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「俺ねぇ、料理結構上手いんだよ~」
そう言って、佐藤はキッチンに立った。
軽蔑の念を込めて、呼び捨てにすることにした。このくらい許されるだろう。
改めてよく見ると、本当に広い家だ。そしてきれい。隅々まで掃除しているのがよく分かる。
「佐藤が作るの?」
「うん!楽しみにしててねー」
楽しみに、してて…?
なんで、僕が楽しみにするんだろう。
相変わらず、変な人だ。
というか、少し怖い。攫われた時のように薬とか使われないだろうか。
…でも、久しぶりに寝たな。最近は忙しくてなかなか寝る時間を取れなかった。
「ほい。佐藤特製チャーハンですよ~」
ほかほかの出来たてチャーハン。美味しそうだ。
佐藤はスプーンを持ってきて、僕に手渡した。
?
渡された理由が分からなくて、首を傾げる。
「何?あーんすんの?しないよ?」
「もー違う!圭一郎くんが食べるんだよ。」
僕、が?
「なんで?佐藤が作ったじゃん。僕は何もしてないのに…」
それは、おかしい。出来たてなんて、僕がヘマをしなかった時しか食べられない。
ヘマどころか、僕何もしてない。
「何もしてなくてもね、食べていいんだよ。それが当たり前なんだよ。」
佐藤が優しい目を僕に向けた。
当たり前…?
僕の当たり前は、当たり前じゃない。普通じゃなかった。
ということなんだろうか。
「ほら、食べなよ。美味しいよ。」
佐藤に促されて、震える手で一口。
温かい。
……そうだ。出来たてってこんなに。
こんなに美味しいものだった。
久しぶりだった。もうずっと食べていなかった。
誰かの愛がこもったご飯。
僕のチャーハンが、次々にしょっぱくなっていく。ベチャベチャになるのは嫌だから、必死に拭った。
そんな僕を佐藤はなでてくれた。
「圭一郎くん。俺はね、君のことが好きなんだ。」
「僕のこと……?」
「そこらの近所の子たちとは違ってねぇ、恋愛的に、好きなんだよ。」
恋愛的に。
それは愛なのだろうか。
ただ、恋愛なら僕は求めてない。
「好きな人の幸せを願うのは、当然でしょう?」
それは、そうかもしれない。僕もそうだ。好きな人には幸せでいてほしい。
「だから誘拐なんてことしたんだ。」
「うん、そうだよ。俺は圭一郎くんが幸せを感じられるまで、離さないからね。」
新しい日常、なのだろう。変わってしまったものは仕方がない。受け入れて、対応するだけだ。
「ふふ、次はお風呂いこうか。体を洗おうね。」
そう言って、佐藤はキッチンに立った。
軽蔑の念を込めて、呼び捨てにすることにした。このくらい許されるだろう。
改めてよく見ると、本当に広い家だ。そしてきれい。隅々まで掃除しているのがよく分かる。
「佐藤が作るの?」
「うん!楽しみにしててねー」
楽しみに、してて…?
なんで、僕が楽しみにするんだろう。
相変わらず、変な人だ。
というか、少し怖い。攫われた時のように薬とか使われないだろうか。
…でも、久しぶりに寝たな。最近は忙しくてなかなか寝る時間を取れなかった。
「ほい。佐藤特製チャーハンですよ~」
ほかほかの出来たてチャーハン。美味しそうだ。
佐藤はスプーンを持ってきて、僕に手渡した。
?
渡された理由が分からなくて、首を傾げる。
「何?あーんすんの?しないよ?」
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僕、が?
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それは、おかしい。出来たてなんて、僕がヘマをしなかった時しか食べられない。
ヘマどころか、僕何もしてない。
「何もしてなくてもね、食べていいんだよ。それが当たり前なんだよ。」
佐藤が優しい目を僕に向けた。
当たり前…?
僕の当たり前は、当たり前じゃない。普通じゃなかった。
ということなんだろうか。
「ほら、食べなよ。美味しいよ。」
佐藤に促されて、震える手で一口。
温かい。
……そうだ。出来たてってこんなに。
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そんな僕を佐藤はなでてくれた。
「圭一郎くん。俺はね、君のことが好きなんだ。」
「僕のこと……?」
「そこらの近所の子たちとは違ってねぇ、恋愛的に、好きなんだよ。」
恋愛的に。
それは愛なのだろうか。
ただ、恋愛なら僕は求めてない。
「好きな人の幸せを願うのは、当然でしょう?」
それは、そうかもしれない。僕もそうだ。好きな人には幸せでいてほしい。
「だから誘拐なんてことしたんだ。」
「うん、そうだよ。俺は圭一郎くんが幸せを感じられるまで、離さないからね。」
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