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エリアス・クレーズ
14 エリアナside⑤
しおりを挟む「………やはり、同じか……」
さっきと同じように、窓ガラスで自分の姿を確認していたあたしに、男の呟いた声は聞こえていなかった。
あたしは、窓に写った自分の姿で興奮していた。
「ユリーナじゃないけど、それに負けない位美少女じゃない!?」
そもそも日本で生きてた姿は自分でも好きじゃなかった。
ブス……とまでではないけど、美人でもなく。
何処にでもいるような、THE・日本人て感じで、のっぺりとした平凡な容姿だった。
そんな自分が美少女になれれば、嬉しくない筈がない。
「……どうやら、その姿に満足したようだな?」
……満足?確かに、この顔に不満はない……けど、
あたしは背中まである自分の髪を指で掴んだ。
「………あんた、あたしの望みを叶えてくれるんでしょ?なら、この髪の毛を黄金色に変えて!」
「……お前の髪には、今渡した闇魔力が影響して元の黒いままになっている。それを変えるのなら、それ相応の魔力が必要になる」
「ならその魔力もあたしがもらってあげるわ!だから色を変えて!」
「__その力が良いモノでなくてもか?」
悪い力ってこと?
だとしても平気でしょ。だってあたしは選ばれた人間なんだから!
「別に構わないわよ!だから頂戴!」
「……いいだろう。他に何かあるか?」
「話がわかるじゃない!じゃあ、あと聖属性魔法と、皆があたしを好きになる魔法とかない?」
「…………聖属性は無理だ。あれはユリーナだけが受け継がれるものだからな。
代わりに光魔法ならやろう。」
またユリーナ!?
ホントはあたしがユリーナになるはずだったのに………!
でも今のあたしは違う…
「……しょうがないからそれでいいわよ。」
「あとは……皆がお前を好きになる、だったか?……魅了、
それなら先に渡した闇魔法でできるだろう。力は弱いが。」
「力が弱いなら、それを強くしてよ。できないの?」
「……まあ、出来るが……髪色に関しての魔力同様、良いモノではない。呪いになるぞ。それでもいいのか?」
「イチイチ五月蝿いわね!別にいいって言ってるじゃない!」
「…………一つだけ言っておく。その力を悪い方へ使い過ぎれば、お前は後悔するぞ。」
「はいはい。」
「__では、俺は行く。また何かあったら呼べ。」
「あ、ちょっと!あんた、名前は!?呼び出すのに名前がないと呼びづらいじゃない!」
「……………ディア・コースだ。」
男は顔を顰めながらも名乗り、
そのまま背中の翼をはためかせ、部屋から消えた。
◇◇◇
「……はっ!この姿、あたしだってわかって貰えなかったらどうしよう……!」
あたしは暫く呆然としていたけど、
男がいなくなってから今頃気付いた事実に焦る。
でも、いつまでも降りて来ないあたしを、
また寝てしまったと思って、部屋にまた起こしに来た母親によって
そんな心配は要らないということを知った。
どうやら他の人には最初からこの姿という事になっているらしい。
「もう、焦ったじゃない。そうならそうと、先に言ってよね」
母親が出ていった部屋で1人残されたあたしは、ぶつぶつ文句を言いながら着替え、
朝ごはんを食べる為に下へ降りて行った。
◇◇◇
モグモグ、モグモグ
「……」
あたしはご飯を食べながら、壁にかかっているカレンダーを見る。
元が乙女ゲーム、地球の、日本で作られた世界だからなのか、
この世界は日本的な小物などが多い。
カレンダーもそのひとつ。
モグモグ……
確か、今はゲーム本編が始まるちょうど3年前ってとこね。
ちょっと練習がてら、後で魔法使ってみよっと。
……それに、塾校……
これだけ強い魔力貰えたんだから別に行かなくてもよくない?
魔力だけで入学出来るでしょ。
うん。やっぱりもう行くの辞めよ。
あたしはそのまま塾校に行くのを辞めた。
母親にはその事を伝えず、塾校に行く振りをして家を出て、市井の商店街をぶらつく事にした。
このゲームには市井でヒロインが攻略対象と出会うシーンはなかったけど、
でも王子達貴族の子供がお忍びで街に出るのはよくある話だ。
だからあたしはあわよくば市井でエリアスさまに会えるかも何て考えて、
殆ど毎日のようにただ歩き回っていた。
時折、
エリアス様があたしを好きになりますように。
と、魔力を使いながら。
それは入学するまで続けていたけど、
__結局一度も会うことはなかった。
エリアス様だけでなく、他の攻略対象の誰ともだ。
今のあたしはヒロインじゃないから会えないのかもしれない。
そういえば、魅了だっけ?この力を使うと、なぜか跳ね返るように魔力があたしに戻ってくるのよね……
力が弱いのかな?
