ヒロインに転生したけど地味に生きたい

さといち

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エリアス・クレーズ

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___エリアナside


どうして、どうして、どうして?

あたしは悪くない!

あの偽物聖女を排除して、本物であるあたしが聖女になるために、あたしはただ皆にして、

あの女を追い詰めてやっただけなのに。


あともう少しだったのに。

いつの間にかエリアス様まであたしから離れて行った。



どうしよう、どうしよう、どうしよう、

このままじゃ、失敗して終わってしまう。
失敗なんてできないのに。

やっと、あたしがユリーナに生まれ変われる筈だったのに。


「……あたしは悪くない、あたしは悪くない、あたしは悪くない」


そう、あたしは悪くない。全部、あの女が悪いのよ。

あの女が偽物のくせに聖女の力を持っているのがいけないのよ。


「…………そうよ、本物はあたしなんだから、その聖属性魔法は全部あたしのものなのよ───!!」

あたしはあの女の魔力を全て奪い取るつもりで、自分の魔力を限界まで解放した。

あの男からもらった魔力は思ってたより強大だったらしい。

あたしは全く制御できず、暴走してしまった。
その魔力に、身体の何かが吸いとられているような感じがしていたけど、

魔力暴走で気を失いかけていたあたしにはどうすることも出来なかった。


──そして、結局、あたしのその強大な魔力すら、あの女に抑えられてしまった。


魔力が収まり、気を失う寸前。あの女の、人を憐れむような顔が目に写った。

_____なによ、良い子ちゃんぶって。

あんたなんか、大っ嫌いよ。



………あたしの意識はそこで途切れた。



_______________________




「……ふう、」

「大丈夫か?」

「はい、ありがとうございました。支えて下さって。」

「……いや、私にはこれくらいしか出来なかったから……
すまない。」


支えてもらっていただけでも、私には十分だったのに、殿下は本当に申し訳なさそうに謝った。


エリアナの魔力が収まり、何事もなかったかのように場は穏やかな空気に満ちている。

目の前には、もはやさっきまでの日本人の姿すらも変貌し、老婆な姿となって倒れているエリアナがいるだけだ。

エリアナが倒れる寸前、彼女と目が合ったような気がする。
その瞬間、エリアナは私の事を心底憎々しげに睨んでいた。


偽善ぶるわけではないが、彼女が本当に反省し、過ちを認めるなら、もう少し救いがあったかもしれないのに…
などと思うこともあるが……

倒れているエリアナを城へ運ぼうと、グランツアー先生がエリアナを肩に担いでいるのを見ながら、

これからのエリアナに当てられるであろう処遇を考えた。


たとえ、反省していたとしても、恐らく処遇は変わらないだろう。
………自業自得。

ただ、どうしてそこまでユリーナの存在に、聖女に拘るのかが気になるけれど。




◇◇◇


あの後、エリアス殿下は私をお兄様に託し、グランツアー先生とサディアス殿下と共に先に王城へ戻って行った。

まだやり残した事があるからと。

まだふらつく私を心配しつつも、殿下は私の手を優しく握り、後で話がしたい。と言って離れて行った。


話、というのはきっと私に対する謝罪だろうな。
私を捕らえたり、牢屋に入れたり……

操られていたとはいえ、大事な友人だと思っていた相手に対しそんな事をされれば心は離れるもの。

確かに私は傷つき、とっても悲しかったけど、でも私はもう、不思議と殿下に負の感情は持っていない。


優しく支えられて、絆されたのだろうか?
私ってこんなにチョロかったんだな。


「………ユリーナ?」

自嘲気味に笑う私を怪しく思ったのか、お兄様が心配そうに声を掛けた。

「何でもありません、お兄様。」

さあ、帰りましょう、とお兄様の手を引くと、お兄様は立ち止まったまま、顔を伏せ私の手を強く握った。


「……お兄様?」

突然どうしたのだろう?と首を傾げながらお兄様を見ると、恐る恐る顔を上げ、私に懇願するような視線を向けた。


「…………ユリーナ。すまなかった。」

「お兄様?」

「私はユリーナを言葉で傷つけ、さらにこの手で殺そうとした。」

「……お兄様、それは」

「操られていたとしても。ユリーナを傷つけた事に変わらない。」


今思えば、殿下にされた仕打ちよりも、お兄様に言われた心無い言葉の方が堪えたような気がする。

幼い頃からずっとお兄様に溺愛されていたせいか、
その分拒絶の態度にショックを受けたのかもしれない。


エリアナに操られていたと知らなければ、私はきっと精神崩壊していただろう。

牢屋に入れられていた時は、考える事すら疲れてしまい、諦めてしまっていたけど……


殿下や、お兄様達は操られているだけ、本心ではない。

その事実だけが、どんなに辛くても、私の心を支え、どうしてとは思っても、彼等を恨むような気持ちにはならなかった。


だから、私は今にも泣きそうなお兄様に本心を告げることにした。

「……お兄様。私はお兄様に傷つけられて、辛かったです。」

「………」

「でも、私はお兄様を恨んでも、怒ってもいません」

「……だが!」

「お兄様。」

言い募ろうとしたお兄様の言葉を遮る。

「確かに、やってしまった事をなかった事にすることは出来ないでしょう。」

「…あぁ、」

お兄様は静かに相槌をうつ。

「ならば、これからは、その分の償いをしていただければ十分です」

「勿論だよ。……その償いは、どうすれば良い?」

「これからも、私のお兄様として、家族として、沢山愛して下さい。」

ニッコリとして言った私の言葉に、お兄様は虚をつかれたような顔をした。

「…そんな、そんなこと、当たり前じゃないか!私がユリーナを愛している事は変わらないのだから!……でも、それだけでいいのかい?」

「はい。あの辛い出来事も忘れる位に、お兄様の妹ととして、愛して下さい。」

「……妹ととして、か。」

「……お兄様?」

「いや、何でもない。……わかったよ。ユリーナがそれで良いのなら、そうしよう。……ユリーナが嫌がって、もういいと思うほど、目一杯愛しよう。」

一瞬、悲しそうな顔をしたと思ったが、
お兄様は、パッと表情を変え、いつもの優しいお兄様の顔になり、
まるでいたずらっ子のような目をして私を見つめた。


ふたり、笑い合い、私達は自分達の邸へと戻る。




それから数日後、エリアス殿下がフェリス邸へ訪れた。

花束を手に。

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