ヒロインに転生したけど地味に生きたい

さといち

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「サディアス殿下!貴方もこいつらを止めてくれ!」

先生は殿下が正常だと思ったのだろうか?



サディアス殿下は元々無表情なことが多い。

だから、パッと見では操られているかどうかも分からない。


私は、先程の殿下の言葉だけではどちらなのか判断できずにいた。


何より、後ろにいる男の存在が、私に警報を伝えている。


出血と痛みで朦朧とする意識を無理矢理繋ぎ止め、私は事の成り行きを見つめているしかなかった。




「サディアス殿下~!あたしの為に来てくれたのね~!」

嬉しい~!と、満面の笑顔でエリアナが殿下に抱きついた。


その光景を見て、やはり、としか思わなかった。

先生も顔を顰めている。



「………」

だが、殿下は抱きしめ返す訳でもなく、乱暴にエリアナを引き剥がした。


あれ?と思ったのは一瞬で、後ろの男の発言で希望はなくなった。




「殿下はお前の仕事が遅すぎるから、態々見に来てやったのだ。さっさと終わらせろ」



仕事って……


「わかってるわよ!だってこいつがこの女を庇うだなんて思わなかったんだからしょうがないじゃない!!」



エリアナは未だに拘束されたままの先生を指さし、男に文句を言っている。


「そんな事はどうでもいい、早くやれ。」


「あたしに指図しないでよ!」

男の言葉に怒って顔を赤くしていたエリアナは、
動けないままでいる私を見るなりその顔を愉悦に歪めた。


「いい格好してるわね~、ユリーナさま。安心して!今すぐその苦しみを解放させてあげるから。

貴女の大好きなお兄様の手によってね。」


嬉しいでしょう?そう言って嗤うエリアナ。


術が解ければお兄様は私を殺した事で精神こころが壊れるだろう事はわかっている筈だ。


エリアナの事だ、私が死んでも術を解くことは永遠にしないのだろう。


それよりも、お兄様にそんな事をさせるエリアナが許せない。


「そんな風に睨んでも全然怖くないから~、諦めて死んでね🎵」


「やめろ!!おい!キリク!!」

水の拘束にもがきながら、必死に止めようとする先生。


だが、
先生の制止の声も無視をし、お兄様は私の方へ歩みを進め、

そして倒れている私の目の前まで来るとその足を止めた。




「……、……………__。」


お兄様……、ごめんなさい。


最期の最期まで声を出す事が出来ない。



『私の可愛いユリーナ、愛しているよ』


『大丈夫、もう何も怖くないよ』


お兄様の優しい声が、頭の中で巡っては消える。

まるで走馬灯のようだ……




お兄様は右手に持っていた剣を私の胸の上に縦にかざし…


一度高く上に持ち上げ、そのまま私の胸に向かって剣を降ろした。



まるでスローモーションのように見えた光景に、
私はまた、ごめんなさい、と口だけ動かし、目を閉じた___

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