エリアス様に効いてないかもしれない。
またあの男を呼んで力を強めて貰おうかな。
その日の夜、あたしは自分の部屋に、あの男__ディア・コースを呼び出した。
________________
___????side
何度繰り返そうが、あの女は変わらない。
いや、寧ろ酷くなってさえいる。
それでも俺は、あの女がまともである所をいつか見れるんじゃないかと、
以前までは可笑しな希望も持っていたものだった。
以前、何で今頃記憶を戻したのかと聞かれた時に思った。
今なら、記憶が戻っても、そのまま母親思いな人間でいてくれるのではと……
記憶が戻るまでは、口調とかは変わらないが、中々に思いやりのある少女に育っていた。
試験のための勉強も、自分が入学して良い職に付き、母親を助けようとしていたのだ。
その時は魔力はないから、勉強で補おうとしていたのだろう。
だからもしかしたらと期待したが……
結果は惨敗。……俺も甘いな。
◇◇
神からの神託で、
この女に協力するため、元々一人の使い魔だった俺達は二つに別れた。
半身である片割れは我が主君であるあの方の元に付き、
俺は女の協力者となった。
ヤツからはある程度の望みは叶えてやるようにと下されていたから、
できる範囲で女の望みを叶えてやる。
最初の時から女の望みはいつも変わらない。
ユリーナに生まれ変わらせろ。
聖属性魔法が欲しい。
王子や皆に愛されたい。
聖女になりたい。
……
哀れな女。
何回も経験したという体験も、実際は違うという事にも気付かず、
ただ巻き込まれただけなのに、自分は特別な人間だと思い込み、
己の願いは全て叶うと信じて疑わない。
__欲を出さなければ、ユリーナになれずとも幸せになることも出来ただろう。
結局、女は破滅した。
◇◇
一度目。全てが終わり、俺も半身に吸収され、俺の役目は終わったと思った時、時空の歪みを感じた。
存在が消えたはずの俺は過去に戻り、その世界でまた実体化していた。
俺は、俺達は、あの方の使い魔だ。
こういう事があっても不思議じゃない。
そうして何回も繰り返していく程、女は過激さが増していった。
そのせいで、本来の聖女が命を落とす事は多々あった。
俺が与えた力で聖女達を苦しませる事はわかっていたが、
制約で干渉は出来ず、ただ女の望みのままに行動することしか出来ない。
どうやら、神にとってはこれも聖女への試練でもあるらしい。
やはりヤツはろくでもない。
ろくでもないからこの女が増長してもほっといているのだろう。
いっその事、俺がこの女を殺したい位だ。
そんな事を考えながらも、表面上は友好的に振る舞い、女に協力する。
半身に吸収されるまでの辛抱だ。
そして、
今度もまた新たな望みを言いやがる__
「もっと強い魔力を渡してよ!」
_______________
___エリアナside
「__これで最後だ。これ以上は死ぬぞ。」
そう言って男は新たな力をあたしに練り込んだ。
ホントはもっともっと強く、チートになりたかったけど、死んでしまうのはでは意味がないわよね。
今回はやり直し効かないんだから、
死んだら終わり。まさにゲームオーバー!
それはダメ!
それからはあたしはあたしなりに計画を考えて行動した。
まずあたしが聖女だと、周りに、特に貴族に思わせなきゃ。
あたしですら覚醒出来なかったんだから、
どうせこの世界のユリーナも覚醒出来ないはずよ。
だからあたしが代わりに聖女になればいい。
そのためには、エリアナのあたしはただの平民。
ユリーナみたいに公爵家に養子になれれば一番いいけど……
上手くいくかな?
結果は平民のまま、とりあえずは高位の貴族に後ろ楯になって貰えるようにはなった。
最初は魅了で何とか出来るかと思ったんだけど、力が大きすぎて逆に上手く出来なかった。
まあ、とりあえずは良いことにしましょ。
思ったより多くの貴族に一応快く協力してもらえたし。
これで聖属性魔法があれば完璧なのに……
ユリーナは持ってるのよね。
……っていうか、今のユリーナは偽物じゃない?
だってあたしがユリーナの筈なんだから。
あたしのモノなのに許せない。悪夢でも見せて苦しませてやろうかしら。
そうよ、だったらついでに偽物のユリーナから魔力を奪い返せばいいのよ!
あたしって天才!?
そうして、あたしの計画性は確実な物になった。
魅了の力は完璧で、魔獣も意のままに操ることができた。
ユリーナから奪い返した魔力で浄化も出来たし、
これであたしが聖女だと皆に認めてもらえる!
途中、エリアス様が魔法が効きづらくなったりとかハプニングもあったけど、
無事エリアス様の婚約者にもなれたし、
全部上手くいってるって思っていたのに……
________◇◇◇
「なんであんたがその姿になるのよ!!」
魔法が効いていた筈のエリアス様は愛しそうにユリーナに寄り添い、
そのエリアス様に支えられているユリーナは、あたしが今まで一度もなれなかった、
ゲームをしていた頃に一度だけネットにアップされていたスチルで見た、
覚醒した神々しい聖女の姿になっていた。
今のあたしはといえば、ユリーナによって、完全に呪いの力に変貌した魅了の魔力を浄化され、
元の日本人の姿へと戻っていた___
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