ヒロインに転生したけど地味に生きたい

さといち

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エリアス・クレーズ

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「──諦めてはだめだ!」


「…殿下?」


実は殆ど身体の限界が近かった、ふらつく私を優しく、しかししっかりと支えながら、殿下は私を諭した。


いくら魔獣に襲われた傷が完治したとはいえ、体力までは回復しきれていない。


エリアナに奪われた魔力は戻って来たわけでもなく、
何気に魔力枯渇に近かったのだ。

更にいきなり高度な聖魔法を使った反動で、覚醒しても身体が追い付いていなかった。



そこへ、予想外なエリアナの魔力暴走に当てられ、私の身体は既に倒れていてもおかしくなかった。

そんな状態で弱気になるのも仕方がないというものだ。


でもそんな私に殿下は諦めるなと言う。


「私の魔力も全て君に渡そう。…だから、最後まで諦めてはいけない。」


「…っ、そんな、殿下の力を頂く訳には……!!」


いきません!──そう言おうとして、私は口を噤んだ。


殿下の私を真っ直ぐ見る深い碧色の瞳が、殿下の思い、覚悟を湛えているのを感じとれたから………


「──俺の魔力もやろう。」

「サディアス殿下!?」


いつの間にか近くまで来ていたサディアス殿下が、後ろから声をかけてきた事に驚いた。


「あ~、俺も!俺も魔力は強い方だから気にせず使うといいぞ。」


「……ユリーナ、私のも使うんだ。」


「………先生、お兄様まで……。」


まさか、こんな展開になるなど思っていなかった私は、ただただ驚くばかりだ。


皆に申し訳ないと思うものの、他に方法がないのも事実。

それに、1人ではなく、皆、で。という事なら、一人ひとりの負担も少ないはずだ。

こうして話している間も、殿下やお兄様達が必死に抑えてくれているようだ。


考えている時間はない。




「──わかりました。皆さん、お願いします。」


私の言葉に、皆、其々の是の返事をし、そして私を囲むように集まった。


「……さあ、ユリーナ。」

「はい。」


人から人へ魔力を流すには、接触する必要がある。

複数で行う場合は他人で重ねるだけでもできるそうだ。



まずはお兄様が私の手を握り、その上からエリアス殿下、サディアス殿下、先生──の順で掌を下に重ねられた。


なんだかこの構図、前世の学生時代を思い出すな……なんて、私は場違いにも微笑ましくなってしまった。


「……ユリーナ嬢?」


「……いえ、何でもありません。皆さんが頼もしいと思っただけです」

危ないあぶない。

殿下にちょっと微笑んでた所見られてしまった私はあわてて言い繕った。



私の体に、4人、全員の魔力が流れてくる。

いきなり他人の、しかも複数の魔力が体に入り込むのだ。

何かしら身体に異変が起きてもおかしくない。

だが、そんなことにはならず、皆、優しく包み込むように、ゆっくりゆっくり魔力を流してくれているようだった。



次第に身体がポカポカと暖かくなり、私は自分の身体に力がみなぎるのを感じた。


「皆さん、ありがとうございます。」

私がニッコリ微笑むと、エリアス殿下以外皆私から離れて行った。

魔力は回復しても体力は相変わらずないままなので、エリアス殿下はずっと支えてくれているようだった。


そんな殿下に私は笑顔で感謝の気持ちを返し、エリアナに向き直る。


ここまで強大な魔力を鎮めるには、聖魔力での魔法をぶつける必要がある。

私は心を落ち着かせ、己の魂に精神こころを通わせながら、皆から受け取った魔力を聖魔力へと融合、変質させた。

魔力を変換する力は聖女だけが使える技。

私はそれをサンテナとひとつになった事で知ることが出来ていたのだ。


これで、エリアナの暴走を止める事ができる。

聖属性魔法のひとつ。

どんな異常も、正常に戻す力。

私はその魔法を、対抗策として展開した──


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