誘拐犯と僕

理崎

文字の大きさ
上 下
6 / 6

6

しおりを挟む
目を開けて、ぼんやりする頭で考えてみる。

お母さんとお父さんはどうしてるかな。
お母さんは心配性だから、誘拐されてるなんて知ったら僕のことも心配してくれるかな。
お父さんは僕を怒るかも。でもまたあの時みたいに抱きしめてくれたりして。

「圭一郎くん」

「……あ」

「ふふ、起きたばっかで声出ない? かーわいいねぇ」

僕の隣で佐藤は笑った。

「……おはよう」

「うん。おはよう」

佐藤は体を起こして伸びる。僕も真似してみた。んーっ。

体がすっきりしていい感じだ。

「こうしてのんびりしてるのもいいけど、そろそろ起きなきゃね」

「今何時?」

「もう10時だよ」

じゅうじ? 10時。10時!

寝坊だ。また叱られる。怒鳴られる、ぶたれる。痛いのに。昨日の傷もまだ治ってないのに。

体が勝手に震える。体は熱いのに、頭だけが冷えておかしくなる。

「圭一郎くん」

佐藤が僕の名前を呼んで手を取る。

「ご飯、食べよっか」

……そっか、ここは家じゃない。佐藤のところだ。ぶたれない。痛くない。

「……うん」

まっすぐ僕の目を見つめて、手を握る佐藤に安心する。

だけど、気になることがある。

僕は佐藤を見たことはない。親戚にもいない。

なのに、どうして佐藤は僕を知ってるの?
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...