61 / 63
エリアス・クレーズ
15
しおりを挟む「……彼女はいったい……」
「私も、あの姿は初めて見ましたが、彼女はエリアナで間違いないでしょう。」
殿下も何となく解ってはいたようだが、確認したいのは私も同じ気持ちだからよくわかる。
今までのエリアナの可愛らしい姿とは似ても似つかないのだから。
「…あれが、彼女の元の姿だと、そう言っていたが、
では、今まで我々が相対していたあの姿は偽りだと?」
「はい。エリアナは、穢れ…以前はあそこまで負の力になっていたわけではないでしょうが、
その呪いの力を元に姿を変えていたようですね。」
「…聖女だと偽り、周りを操り貶めただけでなく、姿まで偽って我々をだましていたとはな。」
そう言う殿下の表情は、嫌悪の気持ちを隠す事なく歪み、エリアナを睨みつけている。
「ちが、違います!エリアス様!この姿の方が間違ってるんです!!……ユリーナに、その女に姿を変えられて……!!──ちょっとあんた!もとに戻しなさいよ!!」
殿下に必死に弁明したかと思えば、コロッと態度を豹変させて、
私を人差し指で指差しながら、私が悪いのだと、私が魔法でエリアナの姿を変え、貶めたと叫ぶエリアナ。
「エリアナ、貴女の嘘はもう誰も信じないよ」
そう諭しつつも、
まあ、確かに、貶めたとか、善悪はともかくとして、
エリアナの姿が変わったのは、私が魔法を使ったからだという事は間違いない。
魔法というか、浄化だけど。
あそこまで否定しているのを見ると、よっぽど日本での己の姿が不満だったのか、
“ユリーナの姿”に拘っていたわりには、エリアナとしての美少女然とした姿が何気にお気に入りだったのか……
おそらく両方だろう。
前世日本人として平凡に生まれた私としても、そんなエリアナの気持ちはわからなくもない。
平凡に生まれた少女達の、全員では無いにしろ、ほとんどの少女達が誰しも一度は思う事だろうから。
__美少女になりたい。美人になりたい。
そんな願いを。
まあ、実際に美しい姿形になれても、心が醜いままじゃあどうしようもないが。
そんなことを考えている私にエリアナは尚も歯向かってくる。
「嘘なんてついてない!偽物聖女が適当な事言わないで!!」
「……もう、偽物でも、本物でも、どっちでもいいよ…」
私はエリアナのこのやり取りに正直ウンザリしてしまった。
「……………そうよ、本物はあたしなんだから、その聖属性魔法は全部あたしのものなのよ───!!」
何かエリアナがぶつぶつ言い始め、
その瞬間、いきなりエリアナから強大な魔力が溢れ出た!
「っ、!?エリアナ!ダメ!!それ以上やったら………!!」
エリアナから、まるで嵐のような勢いでとてつもない魔力が向かって来ている。
エリアナにこんなに強い魔力があった事にも驚いたが、
同時に私は、向かって来る力に抗えるほどの魔力がないことに焦っていた。
先程広範囲な浄化を行ったばかりで魔力が回復していなかったのだ。
エリアナを見れば、浄化され本来の元力を取り戻し、さらに強大になった魔力を扱いきれていないのか、
翻弄され、今までの代償とでも言うかの様に魔力に生命力を吸われ、倒れそうになっていた。
__どうしよう、このままでは……
周りを見渡せば、エリアナの魔力に当てられたのか、殿下も、お兄様も、先生も、皆が皆、苦しそうに体を支えているようだった。
………せっかく、皆を浄化できたのに……
暴走したエリアナの魔力はもう目の前まで迫っていた。
───ああ、もう、無理だ………
私は、来るだろう衝撃に備えるように、ぎゅっと目を瞑った
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ヒロインと結婚したメインヒーローの側妃にされてしまいましたが、そんなことより好きに生きます。
下菊みこと
恋愛
主人公も割といい性格してます。
アルファポリス様で10話以上に肉付けしたものを読みたいとのリクエストいただき大変嬉しかったので調子に乗ってやってみました。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる