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キリク・フェリス
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しおりを挟む「い、いやああああああ!!」
森一体にエリアナの叫び声が響き渡る。
「あたしの、あたしの……金の髪が……」
見ればエリアナのピンクゴールドだった髪が、血の色とどす黒い色が斑に混ざったような模様になり、更にパラパラと抜け落ち始めている。
あんなに輝いていた聖女の証であろう色はもう何処にも残っていない。
「貴女のじゃないよ、エリアナ。そんな髪色は、ただの紛い物だよ」
「違う!あたしは聖女なのよ!?」
「……見て。」
「は?何を……っ!?キャアアアア!?」
私は水魔法で姿見の鏡を作り、エリアナの前にかざす。
エリアナの今の姿は、髪色が変わっただけでなく、まるで老婆のように全身が皺がれていたのだ。
「う、うそよ、……ちょっとユリーナ!!あんたがあたしをこんな姿にしたんでしょ!元に戻しなさいよ!!」
「無理だよ。それが今の貴女の本来の姿なのだから」
「そんな、バカなこと言うんじゃないわよ!!あたしは聖女なのよ!?そうよ、聖女のあたしがこんな醜い姿なわけないでしょ!!」
「……ねぇ、エリアナ。なんでそんな姿になったか、わからないの?」
「だから、あんたがやったんでしょ!?」
「違うよ。」
「嘘つくんじゃないわよ!!」
「……」
もう何を言っても話を聞かないエリアナ、とにかく落ち着かせようと、もう一度優しく話しかけようと一歩前に出る。
「いい加減にしないか。」
「………お兄様。」
いつの間に私の立つ隣に来ていたお兄様が、
私の肩を抱きながら寄り添うように立ち、エリアナを静かな瞳で見据えていた。
「何故そんな姿になったのか、君の呪術に掛かった私にもわかる。
ユリーナのせいじゃない。その醜い姿は、自業自得だ。」
「……う、五月蝿い!五月蝿い!!あたしは悪くない!あたしは悪くない!!……あたしは…聖女……、聖女なのよ……」
エリアナはブツブツ呟きながら、そのまま地面にへたりこんだ。
聖女なんかに拘らなければ、普通に生きられたかもしれないのに、エリアナが哀れに思えた。
「ユリーナ嬢、大丈夫か?」
「グランツアー先生も大丈夫ですか?」
「ああ、俺は捕まってただけだからな。カッコ悪い事に」
全く助けになってないなんてホントだせーよな。
なんて苦笑いする先生だが、
完全に素に戻っているのは本人も気付いていないようで、
私も可笑しくて笑った。
私が覚醒した時には既に先生の拘束は解けていた。
聖女の力でエリアス殿下も解放されたのだろう。
体が自由になっても、私達の成り行きを手を出すでもなく見守ってくれていたのはわかっていた。
助けになってないなんて言うけれど、あの時先生が来てくれた事は純粋に嬉しかった。
ありがとう、先生。
「まあ、とりあえず、エリアナは俺が王宮まで連れていくので大丈夫ですか?エリアス殿下。」
「……あぁ。頼む。」
エリアス殿下の返事を聞いた後、先生はすぐにエリアナを魔法で拘束し、そのまま連れていった。
彼女はこれから罪を償う為に、断罪されるのだろう。
私は、先生に連れられていくエリアナを目で追っているエリアス殿下の横顔を覗き見る。
「………殿下。」
「……ユリーナ嬢、操られていたとはいえ、君を傷付けた。許してくれとは言わない。すまなかった。」
殿下がそのまま土下座しそうな勢いだったので、私は慌てて止めた。
確かに傷付いたけど、そこまで気にしてないのも事実。
だから、深く深く頭を下げている殿下を戻す。
「あれが殿下の本心でない事はもちろんわかっています。だから、気にしないでください。」
「……だが……」
「それに、殿下は私の事を色々助けてくれたではないですか。それでチャラです。」
これ以上何も言わせないように、私はニッコリ微笑んだ。
「……そうか、わかった。ありがとう。」
______それから。
その日は私達の体調を鑑みて、そのまま静養とし、
翌日にエリアナの審議をすることになった。
エリアナは王宮に連れられた後、私が入っていた牢屋に入れられているらしい。
サディアス殿下と黒翼の男性は、いつの間にか居なくなっていた。
先生と私が話している間にどこかへ行ったようだった。
あの二人は何しに来たんだろう?
エリアナに操られていたと思っていたけど、今思えば何だか違うような気がする。
「ユリー。」
考え事をしていたらお兄様に抱き締められた。
「……お兄様。お兄様が生きていて良かった……。」
「それはこっちのセリフだよ。もう、あんな思いはしたくない。」
「うん、」
「私も殿下の事を言えないな。ユリーナを酷い言葉で傷付けてしまった。ごめ…」
謝ろうとしたお兄様の口に人差し指を当て言葉を塞ぐ。
「もう、その事は無しです。私達は今を生きている。これから幾らでも償いもできるのですから。」
いつまでも過去に拘るのは良くないだろう。
「そうだね。」
その夜、私達は両親と4人で一緒に眠りについた。
両親が呪いから解放されたのか、確認したかったのもある。
でもきっと、もう会えないと思って、寂しかったのだと思う。
お父様も、お母様も、泣いて私達を包んでくれた。
それだけで、私はとても幸せだった。
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