


なるほど…と思うと同時に、こんな頭上では入口を通るにも中々大変なのでは…とも考えたがそれは杞憂に終わった。


入口の向こう側から何かの引力でも作用しているのか、体が引っ張られる感覚がする。


「入口が現れたら、向こうに行く事を強く望め。そうすれば、自然に体が入口へと向かうようになる」



「わかった」



よし、では行こう……
と、その時だった_________



「…っ、アスカ!危ない!!」


「!?」


一瞬、何が起きたのか解らなかった…


気が付いたらルイスが目の前でスローモーションのように倒れていった。


「クク、魔術師長さんよ、珍しく油断していたようだな。」


「…一体、何者なんだ?なぜこんなことをする」


飛鳥は血だらけで倒れているルイスを腕に抱きながら、震えた声で問いかけた。


「お嬢さん。あんた、この男の女か?
あんたを狙えばこの男があんたを庇うだろうことは見ていてわかっていたからな。悪いが利用させて貰った。」


男は意地の悪い顔で嗤いながら言った。


「…くっ、…何が…目的だ…?」


「!ルイス、気が付いたのか?!」


「まあ、なんとかな…」


そう言いながらも、ルイスはヒューヒューと呼吸が苦しそうにしている。


それに、おかしい、さっきから回復魔法をかけているのに血が止まらない。このままでは……


「…お前、…さっきの攻撃……、何か……細工…したな?」


ルイスが息が絶え絶えになりながらも男に問いかける。


「まあな。その傷、魔力で治せないようにした。」


「!」


「…やはり…か…だが、俺が…死んだとしても、……お前が…この道を……通る事は…できないぞ」



「ルイス、もう喋らなくていい!」


「お嬢さん、もう無駄だ。
それに、通れないことはわかってるさ。だが別にそれでいいのさ、俺の目的は他にあるんだからな」


そう言って、男はあるものを召喚した。


「!!!」


「……おまえ、……腐ってるな……」


「ふん、それは誉め言葉として受け取っておく。だがこれで、向こうの精霊を呼べるだろうからな」


男が召喚したのは、傷だらけの、隷属された幾人もの小さな精霊達だった。

精霊たちは皆、恐怖に怯えながら、目が虚ろになっている。

その精霊達を見て飛鳥は、激しい怒りと、深い悲しみが混ざった強い感情に支配されるのがわかった。


両親が死んだときでさえ、悲しみはあれどこんなにも強い感情はわいて来なかった。


なのに、痛め付けられた精霊たちを見た瞬間、飛鳥は感情の高ぶりに見舞われたのだ。

この感情、既視感がある…

そんな飛鳥に気付かず、ルイスは男に尚も問いかける。


「……おまえ、……まさか……数百年前にいた……、精霊達を…奴隷のように………操っていた………あの…一味か……?」



「よくわかったな。流石、長生きしてるだけのことはある。まあオレはその子孫といったところだな。」



「……だが…あの賊は……全て…根絶やしに………したはず…だ………なぜ、…今頃…ゴフッ、」



「ルイス!!」



言葉の最後に、ルイスは口から大量の血を吐き、その場で力つきてしまった。



「ついに死んだか?まあいい、俺はコイツらを使って、向こうの精霊を誘き寄してやる。」



「…お前は、人間じゃない…」


「なんとでも。俺は望みのためならなんでもするんでね」


男は飛鳥たちには目もくれず、傷付いた精霊達を囮に聖地の精霊を呼び寄せようとしている。


飛鳥はもう動かなくなってしまったルイスを抱きしめながら、酷い哀しみに暮れる。



(…まだ、ルイスは死んではいない…だが、このままでは時間の問題だ…回復が効かないなら、どうすれば……それに、あの男を止めることも…)



「私には、何もできないのか……?」








__________________________________________________________________________________________________________


……………………




《今のお前には、足りないものがある。そのせいで、力も上手く使えていない。》



「!?」

急に、目の前が暗転し、頭に直接声が響いた。


(足りないもの…そのせいで力が使えていない?)


《そうだ、お前の持つ力は、いくら相手の者が妨害しようとも、本来なら関係なく使えるはずだ。だが、その足りないもののために力を発揮できていない。》



(では、その足りないものを補えばルイスを治せると?)


《そうだ》


(その足りないものをどうすれば補える?)


《足りないものを補うには、覚悟が必要だ。お前に、その覚悟があるか?》


(ルイスを助けることができるなら、どんなことでも後悔はしない。)


自分で言った言葉に飛鳥自身も驚く。

まだ知り合って間もないルイス相手に、こんなにも感情が揺さぶれるとは…。


《…どうやら、本気のようだな。ならば受け入れよう》


そして、目の前に輝く翅を背に広げた、目映い一人の精霊が姿を表した。



その精霊を目に、飛鳥は悟った。



________あぁ、そうか、足りない、いや足りないとは……




「…そういう事だったのか」


そして、目の前の精霊はとても優しそうに微笑んだ。


二人は同時に右腕を伸ばし、手のひらを合わせ、指を絡めた。


その瞬間、カッと眩しい光に覆われた。






つづく


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...