転生者、月と魔法とプロポーズ

Rio

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第一章 魔法士学校編

第十話 ミラのバスタイム

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 時が止まっているような感覚はこの世界に来てもう何度目か分からない。物理的に止められているわけではないのだが、目の前にあるこの状況は呼吸さえし辛い程に緊張している。

 ミラさんの裸を見てしまった……まぁ俺は今から殺されるとして俺の死は割に合うか?

 命と引き換えに裸を見ることが出来たわけだが、て言うか事故じゃないかこれ。本当ルナさんのせいでいつも死にかけている。

「彼方よ、前から思っていたが貴様中々不幸な奴だな。ルナの下手くそな転移魔法でここに転移させられたんだろう?」

 ミラさんが唐突に静寂を切り裂くかの様に開口した。それに呼応して振り返ってしまったが、またしても裸が目に入り、急いで目を逸らした。

「ど、どうして分かるのですか?」

「どうしてって貴様は転移魔法を使えないだろ、ならルナしかいないだろ」

 確かにその通りだが、この不幸は多分ルナさんだけのせいではなく俺自身が持つ特殊な能力かもしれない。だとすればどちらにせよこの先長くないだろう。

「まあいい、今回はルナのせいということで許してやる」

「本当ですか! ありがとうございます」

「ただしーー」

 あ、待ってこれすごく嫌な予感がする……

「貴様も服を脱げ。今から一緒に風呂に入るぞ」

 嫌な予感は当然の様に的中した。

「ちょ、ちょっと待って下さい、何で俺まで裸にならないといけないんですか! 一緒に風呂って俺たち教師と生徒ですよね!?」

「何の問題もない。風呂で私が直々に教育してやるのだから授業みたいなものだ。それに貴様も私の裸体をいやらしい目で舐め回す様に見ていたのだろう? 私にもみせろ」

「ーーみ、見てませんよ……ちょっとしか……」

 実際緊張していてほとんど見ていないからな。決して見たいというわけではない! 決して見たいというわけでは……

「まぁ脱がないと言うのなら力づくで脱がすか、魔法で服だけを切り裂くが」

「分かりましたよ、脱げばいいんでしょ脱げば」

 なんだこれ、この人完全に男だよ。まさか異世界で、しかも教師の目の前で脱ぐ事になるとは。

 一枚一枚脱いでいる間もミラさんはずっと俺の動作を直視している。これに関しては飲み会の時のこともあるし、お互い様か。

「脱ぎましたよ。これで満足ですか」

「あーはっはっはっ、満足だ。どうだ貴様、恥ずかしいだろう? 私も恥ずかしかったんだぞ」

 嘘をつけ。全く恥じらうような素振りを見せなかったじゃないか。笑い方もドSっぽいし絶対中身男だろ。

「私は先に湯に入っているから、貴様も早く体を洗ってからこっちに来い」

「分かりましたよ……」

 はぁ、なんだかどっと疲れてしまった。

 言われるがままにいつもより時間をかけて体を丁寧に洗い、あわよくば先にあがっているだろうと期待しながら後ろをチラッと覗くと、浴槽には極楽顔のミラさんが浸かっていた。

 本当にミラさんと同じ浴槽に入らなければならないのか……?

「おい彼方、体を洗ったのならさっさとこっちに来い」

 催促がきた。どうやら逃げられそうにない。大丈夫、目を瞑って円周率を唱えておけばこの時間は終わるはずだ。

 渋々浴槽に入る事を決意し、つま先を着水させ肩まで浸かった。異世界に来てはじめての風呂は思っていた以上に気持ちの良いものだった。だが状況は未だ最低である。

 隣にはミラさんがいる。距離にして人間五人分くらいは離れているが、女性と風呂に入ったことなど一度もないせいか、どうしていいのか分からない。

 やはり円周率を唱えてやり過ごそう……

「3.141592653589793238463643……」

「643の前は2だ」

「あっ、そうでした、すみません」

 普通にミスを指摘されてしまった。いつもなら間違えることはないのに、この状況が異常すぎて円周率さえも間違えてしまう。しかしミスを指摘できるところはやはり教師といったところか。

 ミラさんの顔を見るとミスを指摘出来たからか、満足そうな表情を浮かべていた。

 こうしてみると、無駄のない引き締まった身体なのに何故だか色っぽさを感じるのは、出るとこは出ていて、女性らしさを主張しているからだろう。主に二つの物体が。

 おっといけない、見惚れてしまっていた。俺には彼女がいるんだぞ。煩悩を断ち切れ。

 そんな事を自分に言い聞かせている最中、静かにミラさんが俺の隣に近づいてきた。

「ちょちょちょっと、ミラさん近い、近いです! もう少し離れて下さい」

「そんな事を言っておきながら本当は嬉しいんじゃないか? それにさっき私のことをジロジロ見てただろう? 近い方が見やすいと思ってな。ほら、私の身体はどうだ? 貧相なルナの身体より良いだろ?」

 ミラさんの挑発はエスカレートして、遂には俺の身体にミラさんの身体があたる距離まで迫ってきていた。

「身体あたってます、あたってますから、からかうのはやめて下さい」

「あっはっはっ、冗談だ。しかし本当に貴様はいじりがいのある生徒だな。可愛い奴だ」

 確信したがこの人は絶対にドSだ。おそらくこれがこの人の真の姿なのだろう。いつか絶対に仕返ししてやる。

 とは言え風呂では完全にミラさんのペースで話が進んでしまうし、早急に話を切り出さなければいけない。

「あのー先生、そろそろ授業を始めてほしいのですが」

「あぁそうだったな。ではこれより授業を始める」

 そう言った途端真面目な表情になり、ドSなミラさんからミラ先生の顔になった。やはり先生である事は確かな様だ。

 だが先生、裸なんだよなぁ。授業に集中できるのか不安になってきた……



 



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