転生者、月と魔法とプロポーズ

Rio

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第一章 魔法士学校編

第十一話 個人レッスン

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「問題だ、1+1は何になるか答えてみろ」

「え? 2になると思うのですが」

 急に始まったミラ先生の授業は小学生の算数レベルの難易度だった。いくらなんでもこのレベルは馬鹿にされているとしか思えないのだが、先生の顔を見ても表情はいたって真面目だ。

「何故2だと思う」

「それは……2というのが自然な流れであり、当たり前だからです」

「いいかよく聞け、確かに答えは2であっている。だがそれは彼方がここに来る前の世界での一般的な考え方だ。そちらの世界の常識や考え方に縛られているようではこの世界では生き残れないと思え」

「わ、わかりました」

 なるほど、先生は授業を通してこの世界の立ち回り方を教えてくれているのか。

「彼方のいた世界では『十分に発達した科学は魔法と区別がつかない』という言葉があるのを知っているか?」

「クラークの法則でしょうか」

「そうだ。これには魔法という言葉が使われているのだが、彼方のいた世界には魔法は存在しない。この言葉は彼方のいた世界が三次元空間であり、物理法則に従って世界が動いていた証明になる」

「えーっと、それはつまり……」

「難しいことを言っているわけではない。魔法が存在しない世界で常識とされていた物理法則は、魔法が存在するこの世界の物理法則とは違うという事だ」

 そうか、ミラ先生の胸が風呂で浮いているのも物理法則に従っているということか。

「例題をだしてやろう。彼方の頭の上から石が落ちてきたとする。この時、彼方ならどうする」

「……え、えっと、うーん、そうですね……どのくらいの高さから落ちてきたのか分からないので、手でキャッチとかもできないし、前後もしくは左右に避けます」

「四通りの避け方か。それは前の世界での物理法則にとらわれている証拠だ。この世界で同じことが起こる場合、百通り以上の行動パターンがある」

「それは……魔法が存在するからでしょうか?」

「そのとおりだ。石が落ちてきてその石が二つ三つになる、大きくなる、曲がる、火がつくなど様々なパターンがある。これらを瞬時に予想し最善の行動をとるべきだと私は考えている」

 なるほど、今までの常識でいくとすぐに死ぬということも納得だ。確かに魔法があると何が起こるか分からないからな。人間の出来ることの範疇なんて軽々こえられるだろうし。

「いいか彼方、魔法は物理を圧倒的に凌駕するが、この世界ではそれが至極当然なことであり、誰もが魔法を使える。なので何が起きてもそれが当たり前な事だと思いながら行動しろ」

「……は、はい……わかり……ました……」

 ミラ先生が裸のせいで目を合わせる事はできないが、授業をしている先生は本当にしっかりしている。

 授業を受けてよかった。魔法を覚える前にこの世界の価値観に近づけたおかげで、死ぬリスクを大幅に減らせるかもしれない。

 それにしても体が熱い。一体どれくらいの間、風呂に浸かっているのだろうか。難しい話をされた覚えはないが次の日には忘れてしまいそうだ……

「おい彼方、大丈夫か? ボーっとしているがまだ授業は序盤だぞ。あと三時間は授業をするつもりなのだが」

「……すみません、なんだか集中できなくて……頭が……というか体が重くて……」

「おでこを出してみろ」

 そう言いながらミラ先生は俺のおでこに手を当てた。どうやら熱をはかっているようだ。それにしても、ミラ先生の手はすべすべしていてほんのり冷たく、ちょうどいい気持ち良さだった。

「少し熱があるみたいだな。このまま授業をしても意味がないから今日のところはゆっくり休め。そのかわり、明日からはしっかり授業をしていくからな」

「わかりました……ありがとうございます」

 するとミラ先生は突然俺の身体を抱き抱えた。いわゆるお姫様抱っこと言うやつだ。

 お姫様抱っこは本来なら男性が女性にするものだと記憶しているが、女性に抱き抱えられるのはこの上ない恥ずかしさがある。裸だし。

 だが熱があるせいか、抵抗するよりも早く休みたかったのでここは先生に任せることにした。

「彼方……貴様軽いな、本当に男か? しかし下についているものを見ると立派な男だな」

「ーーなっ、見ないでくださいよ!!」

「あーはっはっはっ、恥ずかしいだろ? だったらしっかり鍛えて体調を常に万全の状態にするんだな。部屋まで運んでやるから大人しく寝ていろ」

 こんな姿絶対に誰にも見られませんように……神様お願いします……あっ……

 神様に祈った瞬間ルナさんの事を思い出し、フラグが立った様な気がした。

 






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