57 / 63
エリアス・クレーズ
11 エリアナside②
しおりを挟む「……どこなのよ、ここ……」
見渡す限り、木、木、木。
林?ううん、森よね。たぶん。
誰か人がいないかと森の中を歩き回るも、人っ子1人見当たらない。
此処は何処の森なのか、そもそも日本なのかどうかもわからない。
人がいれば何か話してわかるかもと思ったのに、
森の中であたし1人、どうすればいいのかわからず途方に暮れていた。
__バサッ
ん?
鳥でも飛んでるのかな?
羽根の羽ばたく音が聞こえ、あたしは空を見上げた。
照らされた太陽の光が目に入り、眩しいっ。と思ったのも束の間、
あたしの視界は何かに覆われるかのように暗転し、またあたしは気を失った。
「……あれ?……あたしは……」
頭がボンヤリする。此処はまだ森の中なの?
それとも、あたしは家に帰っていて、これは夢の中?
“__夢ではない。”
「誰!?」
いきなり誰かの声が聞こえて、目を凝らすけどやっぱり何も見えない。
周りは真っ暗のまま。
“……お前は何を望む?”
「……え?」
って言うか、ちょっと待って。
これってもしかして!
あたしの頭に、沢山のラノベの話が思い浮かぶ。
「ねえ!あなたは神様でしょ!?」
“………………”
日本で流行りのラノベ展開が遂にあたしに!?
ならこの声はきっと神様に違いない!なんて思って聞いてみたけど、
それに対しての答えはくれなかった。
「……まあいいわ。__望みだったわね?」
自分の今の姿を確認する。
鏡なんてないから、首から下の服装とか体型とかしか確認出来ないけど、
見た限りでは、コンビニにいた時の格好と何も変わっていないように見えた。
じゃあ、あたしは死んではいない。と、いうことは、転移……異世界召喚ってことね!
きっと聖女とか勇者とかで召喚されたのよ!
あたしは普通の人じゃなくて、選ばれた、特別な人なのよ!
テンプレでは、直前までプレイしてたり読んでたりした小説やゲームの世界が多い。
それなら、この世界はもしかすると……
「望みの前に、……ちょっと聞きたいんだけど。」
“__何だ?”
「この世界はどういう所なの?」
“………お前の思っている世界で間違いないだろう。”
「やっぱり!!」
なら、あたしの望みは決まってる。
この世界はあたしの為の世界ということ。
あたしが主役。ヒロインなのよ!
ゲームでは、結局クリアどころか聖女の覚醒すら出来なかったけど、
現実で、あたしの世界なら上手くいくはずよ!
だから、あたしは自分の望みを口にした。
あたしをヒロインポジションのユリーナに生まれ変わらせて。と。
望みを言い終えた直後、あたしは意識を手離した。
意識を失ってばかりだな……なんて思ったけど、
これからユリーナとして幸せになるんだから、そんなことは些細なことよね。
次に気が付くと、あたしはユリーナとして生きていた。
目覚めたとき、
場面は公爵家に養女として引き取られてから2年後位。
公爵家の両親や、キリクお兄様との会話で、あたしはデジャウ゛を感じた。
選択肢は無いものの、そうだ。確かゲームで全く同じ会話をした覚えがある。
何回もゲームで繰り返したのだ、皆のセリフは勉強が苦手なあたしですら流石に覚えてしまっている。
これはホントに現実…?
___ジジッ
会話が終わった直後、いきなり頭痛がし、暗転した。
また気が付くと、今度はあの後からまた数年後のユリーナの日常風景。
やはりこれもゲームでの出来事でよく覚えている。
そして同じようにゲーム同様の会話が全く同じセリフで繰り広げられた。
___ジジジッ
またも頭痛が起きる。
そしてやはり気が付くとゲームで見たシーン。会話も同じ。
会話が終われば頭痛がして、次の場面に移る。
そんな生活を繰り返していた。
確かにあたしはユリーナとして、自分で声を出して皆と会話している。
だから、現実なのは間違いない。
たとえ、ゲームで見た場面意外の日常が体験できていなくても、あたしはこれが現実だと、あたしはユリーナなのだと思っていた。
そしてあるイベントシーンで、あたしはセリフをどうしようか悩んだ。
そのイベントは、ユリーナが聖女になれるかどうかの試練の場面だった。
ゲームでは一度も聖女になれなかった。
おそらくは今までの選択肢を間違えすぎたせいだろう。
でも、今はゲームではなく現実。
あたしの世界なんだし、あたしの都合の良いようになって当然だと思う。
だからきっと深く考える必要なんてない。
聖女に覚醒できれば最推しのエリアス様とだってラブラブになれるはずよ!
あたしはそう信じて疑わなかった。
そして、結局………、
あたしは聖女に覚醒することが出来なかった。
会話もあたしがゲームで進めた内容と全く同じ。
なんでよ!あたしの世界でしょ!?
____ジジッ、ジジジッ
もしかしてやり直しが出来るのでは?と思ったけど無理で、そのまま次の場面へと進む。
そして迎えた、あたしが毎回悔しい思いをしながら見ていたシーン。
「残念だが、私と君では緣が合わなかったようだ」
「!!」
あたしは顔面蒼白になった。
「エリアス様!待って!!」
必死に追い縋ろうとするも、何故か体が上手く動かせない。
Game over のテロップが現れはしないものの、
エリアス様の去って行く後ろ姿がホントにゲーム画面で見たスチルそのもので……
あたしは涙を流しながら、待って!と、動かせない体のまま言い続けていた。
どれくらいそうしていたのか、気が付くとあたしはいつかのように暗闇にいた。
“__もう一度やるか?”
あの時と同じ声がした。
考えるまでもない。あたしは無意識に返事をしていた。
「もちろんよ」
_____ジッ、ジジジッ
意識が浮上する。目を開ければ、ユリーナになってからの初めての場面にいた。
あたしは今度は違うセリフで会話した。
その後のシーンでも、違うセリフで返事をする。
皆、やはりゲームで聞いたセリフで返ってくるけど、
それでも最初とは違う展開になるはずだと。
あたしはそう信じて会話した。
でもやっぱり聖女になれず、エリアス様の最後の言葉を聞く事になり……
また暗闇に戻ったかと思えば、あの声が聞こえ、あたしは同じ返答をした。
そんな事を何回も、何回も繰り返して、なかば自棄になり始めた頃、
暗闇に戻った時、あの声がいつもとは違う事を言い出した。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ヒロインと結婚したメインヒーローの側妃にされてしまいましたが、そんなことより好きに生きます。
下菊みこと
恋愛
主人公も割といい性格してます。
アルファポリス様で10話以上に肉付けしたものを読みたいとのリクエストいただき大変嬉しかったので調子に乗ってやってみました。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる